坂本龍一が人生の終章を語った、最後の完璧な作品

  • 文:瀧 晴巳(フリーライター)
Share:

【Penが選んだ、今月の読むべき1冊】
『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』

02.jpg
坂本龍一 著 新潮社 ¥2,090

タイトルは映画『シェルタリング・スカイ』の原作者、ポール・ボウルズの言葉から。余命半年を宣告された時の衝撃。コロナ禍で面会ができない中、支えとなった愛。消えることのない音楽への情熱。辺野古を訪れ、原発の問題にも言及する。人生の終章をこんなにも透徹した言葉で語れるものだろうか。自らを律し、命を燃やし尽くそうとするその姿勢が、読む者を鼓舞する。幼少期から57歳までを綴った『音楽は自由にする』に続き、最晩年までを語り尽くした自伝は世界的な音楽家の最後の完璧な作品になっている。

※この記事はPen 2023年9月号より再編集した記事です。