漫画家、江口寿史の個展で見たい、45年にわたって描き続けた「彼女」

  • 文・写真:はろるど

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Shiggy Jr.『ALL ABOUT POP』初回限定盤 CDジャケット UNIVERSAL SIGMA 2016年 出力原画

1977年の『すすめ!!パイレーツ』で週刊少年ジャンプに連載デビューを果たし、続く『ストップ!!ひばりくん!』でも大ヒットを飛ばした漫画家、江口寿史(えぐち ひさし。1956年生まれ)。若者のファッションや音楽といった流行を巧みに取り込んだ描写は、その後の漫画界へ大きな影響を与えると、イラストレーターとしても活躍して、雑誌の表紙や挿画、装幀本、CDジャケットや商品広告を多く制作してきた。過去にはファミリーレストラン「Denny’s」のメニューやJR東日本グループの「アトレ」などのポスターも手がけていて、生活のシーンに江口のイラストが根ざしていると言って良い。

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楠見清『ロックの美術館』単行本カバー シンコーミュージック 2013年 出力原画 アンディ・ウォーホルの『ダブル・エルヴィス』と同じポーズをしている。

江口が「それ以上に描きたいないものはない」とまで語るモチーフとは…?千葉県立美術館で開催中の『江口寿史イラストレーション展 彼女』では、かけがえのない人としての意味を込めて呼ぶ「彼女」、つまりさまざまな女性に焦点を当てて漫画やイラストの原画などを紹介している。まず出迎えてくれるのが、CDジャケットや本の表紙などに描かれた女性をインクジェットプリントにてカンヴァス上へ引き出した大型の作品だ。そこにはリキテンスタイン風のひばりくんやウォーホルの絵画のポーズを連想させるカウガールなどが表れていて、作品の鮮やかな色彩や大胆な構図のルーツに1960年代のポップアートがあることが分かる。

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「Weekly 漫画アクション」表紙 『美少女のいる街風景』シリーズ〈祇園〉 着彩画・線画 双葉社 1999年 原画 「Weekly 漫画アクション」の表紙のために1999年から1年間毎号描き下ろされたイラストレーションのうちの1つ。

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「リアルワインガイド」58号表紙 線画 リアルワインガイド 2017年 原画 ワイン専門誌の創刊号から現在まで70枚以上にのぼる表紙を手がけた江口。今後も毎シーズン描かれていくというから、江口のイラストレーションとしては最長最多のシリーズとなる。

やはり見ておきたいのが原画だ。江口は2000年以降、パソコンによる着彩へと移行しながらも、手で線を引くことにこだわっていて、会場でも細かな線が息づかうようにしてモデルを描いたライブスケッチなどを見ることができる。このほか、『Weekly 漫画アクション』の表紙や、『リアルワインガイド』でも一部に原画が展示されていて、中には着彩画と線画を見比べながら楽しめる。いずれも髪型や表情、それに服装などを細部にわたって描き分け、彼女たちの個性を見事に捉えているが、皆、一人ひとりがスターのようにきらきらと輝いている。

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『江口寿史イラストレーション展 彼女-世界の誰にも描けない君の絵を描いている-』展示風景。総出展数は500点にも及んでいて見応え十分。会場内の撮影もできる。

熊本生まれの江口は、中学生の時に野田へと移り、柏の高校を卒業するなど千葉がゆかりの深い。『すすめ!!パイレーツ』に登場する野球チームも流山が拠点だ。この『江口寿史イラストレーション展 彼女』は、2018年の金沢を皮切りに青森や旭川、また長野や盛岡などにて開かれてきたが、千葉会場では新作に加え、パイレーツの扉絵イラストを集中的に紹介するコーナーといったオリジナルな展示も行われている。「絵は本当に果てしない。だからやめることができない。」とは江口の言葉だが、スタートラインから45年経ったいまも描き続ける「彼女」たちは、これからも現代日本の新たな美人画として多くの人々の心を掴んでいくに違いない。

『江口寿史イラストレーション展 彼女-世界の誰にも描けない君の絵を描いている-』
開催期間:2022年10月29日(土)~2023年1月15日(日)
開催場所:千葉県立美術館
千葉市中央区中央港1丁目10番1号
TEL:043-242-831
開館時間:9時~16時半 ※入館は16時まで。
休館日:月曜、年末年始 ※月曜が祝祭日の場合は開館し、翌日休館
入場料:一般¥500
http://www2.chiba-muse.or.jp/www/ART/