「地面が赤く光る...」 歩きスマホ対策の信号機が登場 

  • 文:青葉やまと
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Renata Angerami-istock

歩きスマホが問題となっている現代社会に対応すべく、新たなタイプの歩行者用信号機が登場した。

歩行中にスマホに熱中する「歩きスマホ」は昨今、安全上の大きな問題となっている。前方への注意が足りずに他人と衝突する危険があるほか、信号を確認せずに横断歩道へ踏み出すおそれもあるなど、人命に関わる事故を引き起こしかねない。

本来は路上でスマホを使わないよう周知すべきだが、現実問題として、いくら注意を促してもスマホに集中する人々は絶えない。そこで香港の交通当局は、うつむいていても目に入りやすい新たな信号機を考案した。

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うつむくスマホ利用者のため、地面を光らせる

新たな信号機は、通常の歩行者用信号の現示に加え、LEDライトの光を上部から歩道に向けて投影する。歩道の端が赤に染め上げられ、下を向いて歩いている人でも赤信号に気づきやすいしくみだ。

また、照射箇所を越えて横断歩道へ踏み出そうとすると、体がこの赤い光を受けることになるため、違和感に気づきやすい。時間帯に応じて光量を増やし、日中でも視認可能だという。

香港の4カ所でテスト導入されており、6ヶ月をかけて有効性を評価する。安全性向上の効果が認められれば、今後さらに設置箇所を増やす予定だ。

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「確かに注意を引く」が……反応さまざま

香港交通局のチーフエンジニアであるアレックス・アウ氏は、ブルームバーグに対し、「スマートフォンの人気が高まるにつれ、一部の歩行者たちは注意散漫になっています」と指摘する。従来式の信号を確認するのが本来の姿だが、こうした注意不足の歩行者が絶えないことから、追加の確認手段を用意したという。

市民の反応はまちまちだ。科学ニュースサイトのZMEサイエンスは、世界のほかの都市に展開する可能性もあるとみている。自動車事故による死亡件数は香港で10万人あたり0.74人だが、例えばニューヨークではこのほぼ倍の割合となっている。香港よりもさらに効果を発揮しやすい都市がありそうだ。

一方、ブルームバーグによると、コーズウェイベイ(銅鑼湾)の試験導入地点でスマホを使いながら横断しようとしていたある年配の女性は、新たな信号機が確かに注意を引いたと語った。しかしこの女性は、すぐに人々は慣れ、また注意を払わなくなるのではないかと懐疑的だ。

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香港だけでない歩きスマホ問題

歩きスマホが課題となっているのは、香港だけではないようだ。ドイツでも以前、似た試みが実施されている。

ドイツ国営放送のドイチェ・ヴェレ2016年、路面電車の停留所の縁石に警告用のライトが設置されたと報じている。こちらは照射型ではなく、LEDを埋め込んだものだ。列車が近づくとLEDが赤く点滅し、下を向いている歩行者たちに警告を発する。

ドイツ交通調査会社のデクラ社によると、歩行者の17%が歩行中にスマホを操作しているという。ミュンヘンではLEDライトの導入前、15歳少女がヘッドフォンをしてスマホを触りながら車道に踏み出し、路面電車にひかれて亡くなる痛ましい事故が起きていた。

このほか英テレグラフ紙は、クロアチア、オーストリア、中国本土などでも同様の歩きスマホ対策の信号機が導入されていると報じている。

しくみとしては単純であり、法制度上の問題がなければ日本での導入も難しくはなさそうだ。歩行者が周囲に注意を払うことが第一だが、新たな信号機は、それでもスマホに熱中してしまう歩行者への最後の砦となるだろうか。

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【動画】「地面が赤く光る...」 歩きスマホ対策の信号機が登場 

Tyler A-YouTube

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