幼児のような絵だとしても認知症の蛭子能収にしか描けないーー根本敬監修『最後の展覧会』展が開催

  • 文:Pen編集部

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蛭子能収『ほっとした』2023年(C)Yoshikazu Ebisu, Courtesy of Akio Nagasawa Gallery

Akio Nagasawa Gallery Aoyamaで、蛭⼦能収個展『最後の展覧会』展が開催中だ。本展では、特殊漫画家・根本敬監修のもと、全点描き下ろしの新作を発表している。

蛭子能収といえば、唯一無二のキャラクターで活躍していたタレントとしてのイメージが強いが、「月刊漫画ガロ」で漫画デビュー、雑誌「JAM」で連載漫画の依頼を受けるなど漫画家としても活躍していた。2014年に初期段階の認知症と診断されたのち、ゆっくり確実に病気は進行し、2020年に公に認知症を公表した。たった6年の間に、物忘れが著しく、画力も変化していった。

「認知症のオレをを笑って下さい」という⾔葉に偽りはなく、“今まで通り仕事をする”といった意思表明にも思えたと根本は語る。ただ、現実は厳しくタレントとしての仕事や漫画家としての仕事も激減していき、現在は限りなくゼロに等しいという。その一方で、「このまま彼をフェイドアウトさせてはならない、絵を描くことからスタートした蛭子さんを、最後は絵=芸術家として飾って貰えたらと考える人達が少なからずいて、この度の展覧会は企画されました」と、根本は語っている。

蛭子が自嘲していた「⼩学⽣みたいな絵」も、今回の展覧会へ向けてキャンバスに向かう頃には「幼児みたいな絵」になっていた。ただ、「幼児みたいな絵に⾒えても、認知症の蛭⼦能収にしか描けない絵」であり、どの絵も“生きる”ことの、儚さが感じられるという。

蛭子能収が現在、なにを思い描いたのか。キャンバスに広がる鮮やかでどこか歪な色彩の中に、私たちはなにを感じるだろうか。

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蛭子能収『どうろにねころがる』2023年 (C)Yoshikazu Ebisu, Courtesy of Akio Nagasawa Gallery

 

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蛭子能収『苦労がない』2023年 (C)Yoshikazu Ebisu, Courtesy of Akio Nagasawa Gallery

『最後の展覧会』展

開催期間:9⽉7⽇(⽊)〜9⽉30⽇(⼟)
開廊時間:11時〜13時、14時〜19時 ※⽇・⽉・火・祝は休廊
開催場所:Akio Nagasawa Gallery Aoyama
東京都港区南⻘⼭5-12-3Noirビル2F 
TEL:03-6427-9611 

www.akionagasawa.com/jp/exhibition/the-last-exhibition