築96年の歴史的建造物「kudan house」で、美術作家 若佐慎一の個展が開催

  • 文:今井未央

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美術作家 若佐慎一の個展「魚行水濁鳥飛毛落(うおゆけばみずにごりとりとべばけおつ)」が2023年2月10日(金)〜2月16日(木)まで、東京・九段下の「kudan house」で開催中だ。

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築96年の歴史的建造物「kudan house」

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若佐慎一は、大学で日本の伝統画法を学び、日本の風土や宗教観をベースに現代におけるマンガやアニメ、ゲームの要素を取り入れた創作活動を行なっている。
 
これまで発表してきた「招キ猫」「狛犬」などの絵画、漆や金箔を用いた彫刻に加え、2022年9月にメディアアーティスト落合陽一と開催した二人展では、家具を制作する過程で出る端材を使った彫刻を発表。多彩でPOPな現代アートから華美な装飾を排除した民藝にも通じる木彫まで、絵画と彫刻を往来しながら表現の幅を広げている。

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美術作家 若佐慎一

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本展のタイトル「魚行水濁鳥飛毛落」は、「魚が泳げば水が濁り、鳥が羽ばたけば羽が落ちる」を意味する禅語で、今回の作品作りのベースとなる“痕跡”をテーマに、「人の行動は痕跡として未来へ繋がってくもの」という考えから付けられた。それぞれの作品にあえて刻まれた“傷”を人生の痕跡に重ね、過去の積み重ねにより生み出される“今”に向けたポジティブなメッセージが込められる。

本展では、築96年の歴史的建造物「kudan house」の地下1階から2階までの空間全体を使って、新作を中心とする約30点の絵画・彫刻を展示する。また新たな試みとして、彫刻と絵画の間ともいえる「Sculptural Painting」シリーズと群像としての肖像彫刻も発表した。

 

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Sculptural Paintingシリーズ《キラメキあげるよ森の〇〇様》檜にアクリル絵具、金箔、2023

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《山神様のお使い》カリモク家具の端材に漆、金箔、2023

  
「Sculptural Painting」シリーズは、檜、杉、欅などからモチーフを削り出し、カラフルにペインティングした表面をヤスリで擦り出す。そこに刻み込まれた“傷”の集積が普遍的な美しさを創り出す。あえて荒く掘り出した木彫りの肖像彫刻は、見る人の角度によっても表情が違って見えてくる。いずれも若佐が考える日本の不二性(物事を二分しすぎない、幽玄の体感を大事にする感覚)に焦点を絞り、テクスチャーを重視し造形した作品だ。

長年の痕跡を刻む歴史的建造物と若佐慎一のコラボレーションに、今の自分を重ねてみては。
 
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若佐慎一 個展「魚行水濁鳥飛毛落」

会期:2023年2月10日(金)〜2月16日(木)
時間:12:00〜19:00 
会場:東京都千代田区九段北1-15-9 kudan house
入場:無料(事前予約必須)
予約サイト:https://select-type.com/rsv/?id=zOist3SzXIE&c_id=268432&w_flg=1