愛あふれるゴルチエのデザイナー人生!「ファッション・フリーク・ショー」が日本で開幕

  • 文:海老原光宏

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ファッションデザイナー、ジャンポール・ゴルチエの半生を基にしたミュージカル「ファッション・フリーク・ショー」の日本公演が、東京・渋谷の東急シアターオーブ(渋谷ヒカリエ11階)にて始まった。ゴルチエの服がナイル・ロジャース、デヴィッド・ボウイ、マドンナなど70~80年代のナンバーとともに躍動する。パリのデフィレに出品されたオートクチュール200着超が使用される豪華絢爛なステージだ。

そもそもゴルチエの服はシアトリカルで奇想天外。クラシックもフューチャリスティックもエスニックもテーラリングも男も女も混在するデザインは、振り返ると現代の多様性を先取っていたかのように思える。ミュージカルではアイコンであるコルセット、コーンブラ、マリンボーダー、タキシード、男性のスカートなどなどが目白押し。現役時代からゴルチエを好んでいた人にとっては懐かしいルックが数多く登場する。

この公演はゴルチエのデザイナーキャリア末期である2018年7月、パリで初演。ロンドンにも巡回し、計30万人を動員した。彼は、2020年春夏オートクチュールコレクションでデザイナー活動から引退している。その最後のオートクチュール、また最後のプレタポルテとなった2015年春夏コレクションはともに劇場で発表され、キャリア後半においてはファッションショーよりも総合エンターテインメントへの興味を強く伺わせた。

来日したゴルチエは、「日本とは縁があり、日本公演をやりたかった。私が映画からコレクションのインスピレーションを得ることが多かった。例えば、いままでで好きなコレクションに『ジェームズ・ボンド』がある。ファッションと映画の共通点はストーリー性があること。このミュージカルはファッションでやってきたことの延長線だ。ファッションの面白さはサプライズ。ミュージカルで楽しんでもらいたい」とコメント。

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ショーはコーンブラをまとったテディベアからスタート。
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ゴルチエを代表する様々な衣装が見ものだ。

コーンブラのデザイン誕生から始まり、恋人の死、多様な美の追求、プレタポルテを思わせる舞台で終わるミュージカルは、彼の歴史を知っているとさらに楽しめる。ぜひWikipediaや衣装を手がけた映画などをチェックして観てもらいたい。某インターナショナルファッション誌編集長をパロディにしたパートなどファッションフリークは思わず笑ってしまうだろう。

 また、ゴルチエは男性服飾史において男にスカートを履かせたデザイナーとよく形容されるが、ショー中の男性のオートクチュールのパートは、メンズ服のポテンシャルを感じさせるルックがぞくぞくと登場し、痺れる。

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初日に登場したジャンポール・ゴルチエ

初日の公演には本人が登場し、満席の観衆へあいさつした。劇場にはゴルチエに身を包んだオーディエンスにあふれていた。そこで彼は、オンワード樫山の故・中本佳男氏、元会長・廣内武氏への感謝の言葉を発した。中本氏はゴルチエを見出し、二人三脚でブランドを発展させたいわば恩人。日本企業がゴルチエを世界的スターデザイナーへと育成したのだ。この日本とパリの大御所に強いつながりがあることを知る人は今では少ないだろう。現在低迷する日本経済だが、過去の日本人の先見の明、攻めの姿勢を感じさせる成功例である。

最近はヴィンテージ市場で値上がり、再評価が進むジャンポール・ゴルチエ。いまこそ、その偉業を「ファッション・フリーク・ショー」で振り返りたい。ただただ圧倒的な衣装の洪水と舞台装置にあっけを取られる2時間だ。日本公演では、城田優や江口拓也などのスペシャルゲストも登場する。残りの公演に足を運んでみてはいかがだろうか。9月には舞台裏を追ったドキュメンタリー映画も上映される。合わせて楽しみたい。

ジャンポール・ゴルチエ『ファッション・フリーク・ショー』

作・演出・衣装:ジャンポール・ゴルチエ
日本公演スペシャルゲスト:江口拓也、城田優、中川勝就(OWV)、ナジャ・グランディーバ、七海ひろき、美弥るりか

東京公演 2023年5月19日~6月4日
場所:東急シアターオーブ(渋谷ヒカリエ11階)
チケット:VIP席30000円(特典付)、S席13500円、A席9000円

大阪公演 2023年6月7日~6月11日
場所:フェスティバルホール
チケット:VIP席28000円(特典付)、S席12000円、A席7000円 

公演スケジュール