フォルクスワーゲンがどれだけEVに本気か、ID.4に乗るとよくわかる

  • 文:小川フミオ
  • 写真提供:Volkswagen
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フォルクスワーゲンのピュアEV「ID.4(アイディーフォー)」が、まもなく日本で発売される。2022年10月に横浜で、日独交流150周年およびドイツ統一の日を祝う行事が開催された際に、はじめて実車がお披露目された。

私は、9月にコペンハーゲンで、ID.4に試乗。SUVとハッチバックの中間的な、いわゆるクロスオーバーともいうべき車型で、最低地上高がすこし高くとってあり、山の中に別荘とか持っているひとなど重宝しそうだと思った。

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ボディの厚みが力強さを感じさせるデザイン

このクルマ、洗練されたデザインだ。2.77メートルと長いホイールベースを持つシャシーに、全長4.58メートルの4ドアハッチバックの組合せ。のびやか、と表現したいボディだ。

ゴルフをはじめ、日本でも発売されているVW車との関連を思わせるフロントマスクにはLEDライトがアクセントとして使われていて、一目でID.4と見分けがつくと思う。

ボディ面は抑揚がついていて、自動車デザイナー言うところの”セクションで見せる”デザインだ。前から後ろに横切りしていったときに、断面ごとにどんどん輪郭が変わっていく。

フロントのボンネットも、あえて左右のフェンダーあたりを盛り上げて、力強さを強調。ボディ中央部の下のほうはちょっとしぼって抑揚をつけている、というぐあい。

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最近のVW車に共通するデザインテーマで造型されたような灯火類

私が乗ったのは、77kWhの容量を持つバッテリー搭載モデル。リアに搭載されて後輪を駆動するモーターの出力は150kW。大きなバッテリーのおかげで、航続可能距離は最大537キロに達するという。

VWではMEBとよばれるEV専用プラットフォームを開発しており、特徴は車両によってバッテリーの容量が可変であることと、床面が真っ平らに出来ること。それによって、デザインのバリエーションを豊富に展開できる。

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床下にバッテリーが敷き詰められていてモーターはリアに搭載して後輪を駆動

コペンハーゲンの街中で乗ってみると、スムーズさが強く印象づけられた。加速、ハンドリングといってステアリグホイールを切ったときの車体の動き、乗り心地、どれをとっても、”やりすぎ”感がないいっぽう不足感もない。

気持ちよく加速し、減速も回生ブレーキを使えばアクセルペダルの動きだけで行える。一時期のEVのように、ことさら発進時のパワフルさを強調するような設定ではないので、街中で乗るのにもたいへんよさそう。

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威圧感を与えないのがID.4の魅力だろう

サスペンションシステムはよく動いて、石畳のうえでもショックが強く伝わるようなことはない。しかも静か。広い後席にいると、ややおおげさかもしれないけれど、リムジンのように快適だと感じられるほどだ。

VWではID.4をドイツの工場と米国の工場と、それに中国の工場で生産。ID.シリーズとして、コンパクトなID.3、220kWとパワフルなモデルも設定されているID.5、それにミニバンのID.BUZZなど、さまざまなモデルを展開する同社による、初の世界戦略車がID.4なのだという。

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左にあるのはすこしコンパクトなID.3

インテリアも、VWの常として上手に造型されている。私はいつも感心している。クリーンと表現したくなるような、シンプルさ。スイッチ類は極力目につかないようにして、ダッシュボードの素材感で質感を高めている。

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アッパーダッシュボードの質感とモニターとの組合せが新しい感覚

同時に、液晶モニターが2つ。中央にはインフォテイメントシステムを中心とした操作とともにナビゲーションシステムの画面が映るモニター。ドライバーの眼の前には計器盤がチェックできる、台形の小さめのモニター。変速機のシフターもそのモニターのケースと一体になっている。

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シフターのスイッチはメータークラスターにビルトインされている

新奇さがウリではない。斬新なようで、機能主義がきちんと守られている。モニター類の使い勝手はいいし、なにより、視界確保にはじまり、シートの座り心地からドアの開閉音にいたるまで、クルマの”キホン”がたいへんよく出来ていると私は感じた。そこはVW車の長所で、それがID.4にもちゃんとある。

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ヘッドレストレリント一体型のフロントシート(右)と空間的余裕のある後席

Specifications
Volkswagen ID.4
全長×全幅×全高 4584x1852x1612mm
電気モーター1基 後輪駆動
最高出力 150kW
最大トルク 310Nm
バッテリー容量 77kWh
航続可能距離 537km(WLTP)