次イタリアへ行くならここ! 旧市街から高台へ、知られざるジェノヴァの街を歩く

  • 文:久保寺潤子

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カステッレットの高台からジェノヴァの街を一望する。左のガラス張りの建物は、展望台へのエレベーター。Foto Andrea Facco

世界遺産の建造物が目白押し! 旧市街から高台のパノラマへ

パンデミックにより、しばし鎖国状態だった日本だが、ようやく海外への重い扉が開き始めた。異国の小さな街をゆっくり歩けば、止まっていた時間が動き出す。

今回紹介するのはイタリア最大の港町ジェノヴァ。ミラノから鉄道で約1時間40分、風光明媚なリヴィエラ海岸に面し、背後にはアペニン山脈が迫るこの街は、ルネサンス期にはヴェネチアと並ぶ2大海運王国として華々しく繁栄した。現在も海洋共和国時代の歴史的遺産が多く残り、その栄華を物語る。

まずは中心部である旧市街から散策をスタート。ガリバルディ通りやバルビ通りには、かつて迎賓館だった貴族の館で今は美術館や市庁舎となっている王宮や赤の宮殿、白の宮殿など、世界遺産に登録された建物群が連なる。これら館の内部には、ため息の出るような装飾や贅を尽くした家具、ルーベンスやファン・ダイクなどフランドル派の絵画が時代を超えて輝きを放っている。いっぽうダンテ広場にはジェノヴァ出身のコロンブスが幼少期を過ごしたといわれる「コロンブスの家」や、12世紀のロマネスク建築が見事な聖アンドレア修道院などが続く。

クラシック音楽好きならぜひ訪れたいのが、パガニーニゆかりの場所。史上最高のヴァイオリニストで作曲家・指揮者でもあったパガニーニは、ジェノヴァ生まれの天才音楽家だ。世界遺産であるロッリ邸宅群のひとつで、現在は市庁舎となっているトゥルシ宮殿の「パガニーニの間」には、1743年製造のヴァイオリンの名器、グアルネリ・デル・ジェズの「イル・カノーネ(大砲)」が展示されている。また1794年にパガニーニが初めてソリストとして演奏した聖フィリッポ教会と礼拝堂は内部の芸術性も素晴らしく、ぜひ立ち寄ってみたい場所だ。

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3 - パガニーニが初めてソリストとして演奏したサン・フィリッポ教会Oratorio di San Filippo - Foto Fabio Bussalino (1).JPG
パガニーニが初めてソリストとして演奏した聖フィリッポ教会。礼拝堂の装飾もみごと。Foto Fabio Bussalino

ジェノヴァは坂の街だ。住民は丘の上に建てられた建物の間を、急勾配の歩道やリフト、ケーブルカーを使って移動する。これは丘の上からパノラマを楽しみたい旅行者にとっても便利な交通手段だ。たとえば19世紀後半につくられたケーブルカーは、街の中心部、ゼッカからリーギまで約1.5メートルの区間を走っており、トンネルを抜けると街と海を一望する素晴らしい景色が広がる。リーギ駅を降りたらペラルト公園へ足を伸ばすのがおすすめ。ここには17〜19世紀にかけて建設された要塞道へと向かう気持ちのよい遊歩道となっている。

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1 - ジェノヴァの急勾配の坂道Genova Creuza.jpeg
急勾配の坂道の向こうには海が見える。色とりどりの建物が印象的。Foto Comune di Genova

2 - ケーブルカー サンタンナ線Funicolare SantAnna.jpeg
急斜面を登るケーブルカーは、1世紀以上も前から住民の足として活躍している。Foto Comune di Genova

もう一つの高台へのルートはプリンチペ広場の鉄道駅から出ているグラナローロ鉄道。イタリアで最も古いアプト式車両のひとつで、木製の座席を備えた赤い車両は、ヴァルポルチェヴェーラへと至る丘陵を登り、車窓からはパノラマが楽しめる。

標高57メートルのカステッレット高台への東リフトは1909年に設置され、ジェノヴァで最も古い公共の乗り物である。最終地点のスピアナータ・カステッレットにあるモンタルド展望台は、最高のパノラマテラスで、ここからは歴史的な建物の屋根と、西側に広がる港を見渡せる。展望台へと至るエレベーターの上部はリバティスタイルのガラス張りロッジアになっているので、こちらもお見逃しなく。眼下の絶景を堪能したら、住宅地を通って、17世紀初頭からその姿をとどめる聖アンナ修道院へ。カルメル会修道士によるバロック様式の教会には、ジェノヴァとローマの画家による絵画の数々やバラ園などがあり、静謐な空気が漂う。併設されているクラシックな薬局の扉を開けると、そこには年代ものの処方書や器具、陶器、調度品、薬などが並び、おとぎ話の世界に迷い込んだかのよう。観光客にはあまり知られていない場所だが、歴史に包まれたこの空間は、訪れる者を日常から遠く離れた世界へと誘う。

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1 聖アンナ薬局の修道士 Genova Antica-Farmacia - Frate Ezio - Foto Sant'Anna.jpg
聖アンナ修道院に併設されている薬局は、ジェノヴァの中でもっとも権威のある歴史的な場所。Foto Sant'Anna

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海辺の遊歩道をそぞろ歩き、リゾート気分を満喫

丘の上のパノラマを堪能したら、翌日は海岸へ。市街地から少し離れたウォーターフロントのイタリア大通りではビーチ沿いに店が軒を連ね、市民に人気のスポットだ。特にカラフルな家々が立ち並ぶ東の港町、ボッカダッセはジェラテリアや魚料理専門店などが賑わいをみせている。さらに東へ進めば19世紀以来、人気のヴァカンス地であるネルヴィへと至る。このあたりはアニタ・ガリバルディ遊歩道やグロパッロ塔、歴史的なヴィラが立ち並ぶエリアで、優雅な雰囲気が漂う。海沿いの散歩道からはポルトフィーノ岬を一望でき、東リヴィエラへの玄関口にもなっている。

いっぽう西側のベイエリアはジェノヴァ出身の建築家、レンゾ・ピアノが手掛けた再開発地域で、ヨーロッパ最大の水族館やおしゃれなスポットが点在する。また歴史ある庭園やリグーリア考古学博物館のあるペルリのヴィラ・ドゥラッツォ・パラヴィチーニ公園もロマンチックスポットとして人気だ。

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カラフルな家が密集するボッカダッセの浜辺は、人々の憩いの場所。Foto A.Falcone ©Xedum

港町の風情を感じる迷路のような旧市街、世界遺産の絢爛豪華な邸宅群、丘の上のパノラマ、地元っ子で賑わうベイエリア。歴史と現代が交錯する多彩なジェノヴァの街で、時計の針をゆっくり巻き戻してみてはいかがだろう。

詳細・問い合わせはこちら:イタリア政府観光局ENIT