フィンランドのデザイナー、カンパニーの温もりあふれる手仕事

  • 編集&文:猪飼尚司
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カンパニー プロダクト・デザイナー/韓国出身のアーム・ソン(左)とフィンランド出身のヨハン・オリン(右)が2000年に設立。世界中の手仕事と現代デザインの融合を試みつつ、自身のプロダクトを販売するショップ「サラカウッパ」(上写真)も運営。© Paavo Lehtonen

世界各地に伝わる伝統工芸の技術に着目し、遊び心と想像力にあふれたデザインに変化させていくふたり。さまざまな職人たちとコラボレーションを続けるのはなぜか。

Pen最新号は『デザインと手仕事』。テクノロジーの進化が目覚ましい現代において、いま改めて人々は、手仕事に魅了されている。しかもそれを、使い手である私たちだけではなく、つくり手であるデザイナーや建築家たちこそが感じている。手仕事に惹かれるのは、手の温もりを感じられるから──そんなひと言にとどまらない答えが、ここにある。

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手仕事の魅力についてカンパニーのふたりに尋ねると、開口いちばん、「この世の中に、人の手でつくられていないものなんてある?」という答えが返ってきた。

2007年頃から、ヨーロッパ、南アメリカ、アジア各国を歴訪。土地に伝わるものづくりの匠と交流を重ね、彼らの手によるものづくりの魅力を伝えてきた。

「私たちが一緒に仕事をする匠たちは、世代を超えて技とともに文化そのものを大切に受け継ぎ、愛情をもって仕事と接している人たちばかり。相手のことを知るほどに、彼らの純粋な精神を私たちのデザインの力で少しでも輝かせることができたらと思うんです」

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世界の手仕事が集結、唯一無二のオブジェ
2019年に開催された個展に合わせ協働を重ねた、日本とロシアの木工、メキシコの金工、フィンランドのガラス工芸という異なる手仕事を融合。職人にそれぞれ別々のパーツをオーダーしマトリョーシカのように重ね合わせることで、レイヤーを通して世界の手業が一体となったオブジェ「ユニバーサルスピリット」が完成した。© Nene Tsuboi 
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© Paavo Lehtonen
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色彩が踊る、メキシコのプロダクト
メキシコの素朴なアイテム。「スモールフェイス」(右写真、295ユーロ)は、キリスト教の世界観を陶器で表した「生命の樹」を作るバルブエナ・アロンソによる作品。伝統のブリキ細工、オハラタから発想を得た「アイスクリームキオスク」(左写真、75ユーロ)など、独特の色彩感覚と造形力。/すべてサラカウッパ http://salakauppa.f.fi © Paavo Lehtonen

カンパニーのふたりがデザインを学んでいた1990年代。工業デザインが大量生産、大量消費をリードするなかで、彼らはデザイナーとしてどう生きるべきかを考えあぐねていた。

「同じようなものが次々に生み出される様子を見ていると、心が空っぽになって、感覚がどんどん失われていくような気がして。でも、世界をよく眺めると、小さいけれど、確かさが光る手仕事がたくさんあることに気づき、気持ちがほっと楽になったんです」

決して工業やデジタルの存在を否定しているわけではない。大量生産による恩恵を受けて世の中は安定し、豊かになった。

「でも、すべてが整いすぎて均質になりすぎると、どことなくリアリティがないようにも思ってしまう。季節によって風景が移ろうように、ものづくりも土地や携わる人の心と呼応しているほうが自然だと思うんです」

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家族を表現した、日本のコケシスツール
青森・黒石に工房を構える津軽こけしの匠、阿保六知秀と協働した「ファミリー・コケシスツール」。1本の木から削り出す「つくり付け」の技法を応用しながら、家族のことを大切に思う職人の気持ちを形に。大きな傘(座面)を支える大きなこけしを一家の大黒柱である職人の姿になぞらえ、子どもや孫たちを周囲に配置した。© COMPANY 

カンパニーがタッグを組む職人たちは、超絶技巧による人間離れした技というよりも、どことなくクセがあり、素朴で温もりにあふれた作品を手がける人々だ。

「見方によっては完璧ではないかもしれないし、洗練されているわけでもない。それでも限りなく力強く、魂に満ちている。その場所では当たり前のことだけれど、その人でなければできないことをやっているんです」

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椅子になった、ロシアのマトリョーシカ
ロシアの伝統的な入れ子人形、マトリョーシカ。旋盤による削り出しから絵付けまで、15の工程を細かく観察しながら、別の形に転換。2012年につくった「ガールスツール&ボーイスツール」は、マトリョーシカの形はそのままに、強度を保持して、椅子としての機能を追加。座面は取り外し可能で、内部は収納スペースに。
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© COMPANY

ある日、ロシアの工房でマトリョーシカをつくる職人に、なにを考えながらつくっているのか問いかけたところ、この人形で子どもが遊んでいる様子を思い浮かべていたという返事が返ってきた。

「情景を思い浮かべながらものづくりをするというのは、機械やデジタルではできないこと。私たちはデザイナーというよりも、彼らの純粋な気持ちをうまく翻訳して伝えるメッセンジャーとしての役割を果たしているだけなんです」

各地を訪れ、工房の職人たちと対話を繰り返すことは、人としての生き方を学ぶ学校に通っている感じさえすると微笑むふたり。彼らの学びの旅は、これからもまだまだ続く。

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