飲酒運転容疑で逮捕された男性が、まさかのイギリス元首相!?

  • 文:宮田華子

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@guardiannews – Twitterのキャプチャ画像

 

Sky Newsによると、4月30日(日)未明(午前0時過ぎ)、オランダ北部の都市であるフローニンゲンで車が電柱に激突する事故があった。警察がかけつけたとき車は事故現場に放置されていたが、その後運転していたと思われる人物が近くの橋の上に立っているのを発見した。

警察のスポークスマンであるテイス・ダムストラ氏は「(この人物は)ローニンゲンの西にある小さな町ゾイドホルン出身の35歳の男性」「身元を明さず、飲酒検査を拒否した」とコメントしたとGuardianは伝えている。警察は飲酒運転の疑いでこの男性を逮捕した。

ここまではよくありそうな事故であり、運転手が無事だったのは不幸中の幸いだ。しかしこの件は後に国際的に報道されることとなった。それには理由がある。

警察が車内を捜索すると、ウクライナ発行と思われる免許証は見つかった。氏名欄には何と「ボリス・ジョンソン」と書かれていたのだ。

「ボリス・ジョンソン」とは、イギリスの元首相(現・イギリス下院議員)の名前である。免許証にはジョンソン元首相の(もしくは元首相とそっくりな)顔写真とともに、正確な生年月日(1964年6月19日)も記載されていた。

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すわ、元首相逮捕!? ― しかしこの免許証は素人が見ても怪しい点がある。例えば、有効期限が何と「3000年12月12日」となっている。ダムストラ氏は「(事故当時)ボリス・ジョンソン元首相はオランダにいなかった」と語り、警察の検証の結果、この免許証は偽造であると判明。各メディアはフローニンゲン警察がインスタグラムに掲載した下記コメントを伝えている。

 

「この人物にとっては残念なことだろうが、我々は彼の偽造に引っかからなかった」

 

現在までの報道では、ジョンソン元首相のなりすましが本当にウクライナ国籍を持っているのかは不明。Metroによると、警察は偽造書類がどこで作られたかについては明言しなかったが、オランダの公共放送NOSは、同局の元ロシア特派員の「このような偽造免許証はウクライナの観光地の店で買うことができる」というコメントをツイートしている。

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「本人」は偽造ならぬ「偽証疑惑」で政治家生命の危機…

首相辞任以降、日本のニュースにはあまり登場しなくなった“本物”ジョンソン元首相だが、このところ彼にまつわる良いニュースがない。


5月6日の戴冠式に「元首相枠」で出席したボリス・ジョンソン氏(写真左)。

2019年7月24日に第77代イギリス首相に就任。2020年3月から始まったコロナ禍を率いる立場だったものの、市民に厳しいコロナ禍の行動規制を敷いていた最中(2020~2021年)に首相官邸内で何度もパーティが開かれ、ジョンソン首相(当時)も複数回参加していたことが判明。この一連の「パーティゲート(ウォーターゲート事件を文字ったネーミング)」により、首相辞任を余儀なくされた(2022年9月6日に辞任)。

その後、後継者であったリズ・トラス首相(当時)が就任からたった1カ月半で辞意を表明したため、ジョンソン元首相は「首相返り咲き」を図った。しかし不祥事の余波は消えず首相選への出馬を断念。今年3月22日には「パーティゲート」について「国会で虚偽発言をした疑い」によりイギリス議会・特権委員会の公聴会が開かれた。ジョンソン元首相は委員たちにグリグリと厳しい質問を浴びせられ、その様子はすべてテレビ放映された。

 


2020年5月、官邸内でチーズとワインのパーティを楽しんだジョンソン氏。ロックダウン中だったはずだが…。

 

3月22日に開かれた特権委員会の公聴会。委員の質問は容赦ないが、元首相も弾丸トークで反論。

オランダの飲酒運転&偽造免許証とは無関係だった元首相だが、「偽証疑惑」の方は特権委員会による結論が今月中(5月23~24日が濃厚)には出る模様。結論によっては議員失職となる可能性もある…という窮地に立っている。

来週以降、またジョンソン氏がニュースの主役になるかもしれない。

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【画像】飲酒運転容疑で逮捕された男性が、まさかのイギリス元首相!?

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「本人」は偽造ならぬ「偽証疑惑」で政治家生命の危機…。

Today - in a ceremony whose place, purpose, and personnel are essentially unchanged for 1000 years - we celebrate the continuity of our country and our institutions. Let’s unite behind Charles III and wish a long, happy life to him and Queen Camilla. God save the King! pic.twitter.com/IoRcj3PPux

— Boris Johnson (@BorisJohnson) May 6, 2023


5月6日の戴冠式に「元首相枠」で出席したボリス・ジョンソン氏(写真左)。

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2020年5月、官邸内でチーズとワインのパーティを楽しんだジョンソン氏。ロックダウン中だったはずだが…。

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3月22日に開かれた特権委員会の公聴会。委員の質問は容赦ないが、元首相も弾丸トークで反論。