アメリカのデトロイトで、「リフトビルド(LIFTbuild)」と呼ばれる建築技法を使った初の高層建築が完成間近となっている。市中心部の交差点に誕生したビル「エクスチェンジ」の建築手法に採用され、地上16階建てのビルがほぼ姿を現した。
リフトビルドは、高層建築の建設作業のうち、おおかたを地上で済ませる点でユニークだ。作業員たちは地上0メートルの地点で1フロアを構築し、完成したフロア全体を上方へと送り出す。これをフロアの数だけ繰り返すことで、地上に居ながらにして高層建築を完成させるシステムだ。
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最上階から完成する新技法
米ABC系列のデトロイト局WXYZ-TVは、完成までの一部を切り取ったタイムラプス動画を公開している。動画冒頭ではビル上部に2層が完成している状態となっており、さらに地上部でもう1フロアが完成ようだ。
このフロアは夜間、ゆっくりとした一定の速度で上昇を開始。昼近くまでたっぷりと時間をかけ、上から3層目のフロアとして完成済みの2層の下にドッキングを果たした。この工法ではこうして、最上階から順にビルが完成する。
科学技術サイトのニュー・アトラスは、フロアは最大10時間をかけて上昇すると報じている。動画では、ドッキングの直前、フロアが一段とスピードを落とし慎重に接近する様子を確認できる。
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高所の屋外作業を減らし、安全性を向上
リフトビルドの工法は、デトロイトの建築会社バートン・マローから派生したプロジェクト子会社によって開発された。
米建築サイト「アーバナイズ」のデトロイト版は着工後の昨年5月、この工法が過去3年半にわたる研究開発の成果であると報じている。
リフトビルド社のジョー・ベンヴェヌート副社長は同サイトに対し、リフトビルド工法の最大のメリットは安全性だと強調している。外壁の作業は地上で済ませることができるため、足場を組む必要がなく、作業員たちが高所作業で危険にさらされることが少ない。
足場の構築と解体には想定外に多くの時間と費用を要するため、これを省けるという意味でも有益だ。
チームはプロジェクトのInstagramを通じ、「世界が建設される方法を変革する」技術だとアピールしている。
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工期は最大で50%削減可能に
同社は、工期を従来工法より短縮でき、工費も抑えられるとしている。通常の工事よりも最大で工期を50%短縮でき、工費ベースでは10〜20%の削減になるとの説明だ。
地上主体の作業では複数フロアを同時に施工できそうにないため、工期はかえって延びてしまいそうだ。だが、その心配はないようだ。
床および天井スラブ(床面構造および天井構造)と外壁が完成し、作業員が内部で安全に作業できるようになった段階で、フロアは上方へと送られる。こうして上部のフロアで内装工事を続けながら、地上では平行して新たなフロアに着工できるシステムとなっている。
また、上昇のギミックをうまく活用することで、効率化を実現した。フロアが上方へ移動する際、内部には乾式壁を施工するための資材が積まれている。このため、資材を少量ずつクレーンまたはエレベーターで搬送する必要がなく、作業員がフロアに到着し次第作業を進められるしくみになっている。
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屋根と壁を完成させ、風雨から守る
地上でフロアを構築するという考え方は1950年代から存在し、リフトスラブ工法として実用化されている。
ただし、リフトスラブが打設したスラブだけをジャッキアップするのに対し、リフトビルドは外壁を完成させてから上方へ送る。建築サイトのアーバナイズは、リフトビルドの場合、建設中に内部が風雨にさらされないメリットがあると解説している。
エクスチェンジ・ビルは現在までにほぼすべてのフロアが完成したが、フロア間の継ぎ目がとくに目立つ様子は見られない。格子状に沿った変則的な外壁デザインもカモフラージュに寄与してか、モダンかつ違和感のない仕上がりとなっている。
内部には153戸のマンションのほか、宿泊施設や小規模な小売店、そしてオフィスなどが設けられる予定だ。
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最上階から完成する新技法
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高所の屋外作業を減らし、安全性を向上
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工期は最大で50%削減可能に
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屋根と壁を完成させ、風雨から守る
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