羽生結弦の「プロローグ」──新たな伝説はついに幕を開ける

  • 文:ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

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2020年 全日本選手権『羽生結弦 アマチュア時代 全記録』P256より ©時事

初の単独アイスショー「プロローグ」の開催で、プロのアスリートとして新境地を築き始める羽生結弦。公式戦デビューからこれまでの歴史を振り返る。

あなたが羽生結弦という選手を初めて知ったのはいつだろうか? ノービス(9〜13歳)時代、ジュニア(13〜18歳以下)時代、またはシニア(15歳以上)からという人もいるだろう。

特にフィギュアスケートに詳しくない人でも、ものすごい中学生選手がいるということは2010年頃に聞いたことがあるのではないだろうか。

その選手こと、羽生結弦は2010年に世界ジュニアフィギュアスケート選手権で優勝し、翌2010-2011年シーズンにはシニアデビュー。

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2009年 ドリーム・オン・アイス 『羽生結弦 アマチュア時代 全記録』P20より ©時事

その年のNHK杯で自身初となる4回転トーループを成功させて4位入賞。初出場となった2011年2月の四大陸選手権では、ショートとフリーともに自己ベストを更新して銀メダルを獲得。四大陸選手権史上、男子選手での最年少メダリストとなった。

華々しいシニアデビューで羽生結弦という名前を知らない人はいないほどになった矢先、東日本大震災が起こる。練習中に被災し避難所生活も経験した羽生が苦難を乗り越え、アイスショーを通して復興支援を続けてきたことはよく知られるところだ。

地元アイスリンクは損傷がひどく、4カ月以上も閉鎖。羽生は各地を転々とする震災チャリティーのアイスショーに約60回も出演し、早めに会場入りしては練習を重ね、その年の11月にはグランプリシリーズ・ロシア杯で初優勝している。

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2011年 ロシア杯 『羽生結弦 アマチュア時代 全記録』P31より ©EPA=時事

その後も主要大会で自己ベストを更新し続け、異次元のレベルへと競技を引っ張ってきた。世界選手権は2度の優勝、グランプリファイナルの4度の優勝、オリンピック2度の金メダル、スーパースラム(主要国際大会全制覇)達成、そして北京五輪での4回転半ジャンプへの挑戦……。伝説は永遠に続くものと思われていた。

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2018年 平昌五輪 『羽生結弦 アマチュア時代 全記録』P173より ©時事

2022年7月19日、記者会見が行われ、羽生結弦はプロ転向を宣言。衝撃的なニュースではあったが、これは引退ではなくプロのアスリートとしてのスタートだ、という希望に満ちた力強いメッセージを世間は新たな期待とともに受け取った。

それはフィギュアスケート界を長年牽引してきた、類まれなる王者であり、表現者の決意への敬意であった。

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2022年7月19日 プロ転向会見 『羽生結弦 アマチュア時代 全記録』P307より ©時事

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2009年 ジュニア・グランプリファイナル 『羽生結弦 アマチュア時代 全記録』P21より ©時事

『羽生結弦 アマチュア時代 全記録』は2004年「全日本ノービスB」の初出場で金メダルを取ったときから、2022年オリンピック北京大会で「みんなの夢」を乗せた4回転半への挑戦、北京五輪後のアイスショーでの演技。そしてプロ転向会見まで、羽生の写真とともに言葉も掲載。

年表のごとく、時系列に並んだ写真と時々の羽生のコメントが掲載されている。まさに羽生の成長がページを追うごとに肌で感じられる1冊だ。

「あの衣装はどの大会だったのか?」「あの技はどの大会で最初に披露されたのか?」

羽生のアマチュア時代の演技を読者自らの記憶とともに振り返って復習できる構成で、「プロスケーター羽生結弦」の今後の活躍の予習にも最適な1冊となっている。

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羽生結弦 アマチュア時代 全記録
CCCメディアハウス [編]

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