国内では9月にWi-Fiの次世代規格となるWi-Fi 6Eの認証がおり、ようやく利用可能となったところだが、すでにその次の規格であるWi-Fi 7(IEEE802.11be)についての動きも目立ち始めている。直近では、TP-LINKがWi-Fi 7対応をうたう製品を11月にいち早く発表しているほか、Qualcommも12月に家庭向けのWi-Fi 7プラットフォームを発表したばかりだ。
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次世代規格のWi-Fi 7では、超高速通信や通信の安定性などが向上しており、理論値ではWi-Fi 6(最大9.6Gbps)の4.8倍となる最大46Gbpsを実現する。
この高速化を実現する要素はいくつかあるのだが、そのひとつが6GHz帯における320MHzのチャンネル帯域幅だ。Wi-Fi 6/6Eでは20MHz幅のチャンネルを複数束ねて最大160MHzをサポートしていた。このチャンネル幅、道路の車線と考えるとわかりやすい。80Hzを1車線と考えると、Wi-Fi 6の160MHzは2車線、Wi-Fi 7の320Mhzが4車線となる。車線数が多いほど、渋滞も少なく流れがスムーズになるというのは簡単に想像できるだろう。
また、従来はこの160Hzを利用するのに連続した周波数帯域が必要だったが、Wi-Fi 7に追加された「Multi-RU Puncturing」では、20MHzごとに飛び飛びの周波数を束ねて最大320MHzを確保できるようになった。
もうひとつ重要な要素に、16x16 MU-MIMOがある。難しい話を抜きにして簡単に言ってしまうと、最大16台の機器と同時に接続が可能になる。最近ではスマートフォンやPC以外にも、ゲーム機やスマート家電など家庭内でネットワークに接続する機器が増えているので、同時接続数が増えるのはありがたい。
このほか、データの転送効率がWi-Fi 6の4倍となる4096-QAM(Quadrature Amplitude Modulation:直交振幅変調)をサポート。加えて、従来のWi-Fiでは、2.4GHzか5GHz、あるいはWi-Fi 6Eの6GHz帯など、どれか1つの周波数帯でしか通信できなかったが、Wi-Fi 7では、3つの周波数帯で同時に通信が可能なMLO(Multi-Link Operation)があらたに採用されている。
これらを組み合わせることで、理論値最大46Gbpsという高速通信を実現するわけだ。といっても、46Gbpsはあくまでも規格上の最大速度であり、ノートPCなどがこの速度で通信できるわけではない。
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IntelとBroadcomは2022年9月、ノートPCを利用したWi-Fi 7のデモで、実効速度5Gbpsを達成したと発表している。46Gbpsと比べてると大分見劣りしてしまうが、同じ環境のデモでWi-Fi 5の実効速度が1Gbps、Wi-Fi 6Eが2Gbpsほどだったことを考えると、十分に高速なことがわかるだろう。もちろん、実際の家庭内環境ではもう少し速度は落ちると考えられるが、この速度があるなら、8K動画のストリーミングやVR、AR等での利用、クラウドゲームなども快適になりそうだ。
とはいえ、Wi-Fi 7はまだ正式に規格化されているわけではない。いまのところ、Wi-Fi 7の仕様が確定するのは2024年の予定となっている。これまでのWi-Fi6や6Eなどの例を考えると、対応製品の投入自体は仕様策定前の2023年から増えていくものと考えられる。
Wi-Fi 6Eの導入時には、新しい6GHz帯を使うこともあり、国内認可の問題で日本での展開は遅れてしまったが、Wi-Fi 7ではそういったことにはならないだろう。Wi-Fi 7の普及を楽しみに待ちたいところだ。
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