京都国際舞台芸術祭で現代に蘇る、鮮烈な“ポストモダンダンス”の伝説【ルシンダ・チャイルズ】

  • 文:並木浩一

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9月30日から10月22日まで「KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2023」が開催される。2010年から続くフェスティバルで、今年絶対の見ものは間違いなく10月13日から3日連続のダンス公演『ルシンダ・チャイルズ1970年代初期作品集』だ。この公演はヴァン クリーフ&アーペルのダンス支援プログラム「ダンス リフレクションズ」とのコラボレーションプロジェクトでもある。

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ルース・チャイルズ&ルシンダ・チャイルズ『ルシンダ・チャイルズ1970 年代初期作品集:
Calico Mingling, Katema, Reclining Rondo, Particular Reel』。公演日時:10月13〜15日、各20時15分開演 上演時間:65 分 会場:京都市京セラ美術館 中央ホール

振付家としてのチャイルズは、ポストモダンダンスの巨匠として名高い。著名なマース・カニングハムに師事し、伝説的なジャドソン・ダンス・シアターで振付家のキャリアをスタート。ニューヨークを舞台に、モダンダンスの時代を先に進めた主役のひとりと言ってもいい。

ダンス作品の代表作といえば『ダンス』(1979年)だが、日本人にとっては前衛的オペラ『浜辺のアインシュタイン』(1976年)の振付といったほうがわかりやすいだろうか。ちなみにどちらも音楽をフィリップ・グラスが担当した作品で、いまもDVDが入手可能である。

グラスの曲特有の、執拗に反復するミニマルな旋律とあいまって観客をトランス状態に引きずり込むパフォーマンスは、1992年の日本初演でもセンセーショナルな話題を呼んだ。昨年、神奈川県民ホールで新たな演出で上演されたのも記憶に新しい。

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京都で今回上演されるのはさらに遡った作品群で、最大の特徴はいずれも“音楽がない”ことだろう。それもモダンダンスの形式主義に真っ向から歯向かった、ポストモダンダンスの切っ先の記憶なのである。ゆったりとしたボトムの衣装で、グリッサードやピルエットなどのバレエ的テクニックを肯定しつつ、空間に残影を残すような軌跡を描いていくチャイルズのダンス文法は、伝統だけでなく前衛に対しても反逆的だった。

そのルシンダ・チャイルズの4作品を現代に蘇らせるために今回、姪であるルース・チャイルズが招聘された。振付家でダンサーであるルースは2015年、叔母ルシンダから託された60年代のソロ・ダンスの3作品をパリのテアトル・ドゥ・ラ・ヴィル(パリ市立劇場)で自ら主演し、成功を収めている。それに続く作品群の再上演は、ルシンダの再評価というだけでなく、貴重なダンスのレガシーを現代に正しくアーカイヴする作業といってもいい。ソロだけでなく複数のダンサーを要する作品を編み、上演時間は65分を予定している。

興味深いことに「ダンス リフレクションズ by ヴァン クリーフ&アーペル」では、その数日後、10月19日から3日連続で、今度は米国ニューヨーク・シティ・センターでチャイルズ代表作『Dance』を上演する。1万kmを隔て、ひとつのダンスの神話が同時に掘り起こされようとしているのである。

KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2023

TEL:075-213-5839
https://kyoto-ex.jp