服、家具、アートの新ショールーム「BLANDET Tokyo」で見つけた、和モダンな生活【着る/知る Vol.150】

  • 写真・文:一史

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「新しい流れを知る、リアルに着る」がテーマの当ファッション連載「着る/知る」。旬のモノ・コトをお届けして今回で150回めになる。時代の移り変わりとともに紹介の仕方も変えてきた。今回ここにクローズアップするのも、しなやかにトランスフォームする新しいファッション系ショールーム「BLANDET Tokyo(ブランデット東京)。2023年1月にリニューアルオープンしたばかりの新顔である。通常はPRオフィス兼ショップとして運営して、不定期でイベントが開催されたりギャラリーなどになっていく。通常時でも一般の人が訪問可能だ(完全予約制)。扱うジャンルは服、家具、生活雑貨、アートに至る幅広さ。ただしテイストが「洗練された上質感」「日本的感性」で揃っている。

東京・原宿の奥まった場所に広々とした空間を設けた人物は、ファッションPRの経験を持つ宮本哲明。メディア関係者らからの信頼も厚い彼の心の奥にあるのは、「好きな世界を人に伝えたい」という思い。エディターやスタイリストがこぞって絶賛するファッションブランドのユーゲンを立ち上げ時からPRし、人気沸騰中の家具ピエール・ジャンヌレをショールームに並べる。並行して、知る人ぞ知るマイナーなブランドの宣伝にも力を注ぐ。

品格あるファッションの店に勤めて磨いた接客スキルゆえか生来の資質なのか、相手がプロでも学生でも対等に接するジェントルな宮本さん。彼が発信する温もりのあるアイテムたちを見ていこう。

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注目の3ブランド

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洋服でありながら和装のように日本の男によく似合うテーラードジャケットとハカマパンツ。ジャケット¥58,300(税込)、パンツ¥34,100(税込)/タンジェネット https://tangenet.com

BLANDET Tokyoの取り扱いファッションブランドのなかから、大人路線の見逃せない3ブランドをピックアップ。まず最初は優雅に佇む上写真のジャケットとパンツ。吉屋 充デザイナーが手掛けるタンジェネット(tangenet)のものである。古来より続く日本産の織物を使い、平面的でゆとりのある着物の形を取り入れる和洋折衷のデザイン。変色しにくい白Tシャツをハイテク技術で開発するといった、常に前を向いて歩む姿勢も頼もしいブランドだ。

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複雑な表情のある布の風合いを楽しむジャケット。つけられたタグは旧式のジャカード織機で使うパンチ穴の開いた厚紙カード。¥140,800(税込)/エイク https://eyck-tokyo.jp

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エイクのアイデンティティは自社企画のテキスタイル。一般のファッションブランドでは難しい表現ができる。

続くエイク(EYCK)は、テキスタイル好きをうならせるコンセプチュアルなブランド。毛織物で名高い尾州でテキスタイル工場を構える小塚毛織が、地元である尾州産地の伝統や技術を継承していくことを目指して立ち上げた。トラッドがむしろモードに見えてくる落とし込みがユニークだ。海外の若手ファッションデザイナーの服のごとく、一点モノに匹敵するほど凝った布使いの服とグッズ類で新しいマーケットを開拓している。

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清涼感のある素材とベージュの色が生み出す大人のハーモニー。ニット ¥41,800(税込)、イージーパンツ ¥57,200(税込)/ユーゲン www.heugn.com

人気が高まるユーゲン(HEUGN)からここにピックアップしたのは、さりげなくも美しい春の装い。ミリタリーやワークのビンテージをはじめ、イタリアンクラシック、ヨーロピアンモードまで深く知るベテランの小山雅人デザイナーによる、時代もジャンルも飛び越えた味わいが息づく。明治・大正・昭和の男たちの姿も重って見えてくるのが、唯一無二のユーゲン(=幽玄)の佇まいだ。

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自ら手掛ける1型のコットンジャケット

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宮本さんがデザインする、コットン素材が中心のテーラードコレクション。その名も「ジャケット」。
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宮本さんが自ら着こなすのは、新作の藍染めモデル。ネイビーのジャケットを同系色で絞り染めすることで奥行きのあるムラ感に。価格未定/ジャケット www.instagram.com/jacket_tokyo

工場やパタンナーといった人との関わりのなかから生まれたジャケットブランド。現在の展開モデルは、1920年代のスモーキングジャケット(タキシードの原型)がベースの1型のみ。原則としてポップアップの受注会オーダーで販売している。裏地をつけず、ワークウエアのようにデイリーに袖を通せる親しみやすい服。「自分が着たくて、ずっと着続ける服」と宮本さんが言う永遠性が、無駄のないモノづくりと結びつく。

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宮本さん着用ジャケットと同じ技法で藍染めされたモデル。元が黄色系のジャケットなので、ネイビーが加わりこのような見え方になった。

上写真も絞り藍染めのジャケットで、既存のトワルカラージャケットを流用する13着限定で展開される。購入者自身が藍染めして自分だけの服をつくる体験会を夏に開催予定。現地集合・現地解散で、この服が染められた徳島の藍染め工房「Watanabe’s」に出掛ける。気になる人はジャケットのインスタグラムをマメにチェックしよう。

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インテリアも服も並ぶショールーム 

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写真家の菅原一剛の写真展開催時のミーティングスペース。

服や家具のショールームにはさまざまな人々がやってくる。スタイリストは人に着せる服を借りに来るし、エディターは情報を集めにくる。取り扱いブランドの商談も行われ、購入希望の客が品物を確かめにくることも。ファッションの境界線を押し広げるBLADET Tokyoには、見知らぬものに出会えるワクワク感がある。

バリエーションを取り揃える家具のピエール・ジャンヌレは大人気の有名どころ。ほかにも作家によるユーモラスな手づくり品といったインテリア、家電、オブジェが豊かに空間を彩る。

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ショールームで目につくのが充実したピエール・ジャンヌレのコレクション。BLANDET Tokyo取扱品は製造当時のニュアンスを持つ、職人の手作業による高品位な復刻品のみ。

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東京を拠点に活動する新鋭陶芸家、野口寛斉の花器コレクション。

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2冊の本は、菅原一剛が撮るテーマのひとつである植物学者の故・牧野富太郎と関わる内容。

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ショールームのベーシックな構成。可動式の什器で広い空間を存分に活用して姿を変えていく。
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フロアの奥に設置されたファッションブランドのラインアップ。大手アパレルから個人ブランドまで規模もさまざま。

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ギャラリー&販売スペースとして

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青森の風景と光を写したモノクロ写真によりギャラリー空間が出現。

上写真は2023年3月4日(土)〜6日(月)まで行われた菅原一剛の写真展。宮本さんが深い思いを寄せる、日本の風景やオブジェクトを撮る写真家との対話のなかで実現したもの。下写真は3月18日(土)〜21日(火)まで12時〜19時で開催される、ピエール・ジャンヌレ販売イベントのイメージ風景。「生活のなかに自然に溶け込む家具の使い方を示せたら」と宮本さん。実際に自宅に置いたシーンを思い描き、デザイン家具を身近に感じてもらう試みだ。会期中は誰でもアポイントなしで入場できる。

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ミニチュアのようにキュートな幼児向けチェアも取り扱う。販売イベントではジャンヌレ以外のテーブルや小物も置いて生活シーンを演出。

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about BLANDET Tokyo

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宮本哲明(みやもと・てつあき) ●ユナイテッドアローズに勤務し、店頭スタッフを経てPR担当に。独立してフリーになり自身の会社MIYAMOTO SPICEを設立。23年1月にショールームBLANDET Tokyoをリニューアルオープン。

「最初からショールームをやりたくて独立したのではありません。関わるブランドや人とのご縁でこの形に至りました」と宮本さん。最先端モードもラインアップするセレクトショップ勤務のときはイタリアのスーツやジャケットを着て毎日を過ごし、フォーマルやオーダーの知識も学んだ。プライベートではプロの料理の世界にも身を置いた。ジャンルの垣根を越えるショールームを設立したのも自然な流れなのだろう。

「BLANDET Tokyoのテーマは『ブレンド』。料理のスパイスのように素材の個性を活かしつつ一緒に合わせていくことです。混ぜて別のものをつくる“ミックス”とは発想がやや異なります。PRでいちばん大事にしているのは、“正しく伝えること”。モノができる源流への思いをお客さまにお話して愛着を抱いていただけるように」

西洋の真似ごとでなく日本に住む私たちの肌感覚に満ちている点もBLANDET Tokyoの大きな魅力だ。大人が共感できる新しい生活シーンを生む新発信基地が、これから次々に話題を提供していくに違いない。

BLANDET Tokyo

東京都渋谷区神宮前2-19-13 VORT原宿 3F
TEL: 03-6804-3142
www.instagram.com/blandet_tokyo

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【画像】服、家具、アートの新ショールーム「BLANDET Tokyo」で見つけた、和モダンな生活【着る/知る Vol.150】

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洋服でありながら和装のように日本の男によく似合うテーラードジャケットとハカマパンツ。ジャケット¥58,300(税込)、パンツ¥34,100(税込)/タンジェネット https://tangenet.com

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複雑な表情のある布の風合いを楽しむジャケット。つけられたタグは旧式のジャカード織機で使うパンチ穴の開いた厚紙カード。¥140,800(税込)/エイク https://eyck-tokyo.jp

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エイクのアイデンティティは自社企画のテキスタイル。一般のファッションブランドでは難しい表現ができる。

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清涼感のある素材とベージュの色が生み出す大人のハーモニー。ニット ¥41,800(税込)、イージーパンツ ¥57,200(税込)/ユーゲン www.heugn.com

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宮本さんがデザインする、コットン素材が中心のテーラードコレクション。その名も「ジャケット」。
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宮本さんが自ら着こなすのは、新作の藍染めモデル。ネイビーのジャケットを同系色で絞り染めすることで奥行きのあるムラ感に。価格未定/ジャケット www.instagram.com/jacket_tokyo

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宮本さん着用ジャケットと同じ技法で藍染めされたモデル。元が黄色系のジャケットなので、ネイビーが加わりこのような見え方になった。

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写真家の菅原一剛の写真展開催時のミーティングスペース。

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ショールームで目につくのが充実したピエール・ジャンヌレのコレクション。BLANDET Tokyo取扱品は製造当時のニュアンスを持つ、職人の手作業による高品位な復刻品のみ。

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東京を拠点に活動する新鋭陶芸家、野口寛斉の花器コレクション。

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2冊の本は、菅原一剛が撮るテーマのひとつである植物学者の故・牧野富太郎と関わる内容。

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ショールームのベーシックな構成。可動式の什器で広い空間を存分に活用して姿を変えていく。
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フロアの奥に設置されたファッションブランドのラインアップ。大手アパレルから個人ブランドまで規模もさまざま。

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青森の風景と光を写したモノクロ写真によりギャラリー空間が出現。

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ミニチュアのようにキュートな幼児向けチェアも取り扱う。販売イベントではジャンヌレ以外のテーブルや小物も置いて生活シーンを演出。

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宮本哲明(みやもと・てつあき) ●ユナイテッドアローズに勤務し、店頭スタッフを経てPR担当に。独立してフリーになり自身の会社MIYAMOTO SPICEを設立。23年1月にショールームBLANDET Tokyoをリニューアルオープン。

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
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