老舗寝装具店が寝装具の価値を再構築、 人と地球に優しい寝装具「sinso」とは

  • 文:今井未央
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寝装具ブランド「sinso(シンソー)」のかけ布団。

「寝装具のあり方を正し、再構築する」をコンセプトとした寝装具ブランド「sinso(シンソー)」が、9月25日より一般向け寝装具の販売を開始する。

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「sinso」は、富士山の麗・富士吉田で昭和初期に創業した「寝装の米林」という老舗寝装具店を原点に持つ。時代の波にもまれ、廃業となった寝装具店は、河口湖周辺を拠点とした宿泊事業へと転換し、バックパッカー向けホステル「kagelow Mt.fuji HOSTEL KAWAGUCHIKO」や、かつて撮影スタジオだった建物をリノベーションしたホテル「yl&Co Hotel in Mt. Fuji」を展開してきた。
 
この宿泊事業が、生活に欠かすことのできない「寝る」という行為を見つめ直すきっかけになったという。2022年には、人と地球に優しい寝装具のあり方を模索していく新事業として、寝装具に特化したブランド「sinso」を立ち上げた。

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商品に付属しているタグは、布団の生地として使用されていた生地を再利用。

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日本の伝統的な寝装具である布団は、かつて町ごとに存在した地元の布団屋が手入れをしながら家族代々受け継がれていくような、“長く使い続けていくもの”であった。しかしながら、大量生産・大量消費社会への移行とともに、徐々に布団屋の数は減っていき、寝装具も消耗品へと変わっていった。
 
「sinso」は、この事実に向き合い、100年ほどもつと言われている羽毛そのものの耐久性や、布団屋ならではの“打ち直し”と呼ばれるリペア技術をはじめとする、日本の布団文化が従来から持っている価値を再構築し、人にも地球にも優しい寝装具のあり方をこれからの時代に伝えていきたいと考える。

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かつて寝装具は、消耗品ではなく、手入れをしながら長く使われ続けるものであった。

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「sinso」の魅力といえは“綿100%の洗いざらし”。「sinso」は、寝心地の良さを最大限引き出すために、シーツとカバーは綿100%のみを扱い、アイロンをかけない “洗いざらし” を提案する。これにより静電気が発生しにくいだけでなく、キメの細かい綿素材と“洗いざらし”による凹凸で絶妙な肌馴染みを実現。高品質な綿の質感が生まれることで擦れた音さえ心地良く、綿本来の良さが引き出される。

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「sinso」の寝装具は、綿100%の洗いざらし。
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素材と質感で絶妙な寝心地を実現する。

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「sinso」は、“洗いざらし”の実現にあたり、自社のクリーニング工場「sinso office & factory」を設立した。一般的なクリーニング事業者の工程には機械によるアイロン掛けがデフォルトで組み込まれ、立体的な“洗いざらし”は取り扱ってくれないことがほとんどだという。これにより、クリーニング工場の設立が必要不可欠であった。
 
「sinso office & factory」では、洗浄にオゾン水を使用することで、洗剤や漂白剤などの環境排出物の削減も目指している。オゾン水は残留性がない機能水で、低温洗浄でも黄ばみ・ニオイ・菌・ウイルスに対して十分な品質をキープ。消臭・除菌力では、塩素を凌ぐ性能を誇るという学術論文も発表されているのだとか。科学的なものでごまかしたり、閉じ込めたりするのではなく、原因そのものを無効化する。時代に合ったサステナブルなアプローチも寝装具ブランドとして考えるべきことの一つだと捉える。
 
全ては、理想のクリーニング環境を実現するため。寝装具ブランドが自社クリーニング工場を保有するのは珍しそうだが、最高の寝心地を実現する一心でクリーニングがもたらす影響についても考えた。

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オゾン水を作るタンク
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オゾン水を使用できるように特注で作った洗濯機。寝装具の出し入れが身体の負担にならないよう、扉を20〜30cmほど高く設計し、働く環境への配慮も。
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乾いた寝装具を畳むスペース
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寝装具は、一枚一枚人の手により畳まれていく。

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布団屋ならではのリペアサービス“打ち直し”も寝装具を長く使い続けられる秘訣だ。ホコリやゴミを除去するクリーニング、新しい羽毛の補充、生地の交換などを含む“打ち直し”の文化を浸透させることで、一枚の布団を手入れして使い続ける大切さを発信していく。 

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「sinso」では、“打ち直し”と呼ばれるリペアサービスも行う。
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カバー類のタグには、“Hello Again” の文字。

 「田舎の布団屋」がこれからの時代に投げかける“人にも地球にも優しい寝装具のあり方”。布団を取り巻く新しい時代が切り開かれていくことであろう。

『sinso』

2023年9月25日発売

https://sin-so.com