「なぜこんなものを!」中国プラネタリウムの間違い、8歳少年が見抜く

  • 文:青葉やまと

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あまりに不正確なビデオにヤン君は腹を立てた...... scpm.com-twitter

<プラネタリウムを訪れた8歳の少年が、大人たちも見過ごしていた間違いを次々と見抜いた>

中国の宇宙ファンの少年が、プラネタリウムの映像資料について大人顔負けの指摘を行った。プラネタリウム側はこれを受け、可能な限り早急に修正すると申し出ている。香港のサウスチャイナ・モーニングポスト紙(SCMP)が報じた。

「事件」が起きたのは、中国・チベット自治区にあるプラネタリウムだ。中国の宇宙開発計画の歴史を説明する映像資料のなかに、多くの初歩的な誤りが含まれていたという。同館を訪れた8歳の男の子のヤン・ホンセン君が、これを目ざとく指摘した。

ヤン君は父親に連れられ、7月16日に問題のプラネタリウムを訪れた。このときドキュメンタリー映像のなかに誤りが多いことに憤慨し、「なんてものを上映してるんだ!」「どうして長征5号と字幕をつけたんだ? これは長征3号だ!」など、続々と修正点を指摘した。

あまりに不正確なビデオにヤン君は腹を立て、最終的にはプラネタリウムを飛び出してしまったという。SCMP紙は、この様子を収めた動画が中国のソーシャルメディアで話題になっていると報じている。

動画の拡散を受けてプラネタリウム側は、映像に関するフィードバックを踏まえ、できる限り早い段階で誤りを修正するとのコメントを発表した。また、少年の指摘に感謝しているとも付け加えている。

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本職の天文学者も感服「後継者がみつかった」

プラネタリウムの職員たちでさえ見過ごしていた問題を、ヤン君はいとも簡単に指摘した。わずか8歳で数々の間違いを見抜いた少年の知識に、SCMP紙のある読者は感服し、次のようにコメントしている。

「子供たちの好奇心と才能を育むことは、両親にとって難しいものです。多くの場合私たちは、かえって潜在能力を削ぐ方向へと導いてしまうのです。この子の親たちはよくやりました! 素晴らしいこの子も称えたいです。この子が私の孫だったらいいのに」

知識豊富な少年は、本職の天文学者の興味も引いたようだ。ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのジョナサン・マクダウェル博士(天文物理学)は、このニュースをシェアしたツイートに反応し、「ああよかった、後継者がみつかった......」と投稿している。

ニュースはインターネット掲示板のレディットでも共有され、少年の才能に驚く声が相次いだ。「未来の宇宙開発の責任者だ!」との書き込みや、「若くしてすごく賢い」などの書き込みが寄せられている。

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オンラインで講座を開くほどの博識ぶり

父親によると、ヤン君は4歳の頃から宇宙科学に興味を示すようになり、これまで段ボールで自らロケットの模型をつくってきたという。ときには同じ愛好家に向け、オンラインでレクチャーを開催するほどの博識ぶりだ。

SCMP紙に対して父親は、ヤン君が興味をもてる分野を探すため、さまざまなフィールドを試したと語っている。鉱石の採掘や鉄道の見学などを試した末に、あるとき内モンゴル自治区の酒泉衛星発射センターで行われた衛星の打ち上げに連れて行ったところ、大変な興味を示した。

これをきっかけに、天文などの領域に熱中するようになったとのことだ。特定の習い事を押し付けるのではなく、本人が打ち込めるテーマを根気強く一緒に探し続けた親のスタンスも、ヤン君が才能を開花させることができた重要な要因となっているようだ。

現在ヤン君は、物理、科学、プログラミングなど、天文だけでなく関連領域にも興味を広げているという。少し怒りっぽい多才な少年は、将来どんな専門家として大成するのだろうか。今から楽しみだ。

青葉やまと

フリーライター・翻訳者。都内大手メーカー系システム会社での勤務を経て、2010年に文筆業に転身。文化・テクノロジー分野を中心に、複数のメディアで執筆中。本業の傍ら海外で開かれるカンファレンスの運営にも携わっている。

※この記事はニューズウィーク日本版からの転載記事です。

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