アイ・ラブ・湯〜! やっぱりお風呂は、いいなぁ ―小山薫堂が綴った、湯への想い 

  • 文:小山薫堂

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小山薫堂の「湯道」が映画になった。2月23日から全国で公開される。本記事では、小山薫堂が綴った湯への想いを、Pen最新号「湯道へ、ようこそ」(1月27日発売)から先行して公開する。

放送作家の小山薫堂が提唱する「湯道」をご存じだろうか? 湯を尊び、湯を楽しみ、日本人が愛するお風呂について、その精神や様式を追求するという新たな“道”だ。この「湯道」が、生田斗真主演で映画になった。2月23日から全国で公開される。

1月27日(金)発売のPen最新号では、生田斗真をはじめとした出演者のインタビューや、作中で登場する聖地の数々を紹介しながら、本作の魅力に迫る。さらに、時代を超えて愛される名湯や、こだわりの詰まった湯道具も掲載。湯と「湯道」について大特集! 「湯への感謝」と「小さな幸せ」に、ぜひ浸ってほしい。

Pen最新号「湯道へ、ようこそ」
2023年3月号 ¥900(税込)
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たかがお風呂、されどお風呂。いったい、いつからこんなにもお風呂好きになったのか……自分でも忘れてしまいました。思い返せば、初めて見知らぬ大人に叱られたのは銭湯、数字を100まで数えられるようになり、父親と男同士の話をしたのは自宅のお風呂でした。自分にとってお風呂は、人生にとって大切な学びの場でした。

大学を卒業した後も銭湯通いは続きます。仕事が順調な時でも、銭湯で湯に浸かれば学生時代の初心に戻ることができて、謙虚な気持ちになります。銭湯は、素直な自分に会えるふるさとのような存在。温泉旅の楽しさを覚えてからは幸せのカタチがひとつ増えた気がしました。こうした想いや経験、さまざまな人との出会いを重ねた末に辿り着いたのが「湯道」です。

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決して、高尚な文化を創造したくて湯道を提唱したわけではありません。湯道を提唱したのは2015年。あれから8年……毎日、毎日、本当にお風呂のことばかり考えてきました。「すべては、お風呂への愛!」と言ってもいいかもしれません。こんなに気持ちよくて、健康にもよくて、人との絆も生まれたりして、心もホッコリさせる。そんなお風呂の価値を、温泉、銭湯、家風呂といった枠を越えて、ひとりでも多くの人に再認識して欲しい。さらに欲張るなら、これを日本の文化として発信し、入浴の価値をより多くの人に知ってもらえたなら、世界の幸福度は(ほんの少しかもしれないけれど)上がるのではないだろうか、と本気で思ったのです。

今回、映画『湯道』のなかで、角野卓造さん演じる家元が、それまで頑なに守ってきた作法を無視してお風呂に浸かり、「やっぱりいいなぁ、風呂は!」と呟く場面があります。この映画の中で僕がいちばん好きなシーンです。

今回は湯道がテーマの特集ですが、そんなことは関係なく、今夜あなたがお風呂に浸かった時、「やっぱりお風呂はいいなぁ」と思ってもらえたなら、湯道家元としてこれほどの幸せはありません。

2023年1月 小山薫堂

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「湯道へ、ようこそ」

2023年3月号 ¥900(税込)
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