「ナイキやホカじゃない、意外すぎる“ハズし”のスニーカー」ー小さなこと、ディテール、細部ー

  • 文:池田尚輝

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先日、ある撮影で20歳のモデル・俳優の方にあった。早朝からの撮影、ロケバスの車内でふと彼の足元に目を取られ、ある違和感に気付いた。ナイキやホカ、アディダスのいくつかのモデルや、ドクターマーチンの靴であれば特に疑問もないのだが、その足元はスケッチャーズだった。まだファッションに無頓着な若々しい感じなのかな?と思ったが、否。むしろ完全にファッショニスタだった。聞いてみると、かなり高度な次元での彼なりのハズシのテクニックだったのだ。

ハズしとは意外性を狙う事なので、まったく間違いないのだが、人気ブランドDAIRIKUのパンツを履いたスラっとした体格の若者の足元に、そのスニーカーのチョイスは僕にとって意外過ぎた。

「ナイキやホカでハズす」を超え、マニアックなモデル選びや知る人ぞ知るグッドデザインを選ぶ、でもなく、ある意味で究極のダッドシューズに相当するスケッチャーズというチョイスは、かなり勇気と自信のいる選択。

そんな高度な選択の網をくぐり抜けまっての敢えてのスケッチャーズに恐れ入ったのです。

若干二十歳とは、痺れました。

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翌日はコモリの展示会にお邪魔した。

この日は来春夏の展示会だったが、2度目の訪問で、既に全容は把握していたつもり。しかしやはり見落としがあるもので、その日、目に付いたのはサープラスTと名付けられた素っ気ない白と紺のポケット付きTシャツ。生地がほかのコモリのTシャツに比べて薄め。説明によると、米軍で採用されているアメリカ製のアンダーウエアの粗野な大量生産品の雰囲気を目指し、元よりはやや良い材質の綿で作ったという。

元ネタなっている米軍のTシャツは僕自身愛用しているが、微妙な透け具合があり、シャツやブルゾンのインナーとして使うと、独特な逞しさが出てなにかと重宝する。米軍の大量生産品を日本の1ブランドが再現するのは、どう考えても簡単ではない。それが一定規模の商売になるならまだ挑戦の意味もわかるが、今回の再現はどう考えてもマニアックだ。実は3年程前から展示会に出品されているそうだが、僕は今回初めてその存在に気が付いた。デザイナーの小森さんの話によると、このTシャツへの反応はまだまだ高くはないそうである。しかし、こんな手の掛かる素っ気なさを追求する姿勢に、コモリの魅力の一端を垣間見るのである。

ファッションの芽は、こんな感じで小さく咲いている事を再認識した最近の出来事でした。

池田尚輝

ファッションスタイリスト

Penでも度々スタイリングを手がけ、メンズファッションを主軸に幅広い分野をカバーしながら2000年よりフリーランスで活動を続けるスタイリスト。'05-'06はNYCに滞在し見聞を拡げた。ファッションに限らず、アート、工芸、建築も大好き。アウトドアとDIYにも足を突っ込む。

池田尚輝

ファッションスタイリスト

Penでも度々スタイリングを手がけ、メンズファッションを主軸に幅広い分野をカバーしながら2000年よりフリーランスで活動を続けるスタイリスト。'05-'06はNYCに滞在し見聞を拡げた。ファッションに限らず、アート、工芸、建築も大好き。アウトドアとDIYにも足を突っ込む。