いまもっとも注目したいミニバンが、フォルクスワーゲンが欧州で発売したばかりの「ID.BUZZ」(アイディーバズ)だ。2022年8月おわりにコペンハーゲンで試乗会が開かれ、私も北欧を走る機会を得た。余裕あるサイズの車体だけれど、ピュアEVなので気持ちよく走る。
![DSC01631_VW Media Drive 2022_photo_isp-grube.de_のコピー.jpg](/uploads/de261979b522a548aa55ebddec38fefd9a3f5e0d.jpg)
Photography Wolfgang Grube
ID.BUZZとはなにか。名前を分解すると、メーカーのコンセプトがわかる。ID.とはフォルクスワーゲンが自社のピュアEVシリーズに与えたサブブランド名。これまでにID.3、ID.4、ID.5といったモデルが登場している。
BUZZは、読者のかたならご存知のように。”バズってる”のバズ(瞬間的に情報が拡散されるなどの意、だと思います)と、バスをかけたもの。ベースになっているアイディアは、1950年に発表され、60年代の北米西海岸ではヒッピーたちに愛されるなど、グローバルな人気を獲得したVWの(マイクロ)バスのニュアンスのそのなかに入っている(はず)。
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![DSC00949_VW Media Drive 2022_photo_isp-grube.de_のコピー.jpg](/uploads/cd9f1dfdfe860199daa0f3bb0456b0a53d608e8b.jpg)
Photography Wolfgang Grube
8月も終わるというのに、陽光さんさん、日中の気温が30度Cを超えるコペンハーゲンの試乗会会場では、ドイツからやってきたフォルクスワーゲン商用車部門(ID.BUZZは商用車部門が開発した)の面々が「ブッリ」と呼んでいた。
ブッリ Bulliはマイクロバス busと、ドイツ語でデリバリーバンを意味するリーファーワーゲン lieferwagenによる合成語だとか。VWしか使わない。ただし、モデルチェンジを6回経ても、ブッリの名は生き残り、ID.BUZZも会場において、「ブッリ」「ブッリ」と、なんだか和むような響きで呼ばれ続けていた。
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![DB2022AU00424_mediumのコピー.jpg](/uploads/df4285dd40e59a4087b5bd7a44a1421702f7c777.jpg)
フォルクスワーゲンがID.BUZZを開発した背景には、商用車としてのセールスへの期待がある。ボディサイズは全長4712ミリ、全高1938ミリ、全幅1985ミリで、「ID.BUZZカーゴ」と呼ばれる、いわゆるパネルバン仕様(リアウィンドウがない)には、ユーロパレットと呼ばれる、欧州で使う物流用木製パレットが2枚おさまる。
商用車を電気で走らせるのは、カーボンニュートラルへの積極的な取り組みを表明しているフォルクスワーゲンの企業姿勢ゆえ。というか、商用車もゼロエミッション化が不可避になると見たVWが、市場で先手を打った結果がID.BUZZなのだ。
「他の自動車メーカーは、“ID. Buzz”のような電気自動車のMPV(多目的バン)やバンを製品ラインナップに揃えていません」。商用車部門の最高責任者を務めるVWのカーステン・イントラ氏のコメントだ。EV化された商用バンの投入で、市場では先行車利益を見込んでいるようだ。
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![DSC01542_VW Media Drive 2022_photo_isp-grube.de_のコピー.jpg](/uploads/69410868c624d2e6b013facef92b9922b0325fd6.jpg)
はたして、画像で事前に見ていたとおり、ID.BUZZの実車はキュート、という印象が強かった。ブライトイエローとホワイト、オレンジとホワイト、インディゴブルーのような青とホワイトといったように、車体の塗り分けも目を惹く。
2トーンの車体色は、タイプ2(タイプ1はVWビートル)とも呼ばれた初代ブッリでも採用されていたもの。「もちろんデザインの細部は違うので、それに合わせた専用のカラーリングですが」。私が会場で話を聞いたマーケティング部門のマルクス・シルドマン氏は、そう語るのだった。
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![DB2022AU00164_mediumのコピー.jpg](/uploads/39fdafb1c2f66ed89f81abbe5d6b3d0d70e0ecc5.jpg)
もうひとつ、デザインの魅力は、インテリア。タブレットが2枚差し込まれたようなダッシュボードは、基本的にクリーンで、それによって、外装と同様の2色を基本とした塗り分けが目立つ。
レモンイエローとホワイト、オレンジとホワイト、ジーンズのようなブルーとホワイトといったように、シート表皮は2トーンで構成されている。「ドアを開けたとたんに楽しい気分になってほしい」と前出のシルドマン氏が言うとおりの効果がある。
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![DB2022AU00165_mediumのコピー.jpg](/uploads/b97fdf507b1c4c08daa66b838d46f37111d7576f.jpg)
スペースも余裕がある。前後にスライドする後席は、レッグルームもヘッドルームもたっぷり。前席は速度が上がると風がルーフを叩く音が大きく聞こえてくる傾向にあるけれど、後席はさらに静かに感じられる。77kWhと比較的大型のバッテリー搭載のため、車体が重くなり、結果、乗り心地がいい。
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![DB2022AU00388_mediumのコピー.jpg](/uploads/0145ec7551ba782a6dd76636e0a36b342ffbc2c8.jpg)
走りは、ばかっ速いというほどではないものの、2.4トンの車体におとな4人乗車でも十分な力を感じさせる。走り出しからモタモタ感はないので、電気モーターは、マイクロバスとも相性がいいのだなとわかった。
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![DB2022AU00400_mediumのコピー.jpg](/uploads/a28af6f1da6bd956f445ba0ddd11e20a5a33d3d7.jpg)
私が走ったのはコペンハーゲンから、海峡にかけられた橋を通ってスウェーデンのマルメ郊外まで。80キロほどだったと思うけれど、快適なドライブだったので、あっというまに到着した。
コペンハーゲンもマルメも、EVの多い街だ。街にいると、BMWやメルセデス・ベンツやボルボ、ポールスターといったメーカーのEVがひっきりなしに走り、テスラも人気が高いようだ。量産EVがほとんど見られる。VWのID.3はコペンハーゲンでタクシーに使われているぐらいだ。
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![A01I7368_VW Media Drive 2022_photo_isp-grube.de_のコピー.jpg](/uploads/35a2cace08feb7f0aa36b9eda3056b3ccaddbe98.jpg)
Photography Wolfgang Grube
私がID.BUZZを走らせていると、多くのひとがびっくりしたような顔をし、つぎの瞬間、笑顔になる。これがあのID.BUZZね、というかんじだ。燃費についての質問もよく受けた。
北欧にいると、EVが生活に溶け込んでいるのを実感する。コペンハーゲンでは街角に充電器があるし、そういえば今回の試乗ではないけれど、ドイツのアウトバーンのパーキングアリアにも高速充電器が並んでいた。
日本でもタイプ2の人気がそれなりに高いのは、デザインもさることながら、コンパクトな外寸に対して広い室内というパッケージングが評価されているからだろう。
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![DB2022AU00441_mediumのコピー.jpg](/uploads/b660d0d2280a9b3029d59d5a5cfe463e60a5f44f.jpg)
ID.BUZZは、先述したとおり、あまりコンパクトではない。しかしそのぶんスペースに余裕がある。「形態は機能に従う、という原則を貫いてきた」と公言するフォルクスワーゲン。
ポロやゴルフやパサートでわかるように、VWは効率のよいパッケージングを作るのがうまい。ID.BUZZは、日本にいながら、日本製とはひと味ちがうミニバンを求めている層に、確実にウケそうだ。
あいにく、日本にすぐ輸入されるわけではない、とVWの担当者は言っていた。導入は検討中とのことで、前評判が高くなれば、導入の実現可能性も高くなるとか。
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![DB2022AU00450_mediumのコピー.jpg](/uploads/e19160d38dd52500096d3709688f4e050635fd0d.jpg)
Volkswagen ID.BUZZ
全長×全幅×全高 4712x1985x1938mm
電気モーター リア1基 後輪駆動
出力 150kW
トルク 310Nm
バッテリー容量 77kWh
航続距離 425km