“海に浮かぶ都市”の実現は近い!? 世界各地で構想される、海洋建築とは

  • 編集&文:久保寺潤子 文:川勝真一(RAD/モルディブ フローティング シティ、オセアニクス)
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気になる未来の姿に迫った、Pen最新号『2033年のテクノロジー』。その中から、科学の進化でそのポテンシャルが注目される海洋建築にフォーカスした記事を、抜粋して紹介する。

Pen最新号は『2033年のテクノロジー』。AIの進化でどう変わる!? モビリティ、建築、アート、ファッション、食&農業、プロダクト、ゲーム、金融と8つのジャンルで2033年の、そしてさらなる未来のテクノロジーを占った。気になる未来の姿に迫る。

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宇宙と同様、未知なる可能性を秘めているのが「海洋」だ。科学の進化でそのポテンシャルが改めて注目されるなか、建築もまた、大海原を舞台にチャレンジが行われている。

ドウゲンシティ

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Dogen City全容。沿岸付近に係留させ、内陸とも人の出入りが可能。外周には10mの防波堤を設置。リングは24のパーツが数珠つなぎになり、津波などの揚力を逃しやすい設計となっている。© 2023 N-ARK Inc. All Rights Reserved.

地球温暖化によって住まいを追われる「気候難民」の数は2050年には2億人にのぼると想定されている。この状況に鑑みて海上都市を構想したのが日本のスタートアップ「ナーク」。直径1.58㎞、外周約4kmの「Dogen City㆐同源都市」は収容人数約4万人、高度な都市OS(インフラを支えるソフトウェア)に支えられたコンパクトな海上都市の構想だ。リングの上部には遊歩道や公共住宅、海中部分には上下水道と電力・データインフラを張り巡らし、内側の海上には公共施設などを設計。「医食住同源」をコンセプトに建築、情報、エネルギー、資源を一体化させたスマート・ヘルスケア・シティを目指す。自然災害や海洋環境に対する課題解決型都市という発想に、世界が注目している。

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リング断面図。上から遊歩道、公共住宅、ホテル、インフラ、食料工場などが設計されている。エッジデータセンターは海中で冷却され、エネルギー消費を抑えながら、都市運営OSやヘルスケアデータ分析、創薬シミュレーションなど付加価値サービスを提供する。© 2023 N-ARK Inc. All Rights Reserved.

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リング内側の海上には住宅や病院、公共施設が浮かび、建物が自律的に移動する。© 2023 N-ARK Inc. All Rights Reserved.

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モルディブ フローティング シティ

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上空からの様子。オランダの最新の浮体式技術を導入し、陸地や水路の形状は、自然の珊瑚が成長する姿からヒントを得てデザインされた。© Maldives Floating City

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カラフルな色彩が特徴的な建築群は、住居の他にショップやレストランとして用いられる。都市内部の移動は船か、排ガスを出さない水上スクーターが用いられる。© Maldives Floating City

人類は何世紀も前から世界各地で水上生活を営んでおり、近代以降も水上での都市モデルは幾度となく提案されてきた。モルディブの首都マレからボートで15分のラグーンに構想中のこの革新的な浮体式住宅は、自然エネルギーや循環型インフラを積極的に取り入れた現代的な水上都市だ。背景にあるのは気候変動による海面上昇の危機で、これに対処するための都市開発が構想されている。珊瑚礁の回復を目指し、自然とともに暮らすという開発目標のもと、水面下には人工の珊瑚バンクを設置。都市そのものが珊瑚の成長を促し、自然との共生を実現する。2027~28年完成予定。


オセアニクス

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デザインは革新的な建築を各地で実現させてきたBIGが担当。蜂の巣にヒントを得たフローティングユニットが連結した構造で、人口に応じてスケーラブルに展開可能。© OCEANIX/BIG-Bjarke Ingels Group.

韓国釜山の沿岸部に構想中の水上都市。海面上昇の危機にある世界中の沿岸都市の未来を切り拓く実験都市としても期待されている。計画は12000人が居住する3つのプラットフォームからスタートし、最終的に10万人以上の収容を目指す。海上に豊富に存在する太陽光、風力、波力などの再生可能エネルギーを利用することで電力は自給可能となる。使用された生活用水は濾過され、ほぼ100%再生利用可能。さらに浮体式プラットフォームに使われる特殊な素材が海水を浄化する。生ゴミも農業用肥料に用いられるという。2028年完成予定。

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深海未来都市構想オーシャン スパイラル

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人間の活動場所となる「BLUE GARDEN」は水圧を受け止める球体構造で、ペットボトルのリサイクル材を活用した樹脂コンクリート、錆びない配筋、外壁は三角形のアクリル板の組み合わせを想定。画像提供:清水建設株式会社

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内部にはホテルや商業・コンベンション、住宅、オフィス、研究施設などが入る。画像提供:清水建設株式会社

清水建設が提案する深海未来都市構想「OCEAN SPIRAL」。海面に浮かぶ直径500mの球体の都市「BLUE GARDEN」から海底に向かって伸びるらせん状の海中トンネルによって、水深3000~4000mの海底に設置するCO2 の貯蔵・再利用や海底資源の開発を行う工場へとつながる。深海は、食糧やエネルギー、水、CO2、資源など現代が直面するさまざまな課題を解決するポテンシャルを秘めているが、OCEAN SPIRALは「深海に都市をつくる」ことで地球における「人類社会の持続性」の向上を目指す。陸上よりも快適な海での暮らしが、地球の危機を救うきっかけになるかもしれない。

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