新型クロストレックで、そして自分の脚で。春の伊豆を走ろう

  • 文:大谷達也 
  • 写真:齋藤誠一 
  • 編集:青山 鼓

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自動車ジャーナリストである大谷達也の趣味はロードバイク。スバル(SUBARU)の新型クロストレックを駆り、伊豆のワインディングを走り抜ける。

ロードバイクに乗ることが私の生活の一部になってから3年ほどになる。普段は原稿書きの合間に近所をポタリングする程度だが、大自然の中でペダルをこぐ爽快感は格別で、クルマで出かけた先でサイクリングを楽しむことが、最近は贅沢な休日の過ごし方になっているほど。
そこで今回は、先頃デビューしたばかりのスバル・クロストレックのルーフにバイクを載せ、春たけなわの伊豆半島へと足をのばすことにした。

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自然の中を軽快に走れるクロストレック

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クロストレックは昨年12月にスバルから発売されたばかりのクロスオーバーSUV。全長は4.5m弱、全高も1.6mを切る扱いやすいボディサイズだけれど、身長171cmの私が無理なく後席で膝を組めるほど室内スペースには余裕がある。

パワートレインは、スバル伝統の水平対向4気筒2.0リッター・エンジンにハイブリッドシステムを組み合わせたe-BOXERと呼ばれるシステム。ハイブリッドと聞くと省燃費のためのデバイスと思いがちだが、e-BOXERは省燃費とともにドライバビリティの改善を目指している点が大きな特徴。

 

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e-BOXERは鋭い加速を発揮するスポーツモードや、トルクを高めたAWD車専用のX-MODEなど、シーンに応じた特性の変更が可能。
 

具体的には、発進時などでアクセルペダルを踏み込んだ時にぐっと背中を押されるような力強さ、そして追い越し加速などにおける軽快感を生み出すのに役立っているという。ちなみに、ボクサーエンジンの最高出力は145ps、最大トルクは188Nmで、1560kgの車重に対して十分以上と呼べるスペックを備えている。

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乗り心地も快適。その理由は?

クロストレックで街中を走り始めてすぐに感じたのが、その快適な乗り心地だった。先に断っておくと、クロストレックのサスペンションはフワフワとして頼りない感触のものではない。それどころか、高速道路だろうとワインディングロードだろうと、ボディをしっかりとフラットに支えてくれる力強さも兼ね備えている。こうしたサスペンションの設定は、長距離ドライブで疲れにくく、ワインディングロードでは的確なステアリング・レスポンスをもたらしてくれるものだ。

にもかかわらず、路面からのゴツゴツとしたショックをキャビンに伝えることなく、サスペンションがしなやかに衝撃を受け止めてくれる。この「当たりが優しいのにコシのある足回り」は、快適性とハンドリングのバランスという観点からいうと理想に近いものといえる。

こうした乗り心地やハンドリングのよさに大きく貢献しているのが、足回りを支えるボディの強靱さである。なんとなく、ボディが頑丈だと乗り心地まで硬くなるように想像されるかもしれないが、これは大きな間違い。サスペンションが細かい振動まで効果的に吸収できるようにするには、その土台となるボディがガッシリとしていてゆるがず、サスペンションが設計通りの正確な仕事ができるようにすることが重要となる。

 

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細かなカーブが連続する山中でも、クロストレックのサスペンションはしなやかに動き、ドライビングの楽しさを感じさせてくれる。

もちろん、正確なハンドリングを生み出す上でも剛性の高いボディは大きな効果がある。その意味でいえば、クロストレックの快適な乗り心地と良好なハンドリングは、サスペンションとボディの共同作業によって生み出されたものといえるだろう。

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クロストレックの優れたボディを詳しく解説

なぜ、クロストレックのボディはこれほど優れているのか? その秘密は、スバルグローバルプラットフォーム (SGP)が第2世代に進化してフルインナーフレーム構造を採り入れたことにある。もともと高度な操縦安定性と快適な乗り心地を生み出すことを目指して開発されたSGPだが、そのポテンシャルをフルに引き出すため、あらかじめボディの骨格を組み立ててからボディパネルを溶接するフルインナーフレーム構造を新たに採用。これにより骨格自体の剛性を高めるとともに、ボディパネルでこれをさらに補強することが可能になった。さらに高減衰マスチックと呼ばれる弾性接着剤でルーフ部分の振動を抑えたほか、構造用接着剤の適用範囲を拡大することでボディ自体の振動減衰特性を改善したのである。

ちょっと専門用語を多用してしまったが、そうした高剛性ボディや良好な振動減衰特性の効果は、乗り心地やハンドリングの上質さ、さらにはキャビンの静けさとなって実感できる。そして、それらはクロストレックの全体的な上質感として、はっきりと体感できることだろう。

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自然の中で心地よいサイクリングを堪能

そんなクロストレックの走りを満喫しながら高速道路とワインディングロードを乗り継ぎ、伊豆山中のサイクリングにうってつけのポイントにやってきた。幸いにもこの日は好天に恵まれ、緑の木々が山並みに美しく映えている。早速、ロードバイクをルーフから降ろし、そのペダルをこぎ出してみた。

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アップダウンにワインディング。伊豆の山中は自然とひとつになれる素晴らしいサイクリングロードだ。

自動車ライターを生業にしているくらいだからもちろんクルマの運転は大好きだけれど、かすかに聞こえるチェーンの音以外、なんのノイズも立てないサイクリングというスポーツは、都会の喧噪に疲れた身体になによりのごほうびとなる。小鳥のさえずりや風の音に耳を澄ませながら無心にペダルをこぎ続ければ、心地いい疲れとともに深い充足感で全身が満たされていくのがわかる。「やっぱり、来てよかった」 そんな思いを再確認しながら、私は峠をひとつ、またひとつと走り抜けていった。

ひと汗かいたところでクロストレックを停めた駐車場に戻り、バイクを積み込む。タオルで汗を拭ってから普段着に着替え、ボトルのミネラルウォーターでのどを潤す。日が傾き始めている。そろそろ帰ることにしよう。

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リアゲートを開ければ、自分専用のベンチのように腰を落ち着けることもできる。

 

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帰路も安全に。進化したアイサイトの特徴とは?

帰り道の高速道路ではアイサイトに活躍してもらった。前を走るクルマのペースに合わせて車速をコントロールしてくれる全車速追従機能付クルーズコントロール、それに車線をはみ出しそうになった時にステアリング操作をアシストしてくれる車線逸脱抑制などの運転支援装置は、ドライバーの負担を軽減してくれるだけでなく、万一の時にはセーフティとなって事故を防いでくれる。ちなみにスバルのアイサイト(2014−18年アイサイト 〈ver.3〉搭載車)により、追突事故発生率は0.06%まで減少したそうだ(公益財団法人・交通事故総合分析センター〈ITARDA〉のデータをもとにスバルが独自算出)。

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丸い3つのカメラレンズ。中央下部にあるのが新型アイサイトで追加された超広角単眼カメラ。

 

さらにクロストレックに装備されている新世代アイサイトは、従来のステレオカメラに加えて、広角単眼カメラを搭載することで視野角は従来のおよそ2倍へと拡大。右左折時に横断歩道を渡ろうとする歩行者をいち早く発見し、ドライバーに警告を与えてくれるほか、必要に応じてブレーキ操作をサポートしてくれる。それだけでなく、前後左右には4つのレーダーを装備。たとえば駐車場から後退で出ようとした時、左右から迫る車両や歩行者の存在を見つけ出してくれるのも、新世代アイサイトが備えた心強いサポート機能である。

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疲れたカラダで感じる、クロストレックの優しさ

もうひとつ、疲れた身体にうれしいのがクロストレックに採用された新開発のフロントシートだ。ドライバーの上半身を支える上で、腰のサポートが重要であることは以前から指摘されていたが、スバルは大学の医学部と連携して人体構造まで遡り、医学的アプローチで新しいフロントシートを開発。

 

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スバルの研究によれば、車のゆれから乗り心地が悪いと人が感じる時、その不快感を生み出すのは頭のゆれだという。

骨盤の中央付近にある仙骨を効果的に支えることで上半身を安定させ、頭部のゆれを抑えることに成功したという。この方式は、体型の個人差に影響されにくいことも、その特徴のひとつとされる。

優れた走行性能に加え、安心や楽しさをもたらす機能も搭載することで、「より遠くまで出かけたい」という思いを後押ししてくれるスバルの新型クロストレック。そこには、「アクティブに行動する人々の足となって活躍するクロスオーバーSUVだからこそ、安心と安全はとりわけ重要」というスバルの思想がギッシリ詰まっているといえそうだ。

●スバル クロストレック

https://www.subaru.jp/crosstrek/crosstrek/