スカーレット・ヨハンソンが、女優として“レッテルを貼られていた過去”を語る

  • 文:中川真知子

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(c)JAVIER ROJAS/ZUMAPRESS/amanaimages

「マーヴェル・シネマティック・ユニバース」で、冷静沈着で激しいアクションをこなすロシア人スパイ「ブラック・ウィドウ」を演じ、自立した強い女性のイメージがあるスカーレット・ヨハンソン。だが、10代は実年齢以上の役を求められた上にセクシャルな女優のレッテルを貼られていた。

そんな彼女は当時をどう思っているのだろうか。そして、今の若手俳優らにたいしてどんな気持ちを抱いているのだろうか。週刊ポッドキャスト「Armchair Expert」の500回目のエピソードに出演したヨハンソンが胸の内を語った。

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大人びた少女へのレッテル

スカーレット・ヨハンソンの芸歴は長い。幼い頃から演劇を学んでいた彼女のデビュー作は『ノース 小さな旅人』(1994年)で、まだ9歳だった。その後、『ゴーストワールド』(2001年)で世間の注目を浴び、日本が舞台の『ロスト・イン・トランスレーション』(2003年)で不動の地位を築く。

『ロスト・イン・トランスレーション』は、ベテランハリウッド俳優のボブ(ビル・マーレイ)と、大学を卒業したての人妻(スカーレット・ヨハンソン)が東京で出会い、一時的に気持ちを寄せるという内容だった。ヨハンソンは25歳の設定のキャラクターを演じていたが、撮影されたときは17歳だった。

監督であるソフィア・コッポラは、『のら猫の日記』(1996年)で見た幼い顔とハスキーボイスのヨハンソンを気に入って起用したがった。だが、当時のスカーレット・ヨハンソンは17歳。20代半ばを演じられるか確信がもてなかったので、コッポラはヨハンソンをレストランに呼んで面と向かって会話したそうだ。その結果、コッポラはスカーレットなら約10歳ほど上の役でも演じられるだろうと判断した。

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『ゴーストワールド』

ヨハンソンが大人びていたのは、「マンハッタンで育ち、子どもの頃から映画界という特殊な環境で大人に囲まれて過ごしてきたから」だという。子どもは背伸びしたがるものだ。ヨハンソンも大人っぽく見られることは決していやではなかったそう。だが、大人っぽいことと、実際に大人であることは違う。「母親は私を大人社会がもたらす悪影響からできる限り守ろうとしていました。とてもうまく立ち回っていた」と話している。とはいえ、どんなに母親が注意深く見守っていても、全てから遠ざけることはできない。「同じ歳の子どもより進んだ考えを持っていた」と言う。

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『ロスト・イン・トランスレーション』

彼女の幼さの残る顔と体から発せられるアンバランスな色気は、同作におけるシャーロットの不安定さをうまく表現した。だが、このときの演技が高く評価された一方で、彼女は「セクシャルな女優」扱いされることに。残念ながら、当時のハリウッドでは、大人びた少女には不相応なレッテルを貼ったり同様の役柄ばかり持ってきたりする傾向が罷り通っていたのだ。

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ハリウッドの悪き習慣とレッテル

大人びた少女に「セクシャルな女優」のレッテルを貼るのは、決して珍しくなかった。

『ロリータ』

古くは『ロリータ』(1961年、スタンリー・キューブリック監督)のスー・リオン、『タクシードライバー』(1976年、マーティン・スコセッシ監督)のジョディー・フォスター、『レオン』(1994年、リュック・ベッソン監督)のナタリー・ポートマンが、類まれなる演技力と年齢以上の雰囲気を持っているからと、年齢に不釣り合いな役柄や設定を求められてきた。

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『タクシードライバー』

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『レオン』

90年代から2000年代初頭には、ブリトニー・スピアーズやパリス・ヒルトンがテレビ番組の男性司会者にセクハラ同然の質問をされたり、印象操作された上で人格を否定されたりしていた。

セクシャルな女性のポジションで売り出せば、ある程度の知名度も仕事のオファーも得られる。だから、それを良しとする風潮が少なからずあった。しかし、レッテルやポジションは長続きしない。

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チャンスであり呪いでもある

Armchair Expertのホストであるダックス・シェパードは、「チャンスであり呪いでもあったのでは? 」と質問した。すると、ヨハンソンは「(レッテルを貼られることが)ハリウッドでの女優としての寿命を短くすることはわかっていたし、怖かった」と答えた。

それを裏付けるように、ヨハンソンは、『ブーリン家の姉妹』(2008年)でナタリー・ポートマンと共演した際に、セクシャルな女優扱いされる件について意見を交わしたという。ポートマンは自分自身が全く官能的な人間ではないにもかかわらずセクシャルな女優扱いされていることに辟易している、と話したそうだ。

ポートマンは、もともと成績優秀だったが、本当の自分とハリウッドでのイメージの乖離が広がれば広がるほど、より一層学業に打ち込んだ印象がある。ハーバード大学とイェール大学に現役合格したときは大きなニュースになった。『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』(1999年)の公開時には、秀才だと広く知られていたが、それでも2004年公開の『クローサー』ではストリッパーの役を演じるなど、レッテルを剥がすのには苦労している。

『クローサー』

その後、ヨハンソンは、『her/世界でひとつの彼女』(2013年)でキャリアの転機を迎える。人工知能型OSの声を担当し、声だけのバーチャル・セックスを演じたのだ。高い演技力と、ハリウッドにおける彼女の官能的なイメージがあってこその評価だったと思うが、内心は複雑だったことだろう。

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『her/世界でひとつの彼女』

このときの演技が賞賛され、ローマ映画祭では最優秀女優賞を受賞。この頃から徐々にハリウッドの女優への風向きが変化してきたことや、2017年のMeToo運動で業界全体のセクハラが見直されたこともあって、レッテルを貼ることが問題視されてヨハンソンの活躍の場も広がっていった。

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ハリウッドの変化と若手への思い

自分の若かりし頃の扱われ方と、現在の、アクションも声優も年相応の役もこなせる今とを振り返って、ヨハンソンはこんなことを言っている。

「私は23歳という若さで1度目の結婚をしましたが、自分的には33歳くらいの気持ちでした。レッテルを貼られた自分を客観視して今後もやりたい仕事のオファーは来ないのだろうと思っていました」

だが、「どうやら周囲は自分のことを40歳くらいだと思っているらしい」と考えたあたりで「説明されたままの何かになろうとしたり抗ったりするのは止めようと思った」と、心の変化を語っている。

そして、悩んでいた頃の自分と今の若手を比較し、今の若手は「ダイナミック」と表現する。

「今の若い俳優たちはちゃんと20代を演じている。彼らは違う役柄を演じることを許されていて私の時代とは違うと感じられる。ゼンデイヤやフローレンス・ピュー(『ブラック・ウィドウ』でヨハンソンと共演)がいい例。とてもダイナミックでさまざまなジャンルの役に挑戦できている」

昨今のハリウッドは、ポリティカルコレクトネスの激しさで表現幅が狭まりつつあると言われることもある。だがそれは、悩んできた関係者が戦い、声をあげて、日進月歩ながらも数々の過ちを正してきた結果だ。スカーレット・ヨハンソンは、そういったハリウッドの変化を肌で感じてきた。笑いながら軽快なテンポで話していたが、人気ポッドキャストの記念すべき500回エピソードの話題にふさわしい重みのある内容だったと思う。

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【画像・動画】スカーレット・ヨハンソンが、女優として“レッテルを貼られていた過去”について語る

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(c)JAVIER ROJAS/ZUMAPRESS/amanaimages

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『のら猫の日記』

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『ロスト・イン・トランスレーション』

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『ロリータ』

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『タクシードライバー』

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『レオン』

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『クローサー』

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『her/世界でひとつの彼女』