なぜ乃村工藝社の仕事はクライアントを惹きつけるのか? 【書評】『「しあわせな空間」をつくろう。乃村工藝社の一所懸命な人たち』

  • 文:今泉愛子
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『「しあわせな空間」をつくろう。乃村工藝社の一所懸命な人たち』能勢 剛 著 日経BPコンサルティング ¥2,970

空間プロデュースを手がける乃村工藝社は、これまで多岐にわたるプロジェクトを手掛けてきた。オフィスやホテル、神社、博物館、さらにジブリパークやお台場や横浜、福岡にある実物大ガンダムなど、立地や要望が大きく異なるプロジェクトをどんな風にまとめたのか。本書では、これまで国内で手がけた13のプロジェクトを紹介。乃村工藝社とクライアント、それぞれの担当者を取材し、空間に込めた想いとそれを具体化する道筋を示す。

熊本県菊池市にある図書館では、市内を流れる菊池川をモチーフに、川のように蛇行した本棚を提案。実務が煩雑になると予想されるにもかかわらず現場の司書たちの後押しがあり実現したという。北海道日本ハムファイターズの新球場「エスコンフィールドHOKKAIDO」がある北海道ボールパークFビレッジは、人生を謳歌するための街をつくりたいという球団側の要望に沿って、球団の歴史を伝えるレジェンドスクエアや子どもの遊び場、グランピング施設、マンションなどもある複合的なビレッジとして今年3月に誕生する。一塁側と三塁側の頭上には幅86メートルの巨大ビジョンを設置し、試合経過や選手のデータなどを紹介するいっぽうで、水着で入る温浴施設や隣接するホテルからの観戦を可能にするなど、多様な楽しみ方を提案する。

クライアントは必ずしも最初から完成をイメージできているわけではない。乃村工藝社のスタッフは、根気強く言葉にならない想いを汲み取りアイデアを練る。当然やり直すことも少なくないが、彼らは手間がかかる作業を厭わない。それがクライアントの満足につながり、やがて利用者に還元され、スタッフの自信へとつながっていく。そのループから「しあわせな空間」が生まれる過程が、写真とともに見事に可視化されている。