ブルガリの美意識と日本文化を融合。ブルガリ ホテル 東京のデザインを手がけた建築設計事務所CEOにインタビュー

  • 写真(人物):齋藤誠一
  • 文:青山鼓

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ブルガリ ホテル 東京のインテリアデザインを手がけた、ACPV アーキテクツ アントニオ・チッテリオ・パトリシア・ヴィールのCEO、パトリシア・ヴィール。Bulgari Hotels & Resorts

東京ミッドタウン八重洲の40階から45階にフロアを構える、ブルガリ ホテル 東京が4月4日に開業した。言わずと知れたイタリアのラグジュアリーブランド、ブルガリが手がけるブルガリ ホテルズ&リゾーツ コレクションの8番目のホテルだ。

インテリア・デザインはこれまでの7つのホテルと同様、イタリアの建築設計事務所・ACPV アーキテクツ アントニオ・チッテリオ・パトリシア・ヴィール(ACPV)が担当。

今回、オープンのタイミングで東京を訪れていたACPVのCEO、パトリシア・ヴィールに、ホテルのデザインやディティールのこだわりについて話を聞いた。

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コンテンポラリーとラグジュアリー、対極の要素をバランスよく両立させる

ミラノやロンドン、ドバイ、さらにパリ、上海、そして東京。世界の主要都市やリゾート地を舞台に、ブルガリというブランドの精神とタイムレスな魅力を伝えるべく、ホテルとリゾート施設を展開しているブルガリ ホテルズ&リゾーツ。

インテリアや内装には、地域特有の文化を強く表現しているのが特徴だ。希少価値のある素材をふんだんに使用し、選び抜かれた家具やディテールの作り込みによって、その土地の魅力と、イタリアのモダンでラグジュアリーな感覚に満ちた空間をつくり上げている。

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エントランスは東京ミッドタウン八重洲の1Fに。プライバシーにも配慮された入り口は建物奥に配置されている。Bulgari Hotels & Resorts

東京ミッドタウン八重洲の1階にある巨大な大理石のエントランスから、専用エレベーターで40階へ移動。リズミカルにブルガリのアートピースが配置され、孔雀紋といった日本の伝統文様を思わせるファブリックで装飾された回廊を歩くだけでも、このブルガリ ホテル 東京が、ブルガリの美意識と日本の文化を高いレベルで融合させていることが感じ取れる。

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40階には、心地良いアームチェアとゆったりくつろげる暖炉を備えた「ザ・ラウンジ」がある。Bulgari Hotels & Resorts

遠くにレインボーブリッジと東京湾を臨む、明るい43階のスイートでパトリシア・ヴィールが我々を待っていた。「ブルガリの世界観に加えて、日本的な落ち着きを重視した穏やかな空気感に好印象をもちました」と伝えると、パトリシアは「グラッツィエ」と答え、ニコリと微笑む。

「われわれは、都市デザインから家具まで、幅広い分野でデザインや設計を行っています。もちろんホテルをつくることもその一つ。ホテルのデザインは、建築と街の関わりといった全体像から、家具のセレクトといった細かな部分までが求められる、興味深いプロジェクトだと考えています。ブルガリと一緒にホテルの設計をすることは、コンテンポラリーでありながらラグジュアリーであるという対極の要素をバランス良く両立させるという点が面白いですね」

これまでのブルガリホテル、そしてブルガリ ホテル 東京は、どのようなコンセプトでデザインをしたのだろうか。

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回廊には、ブルガリのヘリテージコレクションのイラストがディスプレイされている。Bulgari Hotels & Resorts

「まずはデザインよりもホスピタリティが重要です。インフォーマルであり、かつ官能的であること。やはりブルガリは、イタリアのコンテンポラリーなジュエリーブランドですからね。細かな作り込みやディテールにこだわることは、ジュエラーとしてのクラフトマンシップに通じるものがあると思っています。東京では、人々の日常の暮らしを仔細に観察し、学びました。エントランスには竹のカゴに花を飾り、部屋の入口にはスツールを置いてそこで靴を脱ぐといった、日本的なライフスタイルの提案も行っています。導線の設計は『社交場とプライベート空間が極めて近い』という、東京という都市の特徴を踏まえて行いました。人々が集う場所と住居が密接している東京では、道路や建物の設計に工夫が見られます。このホテルでも同様に、社交場であるバーラウンジまで上がるエレベーターと、プライベート空間として自宅のようにくつろぐ寝室に繋がるエレベーターを別のものにすることで、行き来する人の流れが交わらないように工夫しています」

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"八重洲"は未来と伝統の境界線にある重要な場所

パトリシアが「自宅のようにくつろげる」と語る部屋では、木目を出しながらマットに仕上げた壁や柔らかい光で部屋を満たす天井の間接照明が、穏やかな空間を作り上げている。さらにB&B ItaliaやFlexformといったハイセンスな家具が配置される。

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スーペリアルームのベッドルーム。壁には日本の伝統文様である網代組み、そして木目を生かした模様が配されている。天井の間接照明は、ブルガリを象徴する色の一つであるゴールドを使いながらも、居心地の良さを損なわない控えめな輝きに留めている。Bulgari Hotels & Resorts

「天井のライトについては、ゲストが穏やかに過ごせるようにとこだわったポイントです。5層にも塗装を重ねたため、非常に手間がかかりました。もちろん日本のパートナーと耐震構造について逐一確認しながら進めることも重要でしたね。マットな仕上げの壁板も、日本らしい要素を表現するディテールの一つです。エントランスに置いた屏風や、廊下の伝統文様を生かした壁紙、日本の四季を反映した植物を柄にしたカーペットなど、さまざまなディテールで日本らしさを表現しています」

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スイートのクローゼットの前には、梅の木を描いたカーペットを配置。Bulgari Hotels & Resorts

最後に、都市設計においても豊かな知見をもつパトリシアに、この東京・八重洲という場所の印象を尋ねた。

「すぐ近くに皇居がありますが、皇居は今後もそのあり方を変えることはないでしょう。一方で八重洲は現在再開発が急速に進んでいる、未来を作っていくエリアです。ブルガリ ホテル 東京が位置するこの場所は、未来と伝統の境界線にある、重要な場所だと考えています」

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採光の良い広々とした窓。枠に木材を取り入れ、モダンなイタリア風インテリアの印象を、ぐっと日本らしく変化させている。 Bulgari Hotels & Resorts

 

ブルガリ ホテル 東京

東京都中央区八重洲2-2-1

TEL:03-6262-3333

部屋数:98室

料金:250,000円~(1室2名)

www.bulgarihotels.com/ja_JP/tokyo