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詩人・最果タヒの名品論。『普遍より最高でいて』

  • 文:最果タヒ (詩人)

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いつの時代も変わらず良いものが「名品」なのかなと思いながら、時代は変わるし私の好みも変わるし、普遍的などんなものでも合わせられる服が好きだったことなどそういえば一度もなくて、仕立てが綺麗なシャツだとかを親から譲ってもらっても結局着ないで、その瞬間に最大風速で大好きだった妙に凝った服ばかり着てしまう。普遍的とはいうけど、時代には一瞬たりとも「普遍的」なことなどなくて、常に流行があり人それぞれの好みがあり、私にだって変化が起きている。変わっていく私を全て受け止められる普遍性など欲しくはなくて、できることならずっと併走してほしいのだ。私は変わるが、変わっていく私の中で常に最高であってほしい。製品として見た目が固定され、時間が変わっても姿を変えることができない衣類にそんなことを望むのは酷だけれど、でもそういうものしか私は「名品」とは思えない気がした。私が変わるたびに改めて「好き」と思える服がいいよ。

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