「ディストピアすぎる…」共和党が制作したリアルなAI動画“バイデン再選後のアメリカ”

  • 文:松丸さとみ
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アメリカのバイデン大統領(民主党)は4月、2024年の大統領選での再選を目指し、出馬を正式に表明した。出馬を発表した動画の中で大統領は、「仕事をやり遂げよう」と有権者に呼びかけている。

これを受けて、最大野党である共和党は、「バイデンが再選されたら、この国にはこんな未来が待っている」という主旨の動画を作成した。そのディストピアな内容や、アメリカ選挙戦で初めてAIが活用されたことが、話題になっている。

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金融市場の大暴落に、暴徒による不法入国も…

動画は30秒ほどで、共和党のYouTubeチャンネル「GOP」で公開されている(GOPは共和党の愛称)。「もし史上最弱の大統領が再選されたら」というテロップで始まり、バイデン大統領とハリス副大統領が笑顔で手を振る姿が映し出される。

続いて、「国際的な緊張の高まり」と文字が映し出され、アナウンサーが「今朝、中国が台湾を侵攻」と報じる。さらには、金融市場の大暴落、暴徒による不法入国、治安の悪化の様子が映し出され、「誰の責任?」「まるで電車が脱線したみたいだ」という声とともに、頭を抱えるバイデン大統領の姿が映し出されて動画は終わる。

この動画を作成・発表した共和党全国委員会(RNC)のロナ・マクダニエル委員長は声明の中で、「有権者がもしバイデンに”仕事をやり遂げ”させたら、インフレは今後も青天井、犯罪率は上がり、フェンタニル(アメリカで乱用が問題になっているオピオイド系薬物)は検閲のない国境を越えて入って来る上、子どもたちは引き続き取り残されてしまう」と述べている。

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米政党が初めてAIを選挙活動に活用

動画の左上には小さく、「すべてAI画像を使用して作成」という注意書きが入っている。ビジネスメディアQuartzによると、今回の動画はアメリカの政党が初めてAIを選挙活動に活用した事例となった。

フェイク画像の解析などデジタル・フォレンジック(コンピューター犯罪などに関連したデジタルデータの分析などを行う法科学)の専門家であるカリフォルニア大学バークレー校のハニー・ファリド教授は米CNNに対し、「私たちは、画像、音声、動画、テキストなど、あらゆるものがフェイクの可能性がある世の中に入った」と述べている。

一方で非営利団体デジタルヘイト対策センター(CCDH)のイムラン・アーメッド最高責任者はCNNに対し、今回の動画でのAIの使い方は特に問題ではないとの考えを示した。ただし、政治家が言っていないことを言ったかのような動画をAIで作る道を切り開いてしまう可能性を懸念している。

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トランプ前大統領のフェイク画像が拡散

なお動画ではないが、先日はドナルド・トランプ前大統領がニューヨークで逮捕される様子をAIで生成したフェイク画像がツイッターで拡散された。この日(3月23日)は同前大統領が逮捕されるとの憶測が出ていたため、本物の画像だと誤解した人も少なくなかったようだ。

この画像をAIで生成したのは、調査報道を行う組織ベリングキャットの代表であるエリオット・ヒギンズ氏だ。同氏は、「トランプの逮捕を待っている間にトランプが逮捕される画像を作ってみた」と投稿している。ヒギンズ氏のツイッターやQuartzによると、画像はMidjourneyを使って生成。じっくり見るとおかしなところから脚が伸びているなど違和感がある上、スレッドにして投稿された写真はどう考えてもおかしなもの(囚人服を着てトイレ掃除をするトランプ前大統領の写真など)があるため、まさか本物の写真だと誤解させるとは思っていなかったとヒギンズ氏は話している。なお、同氏はこの画像生成が原因で、Midjourney利用禁止の措置を受けたという。

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バイデン大統領の出馬表明動画

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共和党がAIで作成したバイデン再選を揶揄する動画

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エリオット・ヒギンズ氏作成、トランプ氏逮捕のAI画像

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