日本のレイキヒーリングが“Reiki”となってアメリカで注目! その理由とは?

  • 文:菅 礼子

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カナダの山火事の影響で数日にわたり空がオレンジ色にかすみ、世界最悪の大気汚染に見舞われたニューヨーク。家の中にいることを推奨された数日間は、2020年のパンデミック時を思い起こさせた。そんな色々なことが起こるこの街ではメンタルヘルスケアへのアプローチもさまざまで、日本に比べてカウンセリングが利用される頻度も高い。

「レイキヒーリング」という言葉を聞いたことがあるだろうか? 霊気? レイキ? 聞き覚えがあるかもしれないが、正直ちょっと胡散臭いという思っている人もいるのではないだろうか。

東洋では「気」や「Chi」、サンスクリットでは「プラーナ」や「シャクティ」などの言葉がある通り、以前から“生命エネルギー”の存在は信じられている。「レイキヒーリング」とは、そんな生命エネルギーによる施術を行うエネルギー療法のことだ。

日本発祥のレイキヒーリングは、臼井甕男氏が始めた臼井霊気療法に始まり、海外へと派生していった。、アメリカでは大学でのトレーニングや病院で治療のサポートとして取り入れられているほか、巷のサロンでも気軽に体験できる。ニューヨークで長年レイキヒーリングを施術するヒーラーに「レイキ」について話を聞いた。

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写真はイメージ

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全米の有名病院でも取り入れられるレイキヒーリング

ニューヨークの中でも高度な治療を行っているニューヨークプレスビテリアン病院では、各治療のサポートとして痛みの軽減や不安の軽減などを目的にレイキヒーリングを取り入れている。

実際、がんで放射線治療を受けている患者へのサポート治療として、レイキヒーリングや東洋医学の研究が行われているようで、患者たちの血圧、心拍数、不安や痛みのレベルが緩和されたパターンが実証された。西洋医学を補完する役割として、レイキヒーリング以外にも伝統的な鍼やお灸なども取り入れられている。

他にもジョージワシントン大学病院や、ペンシルバニア大学のエイブラムソンがんセンター、ダナ・ファーバーがん研究所など、全米の有名な病院でレイキセッションやレイキセラピーという形で取り入れられている。がんセンターでのレイキヒーリングの導入が多いことも気になるところだ。

また、ミネソタ大学やカリフォルニア大学・DAVIS校、ケンタッキー大学、ストックトン大学など、多くの大学でもレイキヒーリングを学ぶコースが設けられている。

“レイキ”の発祥地である日本では、病院や大学の講座で取り入れられているのだろうか? 目に見えないエネルギーを扱うレイキだが、アメリカの医療機関では大きな関心ごとのひとつのようだ。

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ヒーラーに聞く、レイキの魅力とは?

ニューヨークで長年レイキヒーリングのセッションを行うダリアさんに、レイキについて伺った。彼女は現在、ミッドタウンにある「Jewell House(ジュエル ハウス)」でセッションを行っている。

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レイキヒーリングの施術をするダリアさん。2001年にイギリスのキャロライン・フィッシャー氏のもとでレイキヒーリングの勉強を始め、半年ほどで施術者の資格を取得。施術者の資格を取得後は家族や友人に施術をし、自宅サロンやリモートでセッションを開始。イベントにてレイキヒーリングを広めるほか、「ジュエル ハウス」で定期的にセッションを行っている。

 ——レイキヒーリングを始めたキッカケは?

80年代終わり頃から気になっていたのですが、カルト団体がバックにあるなどの噂からなかなか踏み出せずにいました。アメリカが、そしてニューヨークがカオスの真っ只中にあった2001年に、レイキへの疑念が解けたので、レイキヒーリングの勉強を始めました。初めてレイキのグループイントロに参加した時、施術者の方が私の肩に触れた途端、電気ショックのような感覚とともに、胸の辺りで放射状に火花のようなものが飛び散るのが見えて咳き込んでしまい、びっくりしました。そんなことから好奇心が湧いてきて、もっと深く知りたいと思ったのです。

勉強を進めるうちに、まずは自分自身がヒーリングを受け取ることが大切だとわかりました。そして、レイキで自身の心を鎮め、呼吸を深くすることを学びました。

2002年に、Crystal Gardens Healing(クリスタル ガーデンズ ヒーリング)というサークルをイギリスで主催していたキャロライン・フィッシャー氏のもとでレイキマスターディグリーを取得しました。それからクンダリニーレイキ、グリーンターラセイキム、シルバーバイオレットフレイム、アクセスバーズなどの勉強をし、施術に取り入れています。また、食によるボディ+エネジーワークも大切にしています。お料理やベイキング、発酵、つみ草、醸造、手作り調味料、小さなバルコニーでのガーデニングなどを実践するようにしています。

——レイキヒーリングとはなんでしょうか?

「霊気」という言葉は、少なくとも19世紀後半くらいには良く使われていた言葉です。元は「霊的な生命力」というような意味だったそうです。 レイキの創設者とも言われる臼井甕男(うすい・みかお)氏は、仏教系の厳しい修行の末、その霊気を系統立ててヒーリングに応用する「臼井霊気療法学会」を築いたといいます。 また、臼井氏は、関東大震災の時にたくさんの人々に霊気の施術をしたそうです。

現在のレイキは、臼井氏の弟子である林忠次郎氏の弟子、ハワイの日系人であった高田ハワヨ氏がアメリカに伝えたことから広まりました。 これは私見なのですが、昨今では、伝統的な霊気とは別に、多くの人々がレイキを使い、発展させたメソッドもたくさん派生していることから、レイキエネジー自体がフレキシブルになっていると感じます。 レイキは「人に親切に」のような原則はありますが、宗教とは違って教義や教祖が無いことも、その原因なのかもしれません。

また、身体に手を当てる療法は、人間の文化があるところには必ずといっていい程ありますので、世界中に似たようなメソッドがあります。 さまざまなマニュアルで、「レイキはユニバーサル、つまりどこにでも溢れている普遍のエネジー」と説明されています。 それはその通りだと思います。

そして、さらに、レイキが「いま、ここ」を通して、瞬時に過去、未来に関することや、遠くにある場所、説明のつかないビジョンや手触り、音などの感覚にアクセスすることなどから、レイキはマルチバーサルであり、限りないポテンシャルに満ちたものであると、私は感じます。

——レイキからはどんな効果が得られるのでしょうか?

施術者の手当て療法は、シンプルに気持ちがいいもので、何もせずに横たわって手を当てられているだけで緊張が緩み、眠りと覚醒の間で深いヒーリングが訪れます。実際、いくつかの研究では痛みや不安、疲労の軽減が報告されています。

私のセッションでも、大病の手術の前後、遠隔やリアルで施術をして予後がよかった、ドクターにお世話になりながらも短期間で婦人科系の症状が軽減した、レイキ伝授をさせていただいた方が毎日セルフレイキのトリートメントをして基礎体温が上がった、ボディに好ましい変化が現れた、睡眠の質が向上した、などのフィードバックをいただいています。

私たちの心と体、マインド、ソウルはすべて繋がっています。心身の健康に一番大切なのは、リラックスすることです。思考を空っぽにしてリラックスすることで、わたしたちにとって最大最善のヒーリングが起こるのです。

そうやって、レイキの受け手が必要なエネルギーを引っ張って、必要な箇所に取り込むのを目撃するのは毎回驚きとともに納得のいく経験となります。睡眠中にヒーリングの統合が起こることが多いので、セッション後は水分をたくさん摂り、早めに就寝することをおすすめしています。数日、数週間かけてご自身のタイミングで消化していく事項もあるでしょう。そんな過程であなたの中の何かが目覚め、ひらめきや変容が浮かんでくることもあるでしょう。あなたがご自身のためにエネジーワークをしてみようと決めた時点で、すでにいろいろ動き出しているのです。施術者と受け手のクリエイションのコラボは毎回違った形で表れます。

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ジュエル ハウスの店内の様子。
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ジュエルハウスではレイキヒーリングだけでなく、アイラッシュやネイル、マッサージなどの施術も行割れている。

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——日本はレイキの発祥ではありますが、懐疑的な意見もあります。

日本でもアメリカでも、レイキの効果に懐疑的な方は一定数いらっしゃいます。目に見えないものを扱うエネジーワークは、体験するまではわかりにくいからです。実際私も、レイキを始めたいと思ってから実際に始めるまで数年間悩みました。収益目的の新興宗教団体などが背後にあって洗脳でもされるのではないか、と懸念したからです。始めてみたら全くそんなことはなくて、もっと早くから始めればよかったと思いました。アメリカでは、研究報告を元に医療機関でもレイキトリートメントを緩和ケアのサポートに取り入れるところがありますので、受け入れられやすいのかと思います。

——ジュエル ハウスでのセッションの内容を教えてください。

ジュエル ハウスでは、お客さまと私が、完全に「いまとここ」に集中するために、心地よい空間でサポートと安全な環境を提供いたします。

最初に大体のセッションの流れを話し合い、特にフォーカスしたいこと、問題などがあれば伺いますが、そういったシェアが必須というわけではありません。着衣のままヒーリングベッドにお身体を委ねていただき、お客さまの身体に軽く手を触れたり、または身体の近くでエネルギーを流していきます。私のレイキセッションは、いつでもお客さまの主導で進みます。お客さまの現在位置にアクセスすることで、肉体とそれを囲むエネルギーの必要な箇所にレイキが流れて、マジカルな共同作業の時間となります。優しく温かな感触や微細な振動があったり、それが私の手を離した状態でも継続したり。

また、美しい色の丸い光がまわったり、脈打つのを見たり、波動をかすかな音として捉えたりする方もいらっしゃいます。その時その場で体感はなくても、ただただ気持ちよくなって、睡眠と覚醒の間で身体と心が緩み、バケーション状態を楽しむのも素晴らしい体験です。セッション後にはご質問やご感想をいただいたり、こちらからもフィードバックさせていただいたりもします。

——どんな方にセッションを受けてほしいですか?

レイキの用途には無限の可能性があります。大小手術の前後や慢性の症状があって通院中の方だけではなく、頭痛、肩こり、腰痛などのちょっとしたボディ関連問題の緩和に、また、睡眠不足、多忙による疲労、クリエイティビティの枯渇、日常のストレスなどメンタル関連にも、セッションを受けることで全てを一旦停止して強制的に思考と体を休め、緩めることは、どなたにとっても有用といえるでしょう。

文:菅 礼子