なにかの服装が流行れば、その対抗馬が必ず出現するのが世の常。こうしてさまざまなテイストが入り混じり、時代が移り変わっていく。では現在注目される大人男性のネクストトレンドはなんだろうか。そのひとつが男女の区別をなくす「ジェンダーレス」に対抗する、昔ながらの男っぽい「ラギッド」だろう。若い世代に大人気の古着流行の後押しもあり、デニムカジュアルが久々に復活の兆しを見せている。私たちの日常にアウトドア生活が浸透したことも、土臭い服に惹かれる一因かもしれない。
2022-23年秋冬ファッションでは、素朴なざっくり素材が大豊作である。懐かしい英国調ツイードも多くのブランドがリリースしている。なかでも当連載「着る/知る」がイチオシするのが、毛布系素材のミリタリーウエア。着続ければヴィンテージになりそうな、粗削りな味わいが肌に心地いい。貫禄のついた大人が街なかで着ても見栄えする点も、ミリタリーウエアをプッシュする理由だ。赤や黄色のニットをインナーに着たり、カラフルなアイテムをプラスワンするとより今年風になる。
ここでは毛布の風合いを活かしつつ都会的にアレンジした、絶妙なバランスを持つ3ブランドをお届けしよう。長く愛用する価値のある優れもの揃いだ。
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フィレンツェのセンスが注がれた、イースト ハーバー サープラス

イースト ハーバー サープラス(East Harbour Surplus)は、1950〜60年代のミリタリーウエアをベースにしたイタリア・フィレンツェのブランド。主にフィレンツェ近郊の工場で製造されている。上写真のピーコートはそれ自体が海軍のユニフォームだが、さらに軽量でストレッチ性のあるミリタリー系毛布に載せ替えたデザイン。両脇のポケットがフラップつきパッチポケットなのも、本来はハンドウォーマーポケットのピーコートのディテールを変更したもの。背中のボタンを外してインバーテッドプリーツを広げれば裾広がりのAラインになるギミックも搭載。腰回りが解放されるので、自転車に乗るなどのアクティビティで役立つだろう。
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こちらはヴェネツィア!分厚い素材が本格派のチーニー

19世紀半ばの布工房をルーツに持つイタリア・ヴェネツィアのチーニー(CINI)。地元の運河であるゴンドラ乗りのための防寒性の高いマントをつくってきた歴史もある。掲載のアウターは2点ともに、ゴワッとするほど固く厚手のピュアヴァージンウール「PIAVE」で仕立てられている。まさしく伝統の毛布を羽織る感覚のネオヴィンテージウエアだ。着続けて身体に馴染む頃、いい風合いに育っているだろう。チーニーがさらにユニークなのは、モードなアプローチも行っていること。2点の服はシルエットがAラインで、1サイズのみの展開。ダボッと着れば今風のオーバーサイズになる。着方しだいで自在にイメージを変える個性派だ。
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オーストリア軍アップサイクルのフランク リーダー

今回のトリを飾るのはヴィンテージモードの雄、ドイツのフランク リーダー(FRANK LEDER)。アーティストでもある同名デザイナーが生み出すアイテムには、ドイツ周辺の文化の歴史とリンクする奥深い創造性がある。ミリタリーやワークとの親和性の高さも同ブランドのアイデンティティ。今季コレクションでずらりとラインアップされたのは、オーストリア軍のデッドストック毛布シリーズ。フランク自身が友人から譲り受けたものである。スイス軍と似ている色柄だが彼によると「スイスの毛布ほど厚くなく、服づくりに適しています」とのこと。ストライプを縦直線に使い、クールな印象に仕上げた匠のデザインだ。
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East Harbour Surplus
SDI(East Harbour Surplus)
CINI
www.instagram.com/cinivenezia/?hl=ja
FRANK LEDER
MACH55 Ltd.(FRANK LEDER)

ファッションレポーター/フォトグラファー
明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。
明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
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