体にできた傷が早く治る絆創膏があったら……。誰もが一度は考えたことがあるだろうそんな夢が、現実になるかもしれない。米ノースウェスタン大学の研究チームが、電気の力を使って傷の治りを早める絆創膏を世界で初めて開発した。しかも治癒するプロセスを遠隔でモニターできる、スマート絆創膏だ。
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電気信号を回復させ、治癒を早める
研究チームが開発した絆創膏は、糖尿病患者に起きやすい合併症のひとつである「足潰瘍(あしかいよう)」を治すもの。高血糖の状態が長く続くと、血流が悪くなり体の抵抗力が低下することから、皮膚の一部が欠損する足潰瘍が起こりやすくなる。さらに細菌に感染するとなかなか治りにくく、重症化した場合は足を切断しなければならない可能性もあるという。アメリカの糖尿病患者は、約3000万人。そのうち15~25%ほどが、足潰瘍を発症していると言われている。
そこで開発されたのが、電気信号を使って傷を早く治す絆創膏だ。足潰瘍に限らず、私たちの体は、ケガをすると体の電気信号が乱れることがあるそう。そこで、絆創膏で電気刺激を与え、正常な電気信号になるよう整えることで、傷の治りを早めようという仕組みだ。
こうしてつくられた絆創膏は、両端には2つの電極がつけられた、長さ数センチ程度の小型のもの。実際、開発されたばんそうこうで乱れた電気信号を回復させると、細胞が傷口に移動し、その部分に新しい皮膚組織が再生されることが確認されたそう。動物を使った実験では、一日わずか30分程度の電気刺激を与えるだけで、傷の治癒が30%も早まったことがわかったという。
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遠隔でモニターでき、半年後には体に溶け込む
さらに、この電気絆創膏の優れたところは、傷の治り具合を評価するセンサーとNFC(近距離無線通信)システムが組み込まれていること。傷は通常、治っていく工程で徐々に乾いていく。水分の量によって流れる電流も変化するため、その流れた電流を追跡すると、傷の治癒状況もわかるという具合だ。医師はそれらの情報を遠隔でモニターして、適切に治癒されているか確認できるようになるのだ。
しかも、この絆創膏はモリブデンと呼ばれる生分解性の電極でできており、傷が治っていく半年ほど先には、体内に自然と分解されていくという。電極をつくるために使用された金属の量は非常に少ないため、体内に取り込まれても、臓器に蓄積されたり心配することはないそうだ。
この研究チームは、さらに別の動物を使った実験と、いずれ糖尿病患者での検証も進めたい考えだ。薬を塗布して治すのではなく、電気信号だけで傷の治りを早めるというこの電気絆創膏。実用化への期待が膨らんでいる。
【出典】
https://news.northwestern.edu/stories/2023/02/first-transient-electronic-bandage-speeds-healing-by-30/
https://dmic.ncgm.go.jp/general/about-dm/040/070/11.html
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【写真・動画】絆創膏もスマート化? 電気の力で傷が治癒
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