田原桂一の写真がとらえた、人間の存在の輝き。ダンサー、田中泯と取り組んだ表現とは?

  • 文:はろるど
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田原桂一『New York-1』 1978年撮影

1971年にフランスへと渡り、そこで出合った日本の柔らかい光とは違うヨーロッパの刺すような鋭い光に魅了され、写真家として活動をはじめた田原桂一(1951〜2017年)。1977年に「窓」シリーズでアルル国際写真フェスティバル大賞を受賞すると世界的な脚光を浴び、その後、日本でも木村伊兵衛賞(1985年)を受賞。長くパリを拠点にしながら、光をテーマにして写真、彫刻、インスタレーション、建築といった幅広いジャンルの作品を手がけて活躍してきた。とりわけルーヴル美術館などが所蔵する古い人物彫刻を撮影し、石板やガラスに焼き付けた「トルソー」のシリーズにて知られている。

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1F展示風景:田原桂一『Island-22』 1980年撮影

現在、東京・新宿の√K Contemporary(ルート K コンテンポラリー)では、田原桂一の個展「存在」が開かれている。ここでは田原が1978年から1980年にかけて、ダンサーの田中泯とともに「光と身体」の関係性に取り組み、身体と光が光合成したかのような「Photosynthesis」シリーズの作品を出展。あわせて地下のスペースでは、クリスチャン・ボルタンスキーやヨーゼフ・ボイスといった世界的なアーティストを被写体とした「Portrait」を展示している。なお「Photosynthesis」のシリーズは、3年間かけて撮影されたのち、約35年間未発表だった作品で、本展は2017年に原美術館にて発表されて以来の公開となる。

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『田原桂一展「存在」』 1F展示風景 撮影:松浦文生 「Photosynthesis」シリーズの作品が並んでいる。

 

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『田原桂一展「存在」』 B1F展示風景 撮影:松浦文生 「Portrait」シリーズの作品が、壁から床、また宙に浮くように展示されている。

田原が「Photosynthesis」を撮影をはじめたのは27歳。そして今でこそ前衛的ダンサーとして世界的に名を馳せる田中も、当時はパリでデビューを果たした33歳だった。若きふたりのアーティストが真剣勝負するかのようにして生み出された作品には、並々ならぬ緊張感がみなぎっているとともに、互いのセンスがぶつかり合っている。そしてモノクロームから光とともにざらりとした感触を伴って写し出された田中の身体には、人間の確かな生命の存在が感じられ、かけがえがないほどに尊い。と同時に、光を捉えることに注力した「トルソー」とは異なり、人間へと真正面に向き合いつつ、動的でかつ躍動感にも満ちていて、田原の作品の中ではテイストがやや異なっていることも分かる。

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田原桂一『Bordeaux11』 1980年撮影

一際目立つ「Bordeaux-11」は、かつてナチスがフランスのボルドーに築いた要塞の廃墟を舞台としていて、田中が異世界より忽然と現れ、ただひとり浮遊するかのように佇む光景を写した幻想的な作品だ。会場は1階と2階が「Photosynthesis」、そして地下が「Portrait」シリーズの2部構成。白く輝かしい地上の展示室から、コンクリートに覆われた暗がりの洞窟のような地下のスペースとのコントラストも魅力的といえる。なぜ田原が「Photosynthesis」を制作後すぐに発表せず、半ば封印していたのかは定かではないが、若き写真家が肉薄した人間の存在を√K Contemporaryの個展にて目の当たりにしたい。

『田原桂一展「存在」』
開催期間:2023年6月17日(土) 〜7月15日(土)
開催場所:√K Contemporary  
東京都新宿区南町6
TEL:03-6280-8808
開館時間:11時~19時
休廊日:日、月
入場無料
https://root-k.jp/