没後70年、阪東妻三郎の傑作無声映画「雄呂血」が美しくよみがえる!

  • 文:Pen編集部
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1925年(大正14年)に公開され、大ヒットとなった傑作無声映画「雄呂血」。主演を務めた阪東妻三郎の没後70年を迎える今年7月、4Kデジタル修復版としてよみがえる。

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ラストの15分におよぶ大立ち回りは、日本映画最高のチャンバラシーンとして知られている同作。戦災や劣化などにより、ほとんどが失われた戦前の日本映画だが、「雄呂血」の主演で、俳優・田村正和らの父としても知られる、“阪妻”こと阪東妻三郎本人が保管していたことが判明。この度、完全に近い形での鑑賞が可能となった。

「雄呂血」あらすじ

久利富平三郎(演:阪東妻三郎)は、家老の倅との喧嘩がもとで漢学塾を破門になり、密かに思いを寄せていた塾長の一人娘・奈美江(演:環歌子)からも誤解されたまま絶交される。奈美江を思う気持ちを断ち切れぬまま、浪々の身となり、いつしか無頼漢(ならずもの)と呼ばれ、役人から追われる身となる。逃げた彼をかくまった顔役(演:中村吉松 )は、町の人からも慕われる立派な親分だが、裏の顔は極悪非道の大悪人であった。平三郎は、誰よりも善良でありながら世の中に受け容れられない自分と比べ、あまりの矛盾に怒りを感じる。そこへ昔の思い人・奈美江が旅の途中で病気になった夫(演:春路謙作)と共に連れられてくる。奈美江に悪親分の魔の手が伸びると、とうとう平三郎の怒りも爆発。親分達に加え、役人までもがやってきての大立ち回りへと展開する。

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左が4Kデジタル修復版。髪の毛の陰影や目尻のしわなど、細部まで視認できるようになった。

今回発見されたのは、劇映画としては日本最古のものとなる国宝級のオリジナルネガ。それを最大限に活かし、88000コマにおよぶ手作業でのノイズ除去や上映速度の調整を経て、公開当時の状態に限りなく近づけた。

また、国立演芸場花形演芸大賞の金賞を受賞している活動写真弁士・坂本頼光と、数々の映画音楽を手がける作曲家・清水靖晃が4Kデジタル修復版に参加。作品に新たな命を吹き込んでいる。 

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4Kデジタル修復版の「雄呂血」は、CS時代劇専門チャンネルで7月8日と7月30日にそれぞれ放送。なお、同局では7月1日・8日・30日に「雄呂血」4Kデジタル修復版の制作プロジェクトの軌跡を追ったオリジナル番組「阪妻と『雄呂血』~田村家の100年~」もオンエアされる。

「雄呂血」<4Kデジタル修復版>(1925年公開・モノクロ ※2K放送)
放送日時:2023年7月8日(土)夜8時〜/7月30日(日)朝4時〜
監督:二川文太郎
原作・脚本:寿々喜多呂九平
出演:阪東妻三郎、環歌子、中村吉松、春路謙作 ほか
弁士:坂本頼光
音楽:清水靖晃

「阪妻と『雄呂血』~田村家の100年~」(オリジナル番組)
放送日時:2023年7月1日(土)夜10時〜ほか
出演:田村亮、田村幸士

https://www.jidaigeki.com/osusume/orochi/