1着はほしい!ニッポンのニット工場ブランド<コーヘン、バトナー、KUME.JP>【着る/知る Vol.161】

  • 写真・文:一史

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ファクトリーブランドのバトナーが誇る定番のリブニット。

ニッポン製の服は縫製が丁寧で、仕上げもかっちり。家電にも通じる生真面目なモノづくりである。ただし服は柔らかな布であり、工業的に整えることが必ずしも正解とは限らない。例えばイタリアの手縫いジャケットは一見ペラッと頼りなさそうだが、着ると立体的に美しく身体も動かしやすいものだ。優れた服とは素材と仕立てとがバランスよく調和したものを指すのだろう。
そのバランスの面で近頃気になるアイテムが、我が国の工場発信ブランド(ファクトリーブランド)のニット。正確無比に仕立てられ、確かな品格がある。ニットらしいリラックスした着心地で顔つきは端正な、まさしくバランスがいい服だ。ビシッと着込みたくなるニッポンのニットが、オーバーサイズのゆるい服装の時代に新鮮な感覚を呼び起こす。
ここではセレクトショップでも大評判のコーヘン、バトナー、さらにTシャツのKUME.JPをクローズアップ。前者2ブランドは山形に自社工場を持ち、後者は東京発信で千葉に縫製工場を持つ。すべて直営の実店舗があり、ネット購入も可能。長く付き合う自分定番になるパーソナルなブランドだ。

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装飾で彩るCOOHEM

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異素材を編み込んだノルディックセーター。立体的で多面的な装飾がベーシックニットにモードな奥行きを与えている。¥42,900(税込)。
 
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リサイクルウールをベースにしたボディに、ポリエステル、モヘヤ、ナイロン、アクリル、コットンのファンシーヤーンが絡む。

特殊な糸や布を織り込み、刺繍のように立体的に仕上げた造形。コーヘンにはモードブランドに近いファッション性がある。配色もモダンに洗練された都会的なもの。ベーシックなニットを一通り着てきた大人が、次なるお洒落にステップアップできる逸品が揃っている。
お薦めのモデルは、ここに掲載する3型とも共通する太い糸のローゲージ。密度が濃く編まれ肉厚で、だらしなさを避けたい大人にちょうどいい風合いだ。ローゲージはコーヘンを手掛ける米富繊維の得意技でもある。山形の自社工場にてローゲージ用の全自動横編機を駆使して編まれている。高度な技術と旬の感性とを結びつけるセンスが、コーヘンがエッジーな人たちに愛される大きな理由に違いない。

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歴史あるオーストリアのアルパカニットメーカーへオマージュを捧げたようなマルチカラーカーディガン。表裏のないパール編みのソフトな風合いも独特。¥42,900(税込)。

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ウールのニットベストは、大きめサイズをたっぷりとしたTシャツの上に重ねて着たくなる。フェルトのごとく緻密に編まれた伝統のアーガイル柄に、1着ずつ職人が部分的にカットする加工を施した服だ。¥31,900(税込)。
 
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普通なようで普通でない洒落心がコーヘンの持ち味。

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本社工場内に22年にオープンした直営店。
ヨネトミストア」山形県東村山郡山辺町大字山辺1136、営業:11時〜18時、定休: 火曜、水曜、TEL:023-664-8165 photo© Gottingham

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ラインアップ豊富なBATONER 

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バトナーのシンボル的なリブニット。Tシャツのように袖と裾がフラットなので、バサッと羽織りやすくすっきりと着られる。¥26,800(税込)。
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編み糸は特別に開発された強度もバツグンの「ソリッドウール」。袖と前後身頃をつなぐ肩線の「減らし目」も美しい。

最上級の“かっちりニット”を望むなら、バトナーが最良の選択肢のひとつになるだろう。ブレなく整えられたフォルム、天然素材と思えないほどのシャープな糸。派手さを抑えつつも明確に凝ったディテール。さらにパターンは骨格の細いアジア人体型がベースだ。ひとたび気に入ればリピートしたくなる魅惑のブランドである。
創業70年以上の奥山メリヤスが、自社工場発信のバトナーを立ち上げて10年。2021年には東京・青山に旗艦店を設けた。店に行くときはここにピックアップしたミドルゲージ、ローゲージはもちろん、ハイゲージやTシャツもチェックしよう。どの製品も服好きをうならせる追求心に満ち、凡庸な服は一着もない。セレクトショップ人気が高く別注品も多いバトナーだが、まずはラインアップ豊富な通常ラインに袖を通して実力を味わってはいかがだろうか。

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こちらもソリッドウールを使ったベーシックなセータータイプ。前身頃の逆V字型の編み模様がバトナーのアイコンディテール。¥26,800(税込)。

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マシンで削った彫刻のごとく歪みのない凹凸模様のノルディックセーター。伝統のシェトランドウールをこれほど精緻に仕立てられるのは高度な技術があればこそ。¥33,000(税込)。

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直営店「バトナーフラッグシップストア」の一角。メンズ、ウィメンズから厳選したオリジナルが並ぶ。
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コンパクトで見やすい店内の内装は、人工大理石とアルミの競演。手前にあるのは紐を編む旧式の編み機で、営業時間中に稼働中。店で編まれた紐はショッパーに使われ客の手に渡る。
バトナーフラッグシップストア東京都渋谷区神宮前3-41-3 吉田ビル1F、営業:12時〜20時、定休:水曜、TEL:03-6434-9009

 

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東京発信TシャツのKUME.JP

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新しく加わった上品なハイネックTシャツ。上にジャケットを着たり、シャツのチラ見せインナーに活躍する。夏でも暑さを感じにくいように襟リブの幅や立ち上がりのバランスを追求した一着。¥3,630(税込)。

Tシャツやスエットシャツの生地は、編まれたニット。その生地を布として裁断(カット)し、縫い合わせる(ソーイング)制作工程から総称して「カットソー(カット&ソー)」と呼ばれる。そのカットソーを創業以来80年以上つくり続けてきた縫製工場の久米繊維工業が拠点にするのは、東京・墨田区。オリジナルブランドのKUME.JPは価格がリーズナブルで、気軽に入手して毎日着られる。生地、縫製、シルエット、着心地はすべてニッポンクオリティ。カットソーに特化したモノづくりゆえのこだわりに満ちている。
1970〜80年代開発当時のままのレトロモデルがつくられ続けているのもKUME.JPの楽しさのひとつ。オーバーサイズが流行する昨今に、探しにくくなったタイトフィットのTシャツもここでなら見つかる。“ファッション”を飛び越えた、着る人の個性をサポートするラインアップが冴え渡る。

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80年代のゆったりと丸いシルエットを踏襲する定番スウエットシャツ。裏面がタオルのようなパイル地で肌にベタつかない。S〜XLサイズ ¥5,390(税込)、XXLサイズ ¥5,720(税込)。
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KUME.JPでは「トレーナー」と呼ぶスウェットシャツは、全43色もの色バリエーション。サイズもS〜XXLまでの5サイズ展開(XXLは一部の色限定)で、男女ともに選びやすい。

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久米繊維工業の歴史を物語るクラシックな細身モデル「セイヤング」。大きめのシャツや上着をダボッと羽織り、インナーをタイトに引き締めてメリハリをつける大人の着こなしに便利な服だ。スウェットシャツと同様に色展開も豊富。¥2,530(税込)。

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本社の1階にあり社員が交代で接客を担当する直営店。営業時間が短く不定休なため、営業カレンダーをチェックしてから行こう。
久米繊維ファクトリーショップ」東京都墨田区太平3-9-6、営業:平日13時~17時半 ※夏季のみ土曜営業12時~16時半、TEL:03-3625-4188
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直営店にディスプレイされた代表的なTシャツ。すべて試着可能だ。なかには俳優・松重豊の別注モデル「マッチゲTシャツ」のような個性派もある。

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今回のファッション連載「着る/知る」がお届けした、ニッポンのモノづくり精神が生み出すニットはいかがだっただろうか。コロナ禍以降にモノを大切にする機運が高まり、パーソナルに愛する“自分ブランド”を望む人が増えたとされる。そのなかでつくり手の顔(または心)が見えるファッションアイテムがより一層輝きを放っている。材料費高騰といった影響もあり多くのニッポン製が輸入ブランドと差がないほど値上がりしているなかで、なにを基準に服を選ぶかは考え方しだい。本場ヨーロッパの優雅なニットももちろん素晴らしいが、我が国のフィルターを通した個性的なニットもどうぞお忘れなく!

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【画像】1着はほしい!ニッポンのニット工場ブランド<コーヘン、バトナー、KUME.JP>【着る/知る Vol.161】

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ファクトリーブランドのバトナーが誇る定番のリブニット。

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異素材を編み込んだノルディックセーター。立体的で多面的な装飾がベーシックニットにモードな奥行きを与えている。¥42,900(税込)。
 
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リサイクルウールをベースにしたボディに、ポリエステル、モヘヤ、ナイロン、アクリル、コットンのファンシーヤーンが絡む。

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歴史あるオーストリアのアルパカニットメーカーへオマージュを捧げたようなマルチカラーカーディガン。表裏のないパール編みのソフトな風合いも独特。¥42,900(税込)。

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ウールのニットベストは、大きめサイズをたっぷりとしたTシャツの上に重ねて着たくなる。フェルトのごとく緻密に編まれた伝統のアーガイル柄に、1着ずつ職人が部分的にカットする加工を施した服だ。¥31,900(税込)。
 
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普通なようで普通でない洒落心がコーヘンの持ち味。

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本社工場内に22年にオープンした直営店。
ヨネトミストア」山形県東村山郡山辺町大字山辺1136、営業:11時〜18時、定休: 火曜、水曜、TEL:023-664-8165 photo© Gottingham

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バトナーのシンボル的なリブニット。Tシャツのように袖と裾がフラットなので、バサッと羽織りやすくすっきりと着られる。¥26,800(税込)。
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編み糸は特別に開発された強度もバツグンの「ソリッドウール」。袖と前後身頃をつなぐ肩線の「減らし目」も美しい。

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こちらもソリッドウールを使ったベーシックなセータータイプ。前身頃の逆V字型の編み模様がバトナーのアイコンディテール。¥26,800(税込)。

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マシンで削った彫刻のごとく歪みのない凹凸模様のノルディックセーター。伝統のシェトランドウールをこれほど精緻に仕立てられるのは高度な技術があればこそ。¥33,000(税込)。

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直営店「バトナーフラッグシップストア」の一角。メンズ、ウィメンズから厳選したオリジナルが並ぶ。
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コンパクトで見やすい店内の内装は、人工大理石とアルミの競演。手前にあるのは紐を編む旧式の編み機で、営業時間中に稼働中。店で編まれた紐はショッパーに使われ客の手に渡る。
バトナーフラッグシップストア東京都渋谷区神宮前3-41-3 吉田ビル1F、営業:12時〜20時、定休:水曜、TEL:03-6434-9009

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新しく加わったハイネックTシャツ。上にジャケットを着たり、シャツのチラ見せインナーに活躍する。夏でも暑さを感じにくいように襟リブの幅や立ち上がりのバランスを追求した一着。¥3,630(税込)。

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80年代のゆったりと丸いシルエットを踏襲する定番スウエットシャツ。裏面がタオルのようなパイル地で肌にベタつかない。S〜XLサイズ ¥5,390(税込)、XXLサイズ ¥5,720(税込)。
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KUME.JPでは「トレーナー」と呼ぶスウェットシャツは、全43色もの色バリエーション。サイズもS〜XXLまでの5サイズ展開(XXLは一部の色限定)で、男女ともに選びやすい。

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久米繊維工業の歴史を物語るクラシックな細身モデル「セイヤング」。大きめのシャツや上着をダボッと羽織り、インナーをタイトに引き締めてメリハリをつける大人の着こなしに便利な服だ。スウェットシャツと同様に色展開も豊富。¥2,530(税込)。

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本社の1階にあり社員が交代で接客を担当する直営店。営業時間が短く不定休なため、営業カレンダーをチェックしてから行こう。
久米繊維ファクトリーショップ」東京都墨田区太平3-9-6、営業:平日13時~17時半 ※夏季のみ土曜営業12時~16時半、TEL:03-3625-4188
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直営店にディスプレイされた代表的なTシャツ。すべて試着可能だ。なかには俳優・松重豊の別注モデル「マッチゲTシャツ」のような個性派もある。

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。