ミラノサローネ2023において注目を集めた、“廃棄される畳のい草と樹脂”を使った3Dプリント家具とは?

  • Pen編集部
Share:

毎年4月、世界中の人気ブランドや気鋭デザイナーたちの作品が集結するデザインの祭典、ミラノ・デザイン・ウィーク。巨大な展示場フィエラミラノで、若手デザイナーが自らのブースを構え未発表作品を展示する「サローネサテリテ」では、優秀なデザイナーを発掘する目的で、毎年「サローネサテリテ・アワード」が開催される。第一回目から審査委員長を務めるMoMAのシニアキュレーター、建築・デザインディレクター、研究開発担当の Paola Antonelli (パオラ・アントネッリ)率いる審査委員会によって厳選され、上位3位と特別賞が選出される仕組みだ。

そんな、若手デザイナーの登竜門とされるサローネサテリテ・アワードにおいて今年度グランプリを受賞したのが、日本から参加した、若手クリエイターで構成されるデザインラボ「HONOKA」だ。HONOKAは、“廃棄される畳のい草と樹脂”を使った3Dプリント家具を出展し、ひと際注目を集めた。

DSCF3543_5.jpg
プロダクトデザイナー6人で構成されるデザインラボ「HONOKA」は、ミラノサローネ国際家具見本市2023/サローネサテリテにおいて「TATAMI ReFAB PROJECT」と題した家具シリーズを出展。

---fadeinPager---

3Dプリント技術を用いて、畳を現代の暮らしに編み直す

近年、生活様式の変化により畳に触れる機会が少なくなっている。古くから日本で愛されてきた、香り豊かで肌触りのいい畳の魅力を次世代へと継承すべく、「TATAMI ReFAB PROJECT」は立ち上げられた。

使い終えた畳や廃棄される原料のい草を、生分解性樹脂(酢酸セルロース)と混ぜ合わせることで、材料を独自に開発。畳本来の独特な香りや質感、湿気調整や消臭機能を活かした素材づくりから、3Dプリンティングの製造方法まで研究を重ね、現代の暮らしに編み直された新たな魅力の家具が誕生した。

working_process.jpg
デザインプロセスの様子。
3Dprinting03.jpg
3Dプリンティングの様子。

---fadeinPager---

SORI /MUKURI

sori_mukuri_01.jpg
日本の伝統的な造形とテクスチャを3Dプリンティングで再構築。独自に開発した網目構造は、適度な抜けによって見る角度で表情が変化する。畳の含有量を変化させる手法で、生い茂るい草を想起させる色彩を実現させた。
sori_mukuri_08.jpg

---fadeinPager---

CHIGUSA

CHIGUSA_01 (1).jpg
大型3Dプリンターで出力した立体的なパーツを1本ずつ組み合わせたスツールは、日本の伝統的な千筋模様がモチーフ。線状の造形と畳を混合した強くしなやかな樹脂により、弾力のある座り心地に。
CHIGUSA_04.jpg

---fadeinPager---

TABA

TABA_09 (1).jpg
大型3Dプリンターから垂らすように出力し植物的な形状を造形した、束ねたい草がモチーフの照明。畳を混合した透明樹脂が光を拡散しながら、枝状の隙間から光がこぼれ落ちる。
TABA_06 (1).jpg

---fadeinPager---

TACHIWAKI

TACHIWAKI_02 (1).jpg
着物の立涌柄をモチーフに、本体を複数のストライプで構成した洗面台。畳を混合した樹脂を使用し、大型3Dプリンターの吐出量を制御することでユニークな表情が生まれる。
TACHIWAKI_04 (1).jpg

---fadeinPager---

YOCELL

YOCELL_01 (1).jpg
麻の葉文様をモチーフにしたスツールは、大型3Dプリンターによる積層痕を活かし異なる向きに寄せ合わせてアレンジ。
YOCELL_03.jpg

---fadeinPager---

AMI

AMI_06 (1).jpg
畳を混合した樹脂を垂らしたり、宙に出力することで生まれる自然な造形を活かしたスツールとランプシェードは、日本の平面的な編み模様を立体的に再構築。見る角度によって変化する表情と、色のグラデーションを組み合わせ、新しい編みの表現を目指した。
AMI_01 (1).jpg

---fadeinPager---

KOHSHI

KOHSHI_11.jpg
生け花のようにあらゆる角度や位置に植物を差し込むことができる花器。日本建築を思わせる格子状の構造は、見る角度によって繊細に表情を変える。
KOHSHI_01 (1).jpg

---fadeinPager---

HONOKA Designers.jpg
HONOKAのメンバー。

TATAMI ReFAB PROJECT

有志のプロダクトデザイナーによるデザインラボ「HONOKA」による、大型3Dプリント技術を用いて、畳を現代の暮らしに編み直すプロジェクト。
https://honoka-lab.jp/