お風呂がアートギャラリーに変わる。オーダーメイドバスルームブランド「BAINCOUTURE」が描く身体感覚を拡張するお風呂の世界

  • 文:龍崎翔子

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お風呂が好きだ。温泉が好きだ。サウナが好きだ。人はいつだって、ほかほかのお湯に蒸気に身体を浸したい。そこに美しい自然の眺めや、上質な設えやらがあれば、なおのこと良い。

私たちは、最高のひとっぷろのために、飛行機やら新幹線やらを乗り継ぐことを厭わない。

でもふと思うのである。自分のお風呂はどうなん?と。
泉質が〜だの、水温が〜だの、導線が〜だの言っている私たちの、365日中の300日は入浴しているであろう、ご自宅のお風呂はどうなんですか?と。

いざ我が家のユニットバスに目を向ければ、狭苦しい脱衣所にどでかいドラム式洗濯機がどどんと鎮座しており、身を狭めて服を脱いだ先に広がるのは真っ白なFRPの空間。そこには窓もなければ景色もなく、音楽もなければアートもない。ただ、シャンプーの香りだけが微かに広がっている無機質な空間ではないだろうか。

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お風呂はただ身体を洗ってほかほかにするだけの場ではない。お風呂は、その日1日を振り返る書斎のような空間でもあるし、インスピレーションに出会うアトリエのような空間でもあるし、身体の強張りを緩める寝室のような空間でもあるし、家族で団欒するリビングのような空間でもある。ピザを片手に好きな映画を観るシアタールームでもあるし、エクササイズをするフィットネスルームでもあるし、身体の隅々まで磨き上げるドレッサーでもあるかもしれない。

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そんな、お風呂の可能性をユニットバスの外に滲み出させていく、オーダーメイドバスルームブランドがある。

お風呂を意味する<Bain>と、オートクチュールに由来する<Couture>を組み合わせた造語、<BAINCOUTURE(バンクチュール)>。ひとりひとりのライフスタイルに合わせて、レイアウトから、バスタブ、タイル、水栓金具、照明器具、アメニティ...に至るまで選び抜き、世界にひとつだけのお風呂をつくることができるという。
お風呂に窓を設けたり、プライベートサウナを設置したり、プロジェクターやスピーカーを入れたり。既成のユニットバスでは叶えられない、豊かなお風呂を実現することができる。

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今のお風呂は、なんとなく不自由だ。音楽をかけることはできなければ、植物を育てられるわけでもなく、食事ができるわけでもない。スマホで映画を見ようものなら水没しないかハラハラしっぱなしだし、ポスターを飾ればシワシワになり、読書をすればこれまたシワシワになる。もちろん、言うまでもないが居眠りしようものならヒートショックで生命が危険に晒される。

でも、それだけじゃつまらない。それに、いつまでもそんなつまらないお風呂シーンが続くのも面白くない。

そういうわけで、お風呂のショールームをアートギャラリーにするという前代未聞のプロジェクトが始まった。東京・神田のオフィスビルの一角にある、Baincoutureのショールーム。そこに、新進気鋭のアーティストの作品を展示するという新たな試みをするのだという。

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ユカ・ツルノギャラリーに所属する、安田悠さんの個展、「あわいを繋ぐ」。
水が揺蕩うように、まどろみの中で瞼に浮かぶ白昼夢のように、曖昧で軽やかなタッチが印象的な作品群だ。それは、水面がきらきらと揺れたり、水滴が窓ガラスから滴る時の様子とどことなくリンクして、バスルームの中で展示されているのがあたかも必然だったかのように佇む。

バスタブ越しに、シャワールームの中に、鏡の隣に、ホワイトキューブではなく生活の一場面の中に寄り添うアートの存在にハッとさせられる。人はいつから、アートは美術館で、あるいはリビングで鑑賞するものだと思うようになったのだろうか。身構えて、着飾って、取り繕った自分で向き合うアートもあれば、すっぴんに部屋着の時に、あるいは裸の時にすっと心の中に入り込んでくる、そんな鑑賞体験もあるのかもしれない。

バスルームは、その価値を見過ごされている。そこはもっと面白くなる、もっと豊かな生活の舞台となる空間なのだと思う。

安田悠個展『あわいを繋ぐ』

場所:BAINCOUTURE東京ショールーム
東京都千代田区西神田3-8-1千代田ファーストビル東館1F

会期:2022年11月18日(金)〜2023年2月19日(日)
※一般開放は日曜日のみ(予約不要)

https://magazine.baincouture.jp/discover/



龍崎翔子

ホテルプロデューサー

L&G GLOBAL BUSINESS, Inc.代表、ホテルプロデューサー。1996年生まれ。2015年にL&G GLOBAL BUSINESS, Inc.を設立。HOTEL SHE, KYOTOをはじめとし、全国で4つのホテルを手がける。2020年9月には次世代観光人材育成のためのtourism academy "SOMEWHERE"を設立。

龍崎翔子

ホテルプロデューサー

L&G GLOBAL BUSINESS, Inc.代表、ホテルプロデューサー。1996年生まれ。2015年にL&G GLOBAL BUSINESS, Inc.を設立。HOTEL SHE, KYOTOをはじめとし、全国で4つのホテルを手がける。2020年9月には次世代観光人材育成のためのtourism academy "SOMEWHERE"を設立。

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