池田エライザと田口トモロヲが、関西の名建築を巡り、絶品ランチに舌鼓を打つーー。

作家・甲斐みのりの「歩いて、食べる 東京のおいしい名建築さんぽ」（エクスナレッジ刊）を原案に、“建築×グルメ”をテーマにしたドラマ「名建築で昼食を」（2020年8月）。続編となる「名建築で昼食を 大阪編」が2022年8月から放送中だ。

本記事では、作中で二人が訪れた名建築を、多数の写真をともに紹介していく。今回は、大阪府大阪市にある綿業会館。

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#1 綿業会館

綿業会館は、昭和6年（1931年）に日本綿業倶楽部の建物として竣工、翌年の1月1日に開館した。設計は渡辺節。東洋紡績株式会社（現東洋紡株式会社）の元専務取締役・岡常夫氏の遺贈金100万円と綿業関係者の寄付50万円を使って建てられた。諸説あるが、現在の金額にすると50億円以上と言われている。

玄関ホールは12世紀イタリアルネッサンス調でまとめられている。

開館当初より繊維業界の発展と懇親を目的としていた会員制の社交倶楽部として続いている。昭和初期、日本は紡績業でイギリスを抑え、綿製品輸出世界一となった。その中心が大阪で、『東洋のマンチェスター』と謳われるほどの世界的中心地だった。現在の綿業会館は、繊維産業以外の業種にも幅広く門戸を開放している。

談話室は17世紀イギリスルネッサンス初期のジャコビアン・スタイル。吹き抜けの天井や階段などが特徴的だ。壁面には、かつて京都・東山にあった泰山製陶所で焼かれたタイルタペストリー約1000枚が使用されており、渡辺節が自らの手で仕上げたという。

空襲にも見舞われたが、館内はカーテン１枚に軽微な焦げ跡を残しただけで済んだ。大正12年の関東大震災の後に建てられたこともあり、窓には当時最新のフランス製のワイヤー入り耐火ガラスを使用するなど、設計者たちの防災意識の高さが綿業会館を守った。

特別室は「貴賓室」とも呼ばれている。窓や壁が直線的なのに対して、天井・家具などの曲線がうまく組み合わされている。クイーン・アン・スタイルという、イギリスのアン女王の時代に流行した装飾様式だ。

会議室は、通称「鏡の間」。19世紀のナポレオンの帝政時代にフランスで流行した建築様式、アンピール・スタイルで、天井、壁、窓の装飾を抑えたデザインが特徴。

各部屋のスタイルを変えたのは、世界各国の来賓や会員の好みに応じて好きな部屋を選んでもらいたいという設計者の配慮だという。

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写真提供：テレビ大阪