米科学者、火災の延焼を防ぐ「コーティング」を開発

  • 文:美矢川ゆき
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米ノースカロライナ州立大学の科学者チームが、炎の延焼を食い止めるシリコンベースのコーティングを開発した。コーティングされた素材は、火にさらされるとバリアを形成し、火が燃え移るのを遅らせることができる。建造物を完全に耐火構造にするものではなく、あくまでも延焼を遅らせ、住民や消防士に時間を与えるためのものだ。

火が伝播し燃え続けるためには、酸素と燃料と熱が必要だ。研究を率いた材料科学工学のマーティン・トゥオ教授は、科学技術のニュースサイトPHYS ORGに「コーティングされた素材を炎に当てると、外側のコーティングは燃えますが、内側の層は炎に反応してガラスの層を作ります」と説明した。このガラスの層がバリアとなって、火が燃え広がる時に使われる酸素の量を制限する。「酸素はこの素材を通り抜けることができません。また、熱の伝達も遅らせることができます」

他の耐火技術では、化学物質を放出して炎を抑える塗料を使ったり、厚いセメントのようなコーティングを施したりする。しかし、このナノコーティングは小さな化学反応を利用するため、「燃焼時に有毒物質が放出されることはありません」とトゥオ教授は言う。

「ダンボールをより耐久性のあるものに変化」

Dezeenによると、このコーティングは木材を含むさまざまな素材に塗布でき、一度塗布するとコーティング自体はほとんど検出されないそうだ。スプレーや噴霧など、多様な方法で塗布が可能。しかも、火だけではなく、水や虫を防ぐことにも成功している。

トゥオ教授は、たとえばケニアの市場の屋台など、耐久性はあっても炎や水に弱いダンボールのような素材が、このコーティングの恩恵を受けられると語る。「延焼の時間を引き延ばすことができたら、商品を回収してから避難することも可能になります」。アフリカや熱帯の土地では、ダンボールが虫にかじられることもある。しかし、「ナノスケールのコーティングを使えば、これらの素材を完全に別のものに変えることができると考えています」

SNS上では、「興味深い…」「温暖化で火災が増えているいま、必要だと思う」「人体には本当に影響はないのかな」という声がある。

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