88歳の生涯を現役のデザイナーとして貫く。常に新たな表現へと挑み続けた仲條正義の軌跡

  • 写真・文:はろるど

Share:

クリエイションギャラリーG8で開催中の『仲條正義名作展』展示風景。左は『デザインの世紀』展出品作品 1997年 国際交流基金、パリ日本文化会館

1933年に東京で生まれ、生涯を現役のデザイナーとして貫いた仲條正義。1956年に資生堂宣伝部に入社、その後に株式会社デスカを経て、1960年にフリーとなると翌年には株式会社仲條デザイン事務所を設立して活動の幅を広げていく。そして資生堂企業文化誌『花椿』のアートディレクションや松屋銀座、東京都現代美術館、細見美術館のCI計画、また資生堂パーラーのロゴタイプおよびパッケージデザインを手がけ、グラフィックデザインを中心に常に新たな表現へと挑み続けてきた。

2.jpeg
『仲條正義展 NAKAJOISH』出品作品 1988年 ギンザ・グラフィック・ギャラリー、ザ・ギンザアートスペース

東京・銀座のクリエイションギャラリーG8で開かれている『仲條正義名作展』では、過去の展覧会の出品作品をはじめ、仲條の手がけたポスター、ロゴ、エディトリアル、パッケージなどから厳選された作品を公開。あわせて手描きの印刷原稿から「傑作は偶然だ。」や「自分も他者である。不信からはじまる。」といった仲條語録などが紹介されている。『花椿』から『ヒロシマ・アピールズ』や細見美術館の琳派展ポスター、また資生堂パーラーのパッケージと盛りだくさんだが、仲條のデザインした書籍の一部は実際に手にとって閲覧できるのも嬉しい。

3.jpeg
左:『春ノ椿』展ポスター 2005年 ハウス オブ シセイドウ/資生堂 右:『HANATSUBAKI SPECIAL ISSUE Art deco』ポスター 2006年 資生堂
4.jpeg
『仲條正義名作展』展示風景より。東京都現代美術館や細見美術館のロゴなどが紹介されている。

「はじめデザインは詩だと思った。中年で移ろいと思い、今は妄想である。」と作品集『仲條 NAKAJO』(2021年)に記した仲條。会場の随所のパネルにて紹介され、過去の出版物より引用された仲條の文章にも注目したい。資生堂時代のエピソードをはじめ、『花椿』やタクティクスデザインでの出来事について語られるとともに、仲條の仕事の核心ともいえる文字やデザインの在り方などについても言及されている。そこからは時代への鋭い感性を反映しながら、アヴァンギャルドでかつ“謎解き”が潜んでいるようなデザインのインスピレーションの源泉を伺い知れる。

5.jpeg
写真5:『資生堂パーラー』パッケージ 1990〜1995年、2015 / 2016年

近年、『仲條正義展 – 忘れちゃってEASY 思い出してCRAZY』(資生堂ギャラリー、2012年)や『IN & OUT, あるいは飲&嘔吐』(ギンザ・グラフィック・ギャラリー、2017年)などで展示を行った仲條。しかしクリエイションギャラリーG8での仲條正義展は、2002年の『仲條のフジのヤマイ』、2003年の『続・フジのヤマイ』以来20年ぶり、また2009年の服部一成との二人展『仲條服部八丁目心中』から14年ぶりのことだ。一昨年10月26日に惜しまれつつ88歳にて世を去った仲條。その長きにわたるデザイナーとしての活動を振り返る『仲條正義名作展』を見逃さないようにしたい。

『仲條正義名作展』
開催期間:2023年2月16日(木)~3月30日(木)
開催場所:クリエイションギャラリーG8 
東京都中央区銀座8-4-17 リクルートGINZA8ビル1F
TEL:03-6835-2260
開館時間:11時~19時
休館日:日・祝
入場無料
http://rcc.recruit.co.jp/g8/