ファッションの店について服好きの人がときどき嘆くことがある。それは、「どの店もみんな一緒」。オリジナリティが問われるブランドショップは別としても、確かにセレクトショップではひとクセある品揃えの店が限られるようだ。情報がフラットに共有されるネット時代ゆえか、マーケティング発想の店づくりゆえか。ファッションには社会とつながる“時代性”と、自分の“趣味性”の両面がある。そのふたつのバランスが取れたアイテムに出会うと、「こんなのがほしかった!」と夢中になれるものだ。
東京・青山のレショップは、そんな「ほしい」で店内が満たされたスゴ技の店。マイナーなブランドも古着も、服マニアでハイセンスなスタッフたちのお気に入りだけが選ばれている。2015年に誕生した一軒の店ながら(一部のコンセプトショップ展開を除く)、メンズファッション業界で確固たるポジションを築いた。その結果、「レショップさんなら」と海外老舗ブランドが別注オーダーを快諾するまでに。少数生産も、ゼロからつくる完全別注もOKな体制になってきた。
時代感がしっかりと息づいているのも、レショップ別注モデルの大きな魅力。今回のファッション連載「着る/知る」では2023年春夏の別注ラインアップから、大人のワードローブに馴染みやすい品をセレクト。同店の一角にヴァーチャルな特設コーナーを設置してずらりと並べた。この先に順次発売される品が大半だから、店頭の動きをマメにチェックしていただければと思う。
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乗馬用コートを元にしたマッキントッシュ
すでに発売がはじまったマッキントッシュ。同ブランドのクラシックな乗馬用コートをベースに、形をゆったりとさせたものだ。防水マッキントッシュクロスの生地は、固くバリッとした質感。クリーニングにも一手間かかる。日常着として万人受けするアウターではないとしても、このスタイリッシュな佇まいには抗いがたい強烈な魅力がある。
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ワイドでウール素材の半袖ジョン スメドレー
通常のシーアイランドコットンからメリノウールに変え、さらに身幅と袖をワイドに。「いますぐ着たい」旬のポロシャツである。ジョンスメドレーならではの襟の美しさや、ハンガーに掛かっていてもブランドがわかる品格はちゃんとキープされている。洗濯の色あせが少なくシワになりにくく、ドレッシーなウールを春夏で着る動きが増えてきたなかで、決定打になりそうな優れモノだ。
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日本ニットのバトナーにアンサンブルを別注
企画のスタートは、「ゆったり羽織るウィメンズのようにVゾーンが深いカーディガンがほしい」という思いから。進行するうちにインナーに同素材のプルオーバーニットを着る、ファッション用語でいう“アンサンブル”へと発展していった。手掛けたニットブランドは工場を持つ奥山メリヤスの自社ブランド、バトナー。クオリティを追求する姿勢がこの別注アンサンブルにも息づいている。
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イタリアシャツ職人、サルヴァトーレ・ピッコロ流ワークシャツ
イタリア・ナポリを拠点にするシャツブランドの製品は手縫い工程もあり立体的な仕上がりで、着た姿の美しさも身体の動かしやすさも世界一とされる。そのなかでファッション性が高くファン層が幅広いサルヴァトーレ ピッコロに、ビンテージワークシャツを持ち込んでつくってもらったのがこのシャツ。袖幅も身幅もトレンドすぎないゆったり感が秀逸なエレガントカジュアルである。
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レトロなテニスシューズ、K-スイスの“ショップエクスクルーシブ”
アラフィフ以降の男性のノスタルジーを刺激する、かつての定番ワードローブのK-スイス。レトロなコートシューズが再び人気のいま履きたい新鮮なスニーカーだ。上写真の2点はともに正しくは別注でなく、日本国内ではレショップだけが販売する“ショップエクスクルーシブ”。レショップが価値を認めたレアなスニーカーで人に差をつけよう。
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ヴィンテージを再現したフリスコジーンズ(Lee)
レショップの別注アイテムはたいてい、スタッフが見つけた古着がベースになっている。単なる復刻でなく素材をモダンに変更したり、シルエットやディテールを変えたり、アレンジのセンスが際立つ。店の立ち上げ時から深く関わるリーに今回オーダーしたのが、黒と白のフリスコジーンズ。ダボダボサイズを選びサスペンダーで吊って着るのも楽しめるユニークなパンツである。
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ジンターラに発注した贅沢すぎるワークブーツ
これぞレショップの真骨頂といえる、ラグジュアリーなワークブーツ2型。アメリカの某有名ワークシューズブランドの定番であるエンジニアドブーツとペコスブーツがデザインのベース。それをイタリアのジンターラがつくるとこうなるという見本のような出来栄えだ。なによりスゴいのはアッパーの革質。吸い付くようにヌメリのある高級レザーがふんだんに使われた贅沢すぎる傑作だ。
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クラフトスタッズ、HTC別注シリーズ
スタッズ(金属の鋲打ち)ワークで名高いアメリカのHTC。スタッズと彼らが所有するビンテージの服小物とを、レショップスタイルで組み合わせたのが今回の別注シリーズである。なかでもユニークなのが、宝飾店ティファニーのビンテージ銀製バックルと、HTC製ソフトレザーを組ませたベルト。古いミリタリーベルトのムードを醸す1点モノだ。
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9種類の同じTシャツ!? レショップ定番をサンスペルが生産
レショップのオリジナルブランドLE(エルイー)には、同じ生地とディテールを使った同一仕様のモデルを、着丈や身幅などのバランスを変えて9種類展開するコンセプチュアルなシリーズがある。そのシリーズの通常Tシャツを、イギリスのサンスペルに製造依頼したのがこのTシャツ。全9種類が用意され、色は白とネイビーの2タイプ。つるっと滑らかな風合いはサンスペルならでは。
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スリッパを狙った、ユッタ・ニューマンのレザーサンダル
手づくりレザーサンダルの最高峰であるユッタ・ニューマンに、スリッパ風サンダルをオーダー。ウィメンズをメンズに応用した別注モデルである。土踏まずを盛り上げて足の形状に沿わせる、ユッタ・ニューマン流レザーソールの仕立てはここでも健在。味わい系サンダルを求めている人は要チェックだ。
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番外編:裏も同じ生地のオリジナルコート
別注でもエクスクルーシブでもない通常のショップオリジナルながら、この春に見逃せない逸品があるのでご紹介しよう。表地と同じ生地を裏地に使った「無双仕立て」と呼ばれるバルカラーコート(ステンカラーコート)である。形の元になったのは、某一流コートブランドのビンテージ。別の生地で展開していたコートをこのたび、やや光沢のあるコットンに載せ替えて制作。羽織って映画の主人公を気取りたくなる、“ファッション”を超えた永遠性のある一着だ。
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【画像】勢いが増す店「レショップ」、別注アイテム大集合!マッキントッシュ、ジョンスメドレー、K-スイス……【着る/知る Vol.148】
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ワイドでウール素材の半袖ジョン スメドレー
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日本ニットのバトナーにアンサンブルを別注
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イタリアシャツ職人、サルヴァトーレ・ピッコロ流ワークシャツ
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レトロなテニスシューズ、K-スイスの“ショップエクスクルーシブ”
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ヴィンテージを再現したフリスコジーンズ(Lee)
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クラフトスタッズ、HTC別注シリーズ
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9種類の同じTシャツ!? レショップ定番をサンスペルが生産
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スリッパを狙った、ユッタ・ニューマンのレザーサンダル
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番外編:裏も同じ生地のオリジナルコート
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ファッションレポーター/フォトグラファー
明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。
明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
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