神戸の老舗が隠れた特産品とコラボ。「兵庫テロワール旅」が丹波篠山茶の魅力を知らしめる

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    ワイン用のブドウやコーヒー、お茶などの品種を栽培する際に、その土地の気候や土壌などの特徴を表す「テロワール」。そんな土地に根付く魅力をテーマにした、兵庫県の旅行に関するブランディング「兵庫テロワール旅」で、また新たな取り組みが展開される。

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    平安時代から続く日本最古の茶畑が丹波篠山市にある。

    1200年前の平安時代から続く日本最古の茶畑

    瀬戸内海と日本海という2つの海に面し、全国12位の面積を持つ兵庫県。明治初期までは、摂津国、播磨国、但馬国、丹波国、淡路国という5つの国があり、それぞれの国が固有の風土を基盤に伝統や文化を育んできた。従って、現在も地域ごとにさまざまな特徴を持つのが兵庫県の魅力になっている。こうした観点から、各地域に根差した魅力を体験してもらうことを目的に「兵庫テロワール旅」は始まった。

    今回は1933年に創業し、現在も神戸に本社を構えるUCCグループで外食事業を担う、ユーシーシーフードシステムズ株式会社がプロジェクトに参画。注目した地域は、旧丹波国に属していた丹波篠山市である。実は、丹波国は現在の京都府と兵庫県にまたがっており、面積の約7割は京都府が占めていた。ゆえに京文化の影響が強く、現在でも関西在住者の中には「丹波」に対して京都をイメージする人が多い。

    実際に丹波篠山市へ車で移動した場合、神戸よりも京都と大阪からの方が近いことからも、兵庫県の中でもさまざまな土地の影響を受けた特別な地域であることがわかる。そんな丹波篠山市の特産品といえば、黒豆や小豆、栗が挙げられる。しかし、忘れてならないのが1200年以上の歴史を持つ丹波篠山茶であり、2000年代頃までは丹波茶と呼ばれていた。

    日本のお茶の起源は平安初期で、嵯峨天皇が畿内5カ国、近江国、丹波国、播磨国にお茶を植えさせたのが始まりと伝えられている。現在も兵庫県随一の茶の産地である丹波篠山市味間地区は日本最古の茶畑のひとつ。お茶の産地の中でも最も気温が低いため、葉の成長が抑制されじっくりと旨味を蓄えながら成長する。鉱石の多い豊かな土壌は肥沃で水はけがよく、昼夜の寒暖差で生じる丹波霧が日光を遮り、お茶の甘みや旨味を増大させる。

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    鉱石の多い豊かな土壌の茶畑で採れる茶葉は、お茶の甘みや旨味が濃厚だ。

    知られざる丹波篠山の魅力を伝える取り組み

    そのような理想的な環境で栽培されたお茶は古くから朝廷に献上されていただけでなく、江戸時代は上方(大阪)で流通するお茶の半分は丹波茶であり、篠山藩の財源の多くを占めていたという。また1990年代までは京都・宇治で加工され、宇治茶として販売されていたほど品質には定評があった。

    2000年代に入ると丹波茶は苦難の道を辿っていく。食品の産地偽装が社会問題となり、宇治茶の定義も見直された。京都府・奈良県・滋賀県・三重県の4府県産のお茶で、京都府内の業者が府内で仕上げ加工したものとされ、兵庫県が外された。2004年には、隣に位置する兵庫県氷上郡の6つの町が合併して丹波市が発足。長らく使われてきた「丹波茶」では誤解を招くため、丹波篠山茶へと名称を変更した。

    そんな背景を持つ丹波篠山茶は隠れた名産品であり、「兵庫テロワール旅」で取り上げられる意義は大きい。具体的な取り組みは、2003年より展開しているネルドリップ抽出による本格コーヒーショップの上島珈琲店でのドリンクの提供となる。看板商品であるミルク珈琲に丹波篠山茶の焙じ茶を加えたもので、全国の上島珈琲店で「丹波篠山焙じ茶ミルク珈琲」として登場。2023年9月1日から10月10日の期間限定で発売される。

    丹波篠山茶の希少な新芽の葉部分だけを使い甘さを重視し、ミルク珈琲との相性にもこだわったという。深い霧と肥沃な土壌が生んだ、丹波篠山茶ならではの上品な味わいをぜひ堪能したい。

    兵庫テロワール旅
    https://www.hyogo-tourism.jp/terroir/