世界の料理人が東京に集結、日本料理の技と心を競う「和食ワールドチャレンジ」

  • 文:藤村実里

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ファイナリスト6名。左からヨウ・ペイシー、ヨ・イン・ヒョク、ヤコブ・ホラーク、アーロン・チョウ・ボー・ヒン、ユー・コック・ホン、ザー・タガユナ。

外国人料理人を対象とした日本国農林水産省主催のコンテスト「和食ワールドチャレンジ」。2013年度から開催され、今年で10回目という節目を迎えた。新型コロナウイルス感染拡大の影響により過去2大会はオンライン開催となったが、今年はパリ、ニューヨーク、シンガポール3都市での地域予選会と、オンライン予選会によるハイブリットな大会が行われた。

22年10〜12月にかけて開催された予選会により合計6名のファイナリストが決定し、23年2月27日、28日に東京會舘クッキングスクールにて決勝大会が開催。ファイナリストには、共通食材を使用した煮物椀と指定の八寸皿を使用した前菜5品盛りという2つの課題が課され、2日間に渡って熱戦が繰り広げられた。

今大会のテーマは「DASHI」。日本料理の味わいを構成する原点であり、出汁を取ることは重要な基礎技術だ。この「DASHI」によりうま味が最大限に活かされた日本料理を披露するという課題に対して、それぞれが持てる技術のすべてを出して優勝を目指した。ファイナリストは、決勝大会に先駆け、日本のトップシェフによる日本料理研修を受講。決勝大会終了後には味噌や醤油、日本酒の生産地を訪れ、伝統的な日本産食材の生産現場を肌で感じる貴重な見学ツアーに参加するなど、技術だけでなく、料理人としての姿勢や文化、歴史についても学び、日本料理や日本産食材に対する見識を深めた。

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制限時間内に仕上げるというプレッシャーもある中で審査の対象である技術面にも気を配る選手たち。

決勝大会での審査項目は、日本料理の正しい出汁の取り方、テーマである「DASHI」の課題への取り入れ方、味付けや盛り付けのバランス、調理器具の使い方、衛生管理、時間配分など多岐にわたる 。審査員たちの厳しい目が光り緊張感が漂う空気の中、真剣な表情で課題に取り組むファイナリストたち。前菜5品盛りについては、料理のテーマやアピールポイントなど心を込めて審査員にプレゼン。食材の調理方法や味の構成、盛り付けに関することなど、審査員の質問にも丁寧に答えた。

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審査員を前に緊張しつつも、自らの想いを熱く語るファイナリスト。

審査の結果、優勝者は欧州地域予選会を1位で通過した、チェコのヤコブ・ホラークに決定。

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第10回優勝者は、チェコのヤコブ・ホラーク

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ヤコブ・ホラーク(Jakub HORÁK)チェコ共和国。

「大会のため久しぶりに来日し、とにかく楽しもうという気持ちで臨み、競技中もリラックスして取り組むことができました。故郷であるチェコの食材と和食を組み合わせるという試みをして、改めて創意工夫が許される和食の奥深さに触れることができました。また、審査員の方々にもその点を評価してもらえてとてもうれしいです。 私の最終的な目標は、和食の親善大使になること。これからも日本料理の素晴らしさを広めていきたいです」

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「煮物椀」。カニとすり身の真丈に、あられにしたユズを散らすなど工夫を凝らした一品。審査員から汁の量、香りともに高評価だった。
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「前菜5品盛り『梅の葉の5つの物語』」。旬のブリ寿司にホップの酢漬けを添え、鴨肉ローストには八丁味噌とウォールナッツを組 み合わせるなど、チェコ産食材も使用。

審査員長である村田吉弘からは、ハイレベルな戦いを終えたファイナリストたちに向け、賛辞が贈られた。同時に、料理に対する講評も行われ、第10回大会は幕を閉じた。

大会を通して審査員の言葉に耳を傾け、ひたむきに料理と向き合うファイナリストたちの姿勢に、おもてなしの心を込め、渾身の一品を生み出すという日本料理の原点が垣間見られた。

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審査員長で「菊乃井」主人の村田吉弘。

 

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開会式には農林水産副大臣勝俣孝明、大会会長の茂木友三郎も駆けつけた。仲田雅博、柳原尚之、田崎真也、野村友里など審査員の顔ぶれはそうそうたるメンバー。

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表彰式では 1位から3位のファイナリストへ表彰状とトロフィーが授与された。

●和食ワールドチャレンジ実行委員会
www.washoku-worldchallenge.maff.go.jp/10th