演劇とコントでエンタメ界を席巻。ダウ90000、メンバー全員ロングインタビュー

  • 文:おぐらりゅうじ
  • 写真:後藤武浩

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2020年に旗揚げされた8人組ユニット、ダウ90000。定期的に演劇の公演を続けるが「劇団」とは名乗らず、ライブやテレビでコントを披露するが「芸人」とも名乗らない。

メンバーは、作・演出を手がける主宰の蓮見翔と、園田祥太、飯原僚也、道上珠妃、上原佑太、中島百依子、忽那文香、吉原怜那の8人。

2022年には第2回公演『旅館じゃないんだからさ』(ユーロライブ)が第66回岸田國士戯曲賞の最終候補にノミネート、『ABCお笑いグランプリ』(朝日放送テレビ)で決勝進出、「M-1グランプリ」では準決勝進出、メンバー全員が出演するドラマも放送された。そして2023年には、冠番組『週刊ダウ通信』(テレビ朝日)がスタートし、昨年に続いて『ABCお笑いグランプリ』で決勝進出、さらに、多くの演劇人が目標とする下北沢・本多劇場で第5回公演『また点滅に戻るだけ』を成功、キングオブコント2023では初の準決勝に進出した。

今回は、ダウ90000結成の地であり、活動の原点となった母校、日本大学芸術学部の教室にメンバー全員が集合し、じっくり話を聞いた。

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『また点滅に戻るだけ』

2023年5月17日~6月30(金)にかけて、第5回公演『また点滅に戻るだけ』が下北沢・本多劇場で行われた。

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2023年のメンバーそれぞれにとって重大だったこと

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ダウ90000 8人組演劇・コントユニット
2020年に日本大学芸術部学のメンバーで旗揚げされた8人組ユニット。第2回本公演『旅館じゃないんだからさ』(21年)が第66回岸田國士戯曲賞の候補にノミネート。『ABCお笑いグランプリ』では22年、23年の2年連続で決勝進出。23年のキングオブコントは初の準決勝進出。メンバーは左から園田祥太(98年生)、吉原怜那(01年生)、中島百依子(99年生)、主宰の蓮見翔(97年生)、道上珠妃(98年生)、上原佑太(98年生)、忽那文香(99年生)、飯原僚也(98年生)。

――2023年10月現在、それぞれ個人的に、今年のダウ90000の活動で重大だったなと思うことを教えてください。座り位置の順番で、忽那さんからお願いします。

忽那 やっぱり本多劇場で公演をできたことですね。あ、でも、2年くらい前から話はあって、それが今年、現実になって。本当に本多劇場でやれるんだって思って。あ、やれるんだっていうか、もう5月にやったんですけど。

蓮見 忽那、今日は全員がしゃべる取材で時間も限られてるから。話はコンパクトにしような。

忽那 本多劇場で公演できたことです!

蓮見 僕もなんだかんだ本多劇場の公演ですね。ただ、忽那も言っていたように、本多劇場でやることは2年前に決まっていたので正直、一番興奮していたのは2年前なんですよ。もちろん、公演を無事に終えられたことはすごくうれしいんですが、決まった瞬間の興奮とはやっぱり違うので。取材でも普段でも、本多劇場のことはよく聞かれるのに、最初の興奮を伝えられないことがもどかしいというか。劇場をおさえてから上演が終わるまでに、平気で2年くらいのタイムラグが発生するので、演劇はなかなか難しいなと改めて思っています。

――本多劇場は第5回公演でしたが、その1つ前、新宿シアタートップスでの第4回公演『いちおう捨てるけどとっておく』(2022年)のアフタートークで、蓮見さんは「この公演を観に来た人たちまでが古参ファンです」とおっしゃっていましたよね。

蓮見 言いましたね(笑)。いや……でも訂正します。本多劇場の『また点滅に戻るだけ』を観に来た人たちまでが古参です。あの公演がこれまでの僕らの集大成です。ここから先はまた別のフェーズに入ります。

上原 ふたりとも本多劇場だったので、それ以外で言うと、冠のレギュラー番組『週刊ダウ通信』がはじまったことですね。地上波のバラエティ番組で、メンバーそれぞれがいろんな企画に挑戦するようになったのは、かなり重大だったなと思います。僕もその番組の企画で、大好きなVTuberさんと共演することができたんですけど、あまりのうれしさに自分をコントロールできなくなって、結果ロケを台無しにしちゃいました……。

蓮見 あの時はカメラの前で普通に怒りました(笑)

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取材を行ったこの日本大学芸術学部の教室では、かつて公演も行っていた。

中島 私も本多劇場の公演ですね。それまで本多劇場が、演劇にとってどういう場所なのか、正直そこまできちんと理解できていなかったので、自分たちがやると決まってから、準備も含めていろいろ勉強したり、実際に舞台にも立って、すごくいい経験ができました。

道上 私はあえて本多劇場以外で。『ダウってポン』(Paraviオリジナル)というバラエティ番組です。この番組はフェイクドキュメンタリーのような企画で、メンバーみんななにも聞かされていない状態で泊まりがけのロケに行ったんですけど、とにかくずっとカメラに撮られていて。そのあと、同じParaviでフェイクではない本物のドキュメンタリーの撮影もあったんですけど、密着されるってこんな感じなんだ、と思いました。

Paraviで今年2月に配信された番組『ダウってポン』。フェイクドキュメンタリーの手法を取り入れた構造が話題となった。

吉原 私は『ABCお笑いグランプリ』で2年連続、決勝に行けたことです。1年目はただただうれしくて、浮かれていた部分もあったんですけど、2年連続ならまぐれじゃないんだって、より実感できました。ほかにもテレビのネタ番組にはいろいろ出させていただいて、特にお正月の『爆笑ヒットパレード』(フジテレビ)に出られたことはすごくうれしかったです。あ、あと個人的には『シガテラ』(テレビ東京)というドラマに出演できたこと。メンバーそれぞれが、ひとりでドラマとかに呼んでいただけるようになってきているので、これからも続いていくといいなと思っています。

園田 僕も『ABCお笑いグランプリ』が印象的ですね。初めて決勝に行った去年は、緊張しすぎてあんまり覚えてないんですけど、今年は少し落ち着いて現場を体感できました。そしたらもう、まわりの芸人さんたちがあまりにおもしろくて。こんなすごい人たちと一緒に決勝戦に出られるなんて、これはすごいことだなって改めて実感しました。

飯原 次は僕ですね。えーと……本多劇場、『週刊ダウ通信』、『ダウってポン』、『ABCお笑いグランプリ』決勝、もう全部言われちゃいましたね。

蓮見 別にかぶってもいいんだぞ。

飯原 かぶってもいいんだ。じゃあ、本多劇場にしようかな。

蓮見 あんまり本多劇場に「じゃあ」とか使うなよ。

飯原 本多劇場でやるってなった時に、密着のカメラがついたんです。すごい近い距離でカメラをまわしていて、これからはこういうのも気にせずこなしていかないといけないんだなぁって思いました。

――飯原さんは『有吉ゼミ』(日本テレビ)の企画で、ゴミ屋敷になった自宅を掃除してもらってましたよね。

飯原 あれはいい仕事でしたね。去年も今年も掃除してもらいました。出演料もいただいて部屋もきれいになって、最高の企画です。しかも一人の仕事だし、ゴールデンの番組だし、あんなおいしい仕事ないですよ(笑)

蓮見 急にギャラの話とかするなよ。びっくりするわ。

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芸能人は、裏も表も変わらない?

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左から主宰の蓮見翔、中島百依子。

――劇場だけでなく、テレビの仕事もするようになりました。芸能界に入って体験したなかで印象に残っていることを教えてください。さっきと反対まわりで、飯原さんから。

飯原 いま番組の企画で楽器の練習をしてるんですけど、この前「まず1回みんなで弾いてみましょう」っていう撮影があったんです。それは「全然うまく弾けないね」っていう画を撮ることが目的で。僕も一応ちゃんと練習はして、気持ち的にはうまく弾いてやろうと思ってたんですけど、番組的に必要なのは、うまく弾けないシーンなんですよね。なので、やっぱりテレビは、撮るものがあらかじめ決まってるんだなと思いました。

蓮見 なんか危なっかしい話だな。俺はその現場にいなかったけど、実際うまく弾けなかったんだろ?

飯原 全然うまく弾けなかった。

蓮見 ほしい画のために、わざと下手に弾いてくれとか言われたわけでもないだろ?

飯原 言われてない。でも俺はうまく弾く気でいたし、もしかしたら、うまく弾ける可能性もあった。でも番組が撮りたいのは、下手な演奏だったって話。

蓮見 で、実際に下手だったんだろ?

飯原 下手だった。

蓮見 じゃあ別にいいじゃん。何なんだよ、お前は!

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左から上原佑太、忽那文香、園田祥太。

園田 僕はバラエティ番組でうまくできなかったことですね。これまでずっと、舞台でもコントでも台本の通りにやってきたので、いわゆる平場はやったことないんですよ。でも『週刊ダウ通信』では、なんとかボケたりしようと思って必死にやっていて。この前の収録で、アルコ&ピースの平子さんと共演したんですけど、僕がどう考えても間違えたボケをしてしまって、それまで平子さんは企画上のキャラを演じていたのに、急にそのキャラを降りて、普通に「それは違うよ」ってダメ出しされました。

蓮見 あの園田はひどかったな。まぁでもまだ一流の芸人さんたちと同じようにできるはずはないから。

吉原 私は『ABCお笑いグランプリ』の決勝で、南海キャンディーズの山里(亮太)さんが引くほどおもしろかったことです。仕切りとしてのMCと、場を盛り上げるトークの塩梅が限界値を突破してました。

道上 私はテレビの編集がすごいなって思いました。30分の番組でも、ロケや収録はもっと長く撮影しているので、オンエアを見た時に「こんなふうにまとめるんだ」って。要点をまとめてしゃべらないとオンエアでもだらだらしちゃうんだなとか、出演する側の視点でテレビを見て、驚きや発見がたくさんありました。

中島 私はダウのメンバーとして一人で『しくじり先生』に出演したことです。2時間半くらいの収録中ずーっと、もう頭がくらくらするくらい現場の熱量がすごくて。ほとんどなにもできなかった。そこで反省したのは、いまの自分が同じ土俵に立てるわけがないってことを自覚して、次からは「自分にはまだできない」というところから考え直そうって思いました。

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左から飯原僚也、道上珠妃、吉原怜那。

上原 僕は『警視庁アウトサイダー』という作品で、初めて連続ドラマに出演させてもらって、共演した室井滋さんがすごすぎたことです。何度も同じシーンを撮り直す時とか、テイクごとにまったく違う演技をされていて、とにかく圧倒されました。

忽那 私はいろんな現場に参加して、どんなに有名な芸能人の方も「人間なんだな」って思いました。楽屋にいる時にあぐらかいて座っていたりとか、メイクしている時に普通の話をしていたりとか、テレビを見ていると常にすごい人として映っているけど、普通に人間として生きているんだって思いました。

蓮見 それは僕も感じましたね。さらに言うと、思っていた以上に、みなさん普段の人間性が、芸風やキャラクターに反映されているんだなって。視聴者として見ている印象では、もっと切り替えていたり、作っている部分があると思ってたんですけど、けっこう普段と地続きでした。リアクションの大きい人は裏でも大きいし、性格や人間性って、そのままテレビに出るのかもしれません。まだ裏の裏があるのかもしれないですけど(笑)。

忽那 私が言いたかったのもこれです!

蓮見 なんだよ、お前。同じだったらカットされるぞ。

忽那 あ、そっか。じゃあ同じじゃないです! 「人間なんだな」のままでお願いします!

――蓮見さんは、メンバーが個人で出演する番組に対して、その都度アドバイスはするんですか?

蓮見 アドバイスしたいことはメンバーそれぞれに100個ずつくらいあるんですけど、基本は言いません。まだ手探りの段階だし、自分たちで思うこともあるだろうし。そもそも僕自身も経験が浅いので、そのアドバイスが正しいのかわからないので。聞かれたら答えますけど、いまはなにも言わないようにしています。そして、誰も僕に聞いてきません(笑)

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お金を手にしても、みんなに変わらないでいてほしい。

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――今年大きく変わったことはなんですか?

飯原 さすがに街で声をかけられたりすることはあんまりないですけど、母校である日藝(日本大学芸術学部)に、ダウに憧れて入ってきた学生がいると聞いたので、あんまり外で悪いことはできなくなってきたのかなって思います。

蓮見 いつも悪いことしてるみたいに言うな! 取材なんだから、普段のトーンでしゃべるなよ。

飯原 あぁ、そうか。こういうのも1年で変わりましたね。普段のトーンでしゃべっちゃいけないっていう。

園田 僕は大学時代、シナリオのコースで蓮見と一緒だったんですけど、とにかく書くことがイヤで。入ってから気づいたんですけど、おもしろいことを書くのって、あまりに苦しすぎる。なのに蓮見は、いまやプロの仕事として書くことを続けていて、プロの人たちからから評価もされていて、改めてすごいやつなんだなって実感しました。この1年で蓮見への尊敬レベルが上がりました。

吉原 私は人と外に出て遊んだりするようになりました。それまでは人と必要以上のコミュニケーションをとることが苦手だったんですけど、仕事をはじめてから、誰かを誘ったり、予定を立てたりするようになって、そこはめっちゃ変わりました。

中島 私は部屋が汚くなりました。もともと部屋が汚いタイプじゃなかったのに、掃除しなきゃって思う機会がどんどん奪われているんだと思います。

――それは忙しくなったから、ということではなく?

中島 違うんです。部屋を掃除する時間がまったくないほどは忙しくないんです。なのに、部屋が汚くなって、洗濯物もたまっちゃうし……。

蓮見 1年の変化を聞かれて何の話してんだよ。

道上 私はメンバーに対する見方が変わりましたね。いままでは、たとえば誰かが一人でなにかに呼ばれたりしても、自分はまったく喜べなくて。「私なんてここにいなくていいんだ」って自己肯定感めっちゃ下がるみたいな感じだったんですけど、この1年でやっと応援できるようになりました。

蓮見 1年前までの道上は、本当にメンタルやばかったんですよ。嫉妬と落ち込みで、楽屋でも一言もしゃべらない、誰のことも応援しない、っていう。

中島 しかも、そういうのがみんなにバレちゃってたんだよね……。

道上 自覚ありました……。なので、やっと最近は少し楽になりました。

吉原 でも私は、そういう悔しい気持ちも大事だって思うよ。

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上原 僕は芸人さんの友だちが増えました。

蓮見 そう、なぜか上原は芸人さんに気にかけてもらうんですよ。メンバーで一番交流してる。誰と仲良いんだっけ?

上原 ファイヤーサンダーの﨑山さん、Gパンパンダの星野さん、トンツカタンのお抹茶さん、徳原旅行さん、サノライブさん、とか。

忽那 私は泣かなくなりました。1年前までは、インタビューとかたくさんの人の前で自分のことをしゃべったり、ラジオを収録した後とかに、よく泣いていたんです。別に悲しかったわけじゃなく、そういうのをずっと避けてきたので、エネルギーの使い方がわからないというか、慣れてないことで反射的に泣いちゃってたのが、最近はやっと泣かずにしゃべれるようになりました。

蓮見 僕は、こんなこと言ったらあれかもしれないですけど、お金持ちになりました。この仕事でこのくらいのお金をもらえるんだ、っていう実感が一番リアルな変化ですね。そろそろメンバーにもけっこうな金額が入るんですけど、それでみんなが変わらないといいなって思います。

と言うのも、お金の問題だけじゃなく、どの現場でもけっこう過保護にしてくれるんですよね。カットかかるたびにADさんがケアしてくれたり、日傘を差してくれたりして、いちいち断るのも生意気だと思われるかなと思って言えないし、かといって、それをしてほしいとも思ってないし。相当いろんなところに気をつけないと、どんどん生意気だと思われてしまうなっていうのは、日々痛感しています。

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期待がゼロにならないうちに、どれだけ成長できるか

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――では、ここからは主宰の蓮見さんに。今回の取材場所である母校では、大学の教室で公演をやっていたんですよね。

蓮見 やってましたね。芸術学部なので、僕らだけではなく、いろんなサークルとかが教室でなにかを発表するみたいなことはやってましたけど、大学の教室でやるライブなんて、基本つまらないんですよ。つまらないというか、そこまで本気じゃない人たちも多かったし。でも僕は、何度か公演をやっていくなかで、自分が客としてお笑いライブを観ている感触と比べても、けっこういける気がしたんです。まわりは「ウケるのはここだけだよ」とか言ってくるんですけど、どう考えても外でも通用する気がして。それで大学を卒業する時に、本気で仕事にしたい人だけついてきてほしい、2年後には全員バイト辞めさせるって宣言して、残ってくれたのがいまのメンバーです。

――これまでの活動を振り返って、ここは思い通りにいってるな、というのはどんなところですか。 

蓮見 うまくいってよかったなと思うのは、ちゃんと劇場にお客さんを呼べる集団になってきた、っていうことですね。あまり間が空かないように、継続的に劇場でのライブは続けてきて、そのうえでテレビのネタ番組にもちゃんと呼ばれて、その循環はうまくいってるのかなと感じてます。あとは、僕が個人として、ラジオのレギュラー番組とかテレビのゲスト出演があって、脚本や台本を提供する仕事もあって、そのバランスがちょうどいい感じにやらせてもらっています。なかでも明確に目指していた『ゴッドタン』の企画「お笑いを存分に語れるバー」に出られたのはうれしかったですね。

――一方で、あまりうまくいかなかった、と感じるところは?

蓮見 まだまだキャリアが浅すぎるので、そこまで深刻に考えてはいないですけど、僕もメンバーも、準備不足のままバラエティに出てしまっていることですかね。もしここから芸人さんと肩を並べてバラエティで活躍したいのだとしたら、超猛スピードでとんでもない努力が必要になるじゃないですか。それをしないのなら、ボケたりもしない、野心も語らない、芸能人に必要なものすべてをきっぱり諦めて、いわゆる「普通の人の感覚」みたいなことを大切にしたほうがいいだろうなって。でも、もし1ミリでも「芸能人としてテレビに出たい」と思っているなら、それなりの覚悟と努力が必要だなって思います。

――それに8人もいれば、それぞれに違う道が開けてくるでしょうからね。

蓮見 うまく見つけてくれるといいですけどね。全員がバラエティに出続ける必要はまったくないと思ってますし、僕も含めて、メンバーも競争を好まないタイプなので、人を押しのけて前に出ようとする人間が一人もいないんですよ。

――では最後に。今後の目指す方向について教えてください。 

蓮見 本多劇場での公演も終えて、劇場のキャパとかの目標はクリアして、おそらくあと数年はどんなに1つの公演がスベってもお客さんは来てくれると思うんです。なので、これまでに得られた期待がゼロにならない間に、僕はもちろん、個々のメンバーがどれだけ成長できるか。

僕は全員それぞれが本当におもしろい素質があると思っているし、10年とか仕事を続けて、舞台に立ち続けていれば、一般社会からはどんどんズレていくので、そこがまたおもしろさになると思うんです。あとは、そのズレを自覚して、いじられてもいい人間になれるかどうか。いじられることを許容できる人が売れる人で、許容できない人は売れないと思っているので。あとは、何者でもない時から僕らをずっと出してくれた、渋谷のユーロライブ(ライブハウス)に恩返しをしたいです。

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