液体、チキンナゲット、遺灰まで… ステージに投げ込まれる“異物”、ファンの心理はいかに

  • 文:中川真知子
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ステージ上のパフォーマーの攻撃が相次いでいる。その被害者リストに、新たにラッパーのカーディ・Bが名を連ねることとなった。彼女は、ステージに近い観客から飲み物をかけられたのだ。腹を立てたカーディ・Bは、手に持っていたマイクをとっさにその観客に向けて投げつけた。

カーディ・Bの反撃は、ステージ上でも決してやられっぱなしではないという姿勢が評価されている一方で、投げつけたマイクが無関係の人に当たった可能性もあるため、賛否両論だ。

また、パフォーマンス中にカーディ・B本人が「暑いから水をかけてほしい」とファンに言っていたため、こういった事態を自ら招いたとも言われている。

「顔にかけてくれとは言っていない」とカーディ・B

とはいえ、昨今は歌手への度を越したファンアピールが後をたたない。

ビービー・レクサがコンサート中にスマートフォンを投げつけられて負傷したのは記憶に新しい。歌手のピンクは、“遺灰が入った袋”を投げつけられている。

「あなたのお母さんなの? どう受け止めればいいのかわからない」

ぶつかっても怪我はないが、危険な展開になり得るものもファンによって投げ込まれている。去年の8月、ハリー・スタイルズはコンサート中にチキンナゲットを投げられた。拾い上げたハリーに向かってファンは「食べて!」とコールした。

誰が投げたのかもわからない、何が入っているのかもわからないチキンナゲットを、その場のノリで「食べて」と言ってしまうファンたちに恐怖心すら覚える。

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歌手に物を投げつけるファンの心理とは

ビービー・レクサにスマートフォンを投げた27歳のファンは、その動機を「面白いと思ったから」と語った。

他の人たちがこのような行動を起こす具体的な理由はわからないが、エンターテイメントとスポーツを専門とする法律事務所「Salzano Ettinger Lampert & Wilson, LLP」のフランク・サルツァーノは、SNSがアーティストとファンの距離を縮たことが原因のひとつだと主張する。

「(スタージ上の歌手に暴力を働く)原動力になっているのは、SNSを通じてファンが有名人と24時間365日つながっていることにあります。その結果、ファンは思いのままに行動できるのだと誤った考えを持ってしまう」

自分の母親の遺灰が入った袋をピンクに向かって投げつけた人物は、まさにそうだ。自分には何をやってもよい権利があると勘違いしているのだろう。

SNSが原因のひとつならば、SNSに蔓延る「面白ければいい」という文化も、過激な行動を助長させていると言えるだろう。ビービー・レクサにスマートフォンを投げた男も、ハリー・スタイルズにチキンナゲットを「食べて!」と言った人たちも、面白い展開、衝撃的な展開を期待するあまり、危険性まで考えが及んでいない。

このトレンドについて、歌手のアデルはステージからこのように呼びかけている。 

 「観覧時のマナーを忘れた人たちを見たことがある? 色々と投げつけてくるの。ふざけるんじゃない。よくもそんなことができるわ」