大宮エリー初挑戦のVR映画『周波数』が第80回ヴェネチア国際映画祭にノミネート

  • 文:Pen編集部
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自身初となるVR映画『周波数』は大宮が人生で大切にしてきた言葉。

作家、エッセイストなど様々な顔を持ち、近年は画家として精力的に活動する大宮エリー。そんな彼女が監督として制作した自身初となるVR映画『周波数』が、第80回ヴェネチア国際映画祭エクステンデッドリアリティ(XR)部門「Venice Immersive」にノミネートされた。タッグを組んだのは、世界的に著名な国際映画祭にノミネートされるXR映画作品を多くプロデュースするCinema Leap。未だ日本で受賞がないVR部門での受賞を目指し、枠にとらわれない表現をし続ける大宮に白羽の矢が立った。

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視聴者自身の名前を絵本に書き込むところから物語はスタート。乗り物に乗って、アンが生きる世界を一緒に体感するというスタイルの作品は、年齢や国籍問わず、老若男女が楽しめる。

ストーリーは、アーティスト大宮自身の人生を振り返った自伝をもとに構成。主人公が体験した生きにくい日常を生きる中で、世界に存在するあらゆる固有の周波数を知り、世の中の見え方が変わっていく様子を一緒に体験していく、新しい体験型のVR作品となっている。

大宮がVRを使って表現したいと考えたのは、”アートと映画の間のエンタテインメント“だ。いま、世界で行われている戦争、迫害、コロナ渦で深刻になった自殺率増加…。そんな社会問題で疲弊した人々の心をVRを使って癒したいと考え、いつでもどこでもどんな人でも楽しめることをコンセプトとし、制作に取り組んだ。

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インタビューで大宮は「誰しもがオンリーワンの考える葦。作品を見見終わったときに幸せな気持ちになってくれたら」と語ってくれた。

映像は立体ではなく、あえて平面的な絵で3Dを構成していることも印象的だ。これもVR作品の従来のイメージを覆すような大宮らしい斬新な演出。また、薄い紙のような登場人物たちに、実際のパントマイムのパフォーマーによる動きをつけることで、大宮がこれまでの人生の中で大切にしてきたという、フランスの哲学者・パスカルの言葉、「人間は考える葦である」というメッセージを体現した。

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音叉を使ったヒーリング音楽が流れる青を基調とした映像空間は、すべてが包み込まれるようなどこか暖かい不思議な感覚に。

作品のタイトルである『周波数』は、大宮が子どもの頃からずっと大切にしてきた概念。この周波数を表現すべく、劇中のBGMやSEにはヒーリングや波動治療に使われる音叉を使用しており、聴覚的にも見ている人の心を癒してくれる。

本作はヴェネツィア映画祭にて8月30日(水)から9月9日(土)まで展示され、最終日の9月9日(土)に受賞作品の結果発表が行われる。また、本作は日本でも9/26(火)〜9/30(土)の5日間、小山登美夫ギャラリー天王洲、XR Communication Hub. 「NEUU(ニュー)」にて一般公開予定だ。(申し込みの詳細は追って公開)

自身の体験を時代に合わせ、言語の壁を越えるような多角的にアプローチをした作品に早くも受賞の期待が高まっている。

『周波数』

監督・脚本・絵/大宮エリー

出演/水原 希子 
音楽/コトリンゴ
音楽プロデューサー/野口時男(青空)
2023年 日本映画
25分 
ellie-office.com