【東京クルマ日記〜いっそこのままクルマれたい〜】 第160回“エンジニアリングは“ウルトラ”の領域へ、 “クール”の最高到達点を出したSUV”

  • 写真&文:青木雄介

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0-100㎞/hの加速はわずか4.2秒しかかからない。

BMWの公認エンジニアであるアルピナが手がけたフルサイズSUV「BMW アルピナ XB7」に乗った。そもそもアルピナの仕事というのは、音楽でいえば原曲の骨格を失わずにビートを変えたり、細部を構成しなおす「リミキサー」の仕事に似ている。XB7はその濃度を一気に高め、リミキサーの領域を超え、新曲をイチから構想するプロデューサーに近い領域まで到達している。

たとえるならば、いまをときめくカルヴィン・ハリス(DJ兼プロデューサー)ですよ。客演のボーカリストやラッパーの魅力を際立たせ、キャッチーなリフレインと音の奥行きまで考えたサウンドプロダクションの緻密さで演出。その磨き上げられたスムースでキャッチーな音はセレブリティが好む、“クール”の最高到達点と言えるはず(笑)。

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2本のエグゾーストエンドにリアエプロンの組み合わせがレーシー。

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BMWのX7シリーズのトップはこのXB7をおいて他はない。アルピナだけに許された開発は、このクルマの顔ともいえる「エンジンをいかにフィーチャーするか」に注力されているんだ。

アルピナはN63型と呼ばれる熟成されたエンジンに対して、さらに独自のレッスンをほどこしてパワフルな声量を引き出し、530馬力だったエンジンを621馬力にまで引き上げた。そもそもN63型エンジンはBMWの旗艦スポーツクーペの8シリーズから新型レンジローバーに至るまで“高級車ならなんでも来い”な万能型エンジン。

V8エンジンのパワーやトルクはそのままに、静かでなめらかに回るのが特徴的なのね。アルピナはそのエンジンをよりスムーズなエンジンに変貌させ、アクセルを踏み込めば直列6気筒エンジンのようにシルキーに回り、12気筒エンジンのようなオーラを纏った強力な加速を見せつける。

このエンジンは、もはや“ウルトラスムーズ”と呼びたいね(笑)。アルピナは過去にBMWのエンジンをいちから手作業で組み立てていたことで有名だけど、このクルマに乗るたびにその職人魂を彷彿するはず。エンジンを支える他のユニットも素晴らしい。陰の立役者はアルピナによって調律されたZF社製の8速オートマチックで、美声を指揮するコンダクターのようにアンサンブルを創り出す。ストロークの長い乗り心地も絶品。エンジンの特性に合わせ、直線ではのびやかに飛行するグライダーのような浮揚感があって、カーブでは自然で落ち着いた紳士的な姿勢を崩さない。

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赤茶色のウッドトリムがクラシカルな印象を醸し出す。青や緑のステッチなどアルピナらしさが各所に。

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2列目の独立したキャプテンシート。快適なスペースを実現している。

アルピナ特有のバランスや磨き込みも光る。静音処理は綿密だし、偏平タイヤに大径のホイールをはかせている割に不快な衝撃は感じられないのね。ステアリングはサーボトロニックで少ない舵角できびきび走るように調整されているんだけれど、通常走行では自然な舵角に戻る点にもアルピナらしさを感じる。中央の宝石をより美しく見せるために、台座のペンダントトップにこだわるどこまでも「アルピナフィーチャリング・V8ツインターボ」って感じなんだな。

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XB7は「速くて快適なSUV」という、難題を高次元でバランスするのに成功している。カルヴィン・ハリス同様に「こりゃモテますな」と膝を打つ、端正なフルサイズSUVなんだ。

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アルピナ固有のプロダクションプレートがセンターコンソールに映える。

BMW アルピナ XB7

サイズ(全長×全幅×全高):5165×2000×1830㎜
排気量:4394㏄
エンジン:V型8気筒ツインターボ
最高出力:621ps/5500~6500rpm
最大トルク:800Nm/2000~5000rpm
駆動方式:4WD(四輪駆動)
車両価格:¥25,280,000
問い合わせ先/アルピナ
TEL:0120-866-250
https://alpina.co.jp

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※この記事はPen 2022年11月号より再編集した記事です。