Teslaの「イギリス限定最新製品」に、オーナーたちが困惑した理由とは…?

  • 文:青葉やまと
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※画像はイメージです istock-hapabapa

Teslaがイギリスで配布した“新製品”が、現地のオーナーたちを困惑させている。自動車業界の先端をゆく同社が提供した品は、なんともアナログな金属製マジックハンドだった。

このアイテムは「The Reacher(リーチャー)」と呼ばれ、現地のハンドル事情に対応するために提供された。Teslaは5月に右ハンドル車の製造を停止し、左ハンドル車のみの提供に切り替える旨をアナウンス。右ハンドルが主流である現地のオーナーたちのあいだで、動揺が広がっていた。

駐車チケット受け取りなどで不便を強いられることになるが、リーチャーはこれを解消するものだという。イギリスのTeslaオーナーたちが加入するファンクラブであるテスラ・オーナーズ・UKは、TwitterにTeslaから届いたというリーチャーの箱の画像を投稿。ツイート本文で「Teslaのイギリス市場専用の最新プロダクト…(泣き笑いの絵文字)(そう、本当に)」と述べ、力業での解決策に困惑した様子だ。

実用性は限られるが、配慮は感じられる

米自動車情報サイトのカー・スクープス、「これがイギリスの道路での最も実用的なソリューションとはならないことは疑いようもない」と述べ、実用性に疑問が残ると指摘。

もっとも、左ハンドルのみを用意するメーカーはTesla以外にも存在する。そうしたメーカーと比較すれば一定の配慮がうかがえるとも同記事は述べている。

イギリスでは日本と同じく、クルマは左側通行であり、右ハンドル車が主流だ。世界の多くの地域とは逆となる。ところがTeslaは生産の合理化のため、イギリスなど一部の国において、モデルSおよびモデルXの右ハンドル車の生産を打ち切った。今年5月以降は左ハンドル車のみを生産している。

事情は日本でも同様だ。Teslaは日本版の同社ウェブサイトにて、「日本で納車されるModel Sはすべて左ハンドル仕様です。」と説明。Model Xについても同様の記載がある。

右ハンドルの生産停止で提示された、3つの選択肢

右ハンドルの製造停止がアナウンスされた際、Teslaはすでに発注を済ませていたイギリスのオーナーたちに対し、3つの選択肢を提供した。

1つ目は、単純に注文をキャンセルするというもの。2つ目は、どうしても右ハンドル車が欲しい場合、モデルYやモデル3といった他の車種に注文を切り替えるというもの。この場合、切り替え先のモデルの正規料金に対し、2000ポンド(約37万円)の値引が適用される。

最後の3番目の選択肢は、当初の希望に沿って車種はモデルSあるいはモデルXを維持するが、発注と異なる左ハンドル版で納車されるというものだ。この条件で左ハンドルを承諾したオーナーに対して今回、リーチャーが配布された。

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スマートではないが使えなくもない

リーチャーは金属製のスティックであり、先端のはさみ状の部分でチケットや紙幣を保持する。はさみ部分は、手元のグリップ部分を握ることで開閉する。

精算機で支払う際は、左側の運転席からリーチャーを掴んだ右手を伸ばし、助手席越しに車外右側の機械までチケットを運ぶ。リーチャー自体はさほど長くはなく、助手席側にかなり身を傾けながら使うことになる。車内に留まりたい雨天時には活躍するが、使用中の体勢はあまりスマートではない。

なお、スティック部分は単純な棒となっている。リーチャーは中央で2つに分離して短い状態で収納できるが、一部のマジックハンドのようにアコーディオン状に伸び縮みしたり、長さを調整したりする機構はない。

使用してみたオーナーたちによると、それでも最低限の実用性は備えているようだ。カー・スクープスによると、すでに複数のTeslaオーナーがリーチャーを使用しており、ドライブスルーでのフードの受け取りから精算機へのカードの差し込みまでをこなしているという。

一般に、Tesla関連の限定品はコレクター心をくすぐることから、プレミア価格で取引されることがある。リーチャーに関しても同様の価値が出るとの観測もあるようだ。

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TwitterにTeslaから届いたというリーチャーの箱の画像。

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金属製のスティックであるリーチャー。

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