【斬新】ポールスターが手がけるオープンスポーツに、自撮り用のドローンが組み込まれてしまう

  • 文:小川フミオ
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クルマにはさまざまな楽しみかたがある。いまさら言うまでもないことだけれど。ドライブをはじめ、誰かを誘うこと、購入すること、うっとりと車体を眺めること、見せびらかすこと……。スウェーデンの「ポールスター Polestar」が提案するのは、なんと”撮る”ことだ。

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スウェーデンのスポーティEV専門メーカー、ポールスターはボルボと密接な関係を保ってきた

「ポールスターO2(オーツー)」は、新世代のスポーツカーのコンセプトモデルとして、2022年に発表された。このクルマ、自撮り用ドローンをそなえているのだ。

車名に”酸素”とつけただけあって、空気をからだ中に浴びられるようなフルオープンのボディ。デザインはエレガントでありつつパワフル。リアファンダーが力強く張り出しているのが特徴的だ。

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走行中でもドローンは飛び立てるという

「オープン走行と、BEV(バッテリー駆動のピュアEV)ならではの操縦性のふたつを味わってもらうために企画したモデルです」

ポールスターが用意した報道用資料には、同社のヘッドオブデザイン(デザインのトップ)を務めるマキシミリアン・ミッソーニ氏の言葉が紹介されている。

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電動格納式ハードトップにはガラスが大きくはめこまれている

O2は、高い剛性とともに、しなやかな操縦性をもたらす、構造用接着剤を使ったアルミニウムのシャシーを持つ。「楽しくて、軽快で、とばせる」と、そのメリットをポールスターでは強調。

いまや自動車界の常識になりつつある構造用接着剤の技術は、ポールスターにとって、すでに英国にある同社の開発部門で経験を積んできているものという。たとえばロータスのように、英国では構造用接着剤を乗用車にも使う技術では、けっこう長い歴史を持っているのだ。

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タイヤの存在感が大きなプロファイル(側面からの眺め)

ポールスターは、スウェーデン西海岸ヨーテボリに本社を置く。ちょっと詳しい読者のかたなら、ヨーテボリと聞けば、ボルボとハッセルブラッドのビジネスの本拠地と、すぐ思いつくかもしれない。

ポールスターもここで、ボルボのチューンナップを手がける会社として活動してきた。レース活動で名声を確立し、サスペンションパーツを中心にボルボ車向けのチューンナップ(走行性能を高める)パーツを販売。ポールスターチューニングの限定モデルは、販売すればすぐ売り切れ。これまでボルボ車と深い関係を保ってきた。

いまのポールスターはスポーツBEVの専門メーカーとして、ボルボとは別会社(オーナー企業はおなじ)。ボルボがまだディーゼルエンジンなどを手がけていた2017年にいち早く、スポーティな電動車専門メーカーへと転身した。

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ハードトップを上げた状態もスタイリッシュ

スウェーデンをはじめ北欧の都市部では、得意げな顔をしてポールスター車を乗り回しているオーナーの姿を目にすることも少なくない。ボルボ車とは一線を画しているし、もちろんドイツ車でもない。

ポールスターのプロダクトは、今回の02でもわかるように、パキッと折り目のついたようなクリスピーなボディのラインと、見た目あまり複雑な面構成でないクリーンなボディパネルの組合せ。それが魅力的だ。

SUV全盛の世のなかにあっても、クーペライク(クーペ的)なスタイルや、オープンモデルにこだわっているように見えるのも、好ましいではないか。

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アグレッシブさとエレガンスを両立させたデザイン

性能的にも図抜けていた。2019年に発表されたハイブリッド2ドアクーペ「ポールスター1」は、609馬力の最高出力と1000Nmの最大トルクを発揮。モーターだけで124キロの航続距離を達成という性能ぶりは、私たちを驚かせた。

O2は、ポールスターが次世代へと進むためのコンセプトを盛り込まれたモデルとして、提案されている。

「O2は、テクノロジーとアート、精密機械と彫刻がクロスして出来上がったともいえるものです。(スポーツカーとしての)存在感はしっかり持っていますが、アグレッシブではないデザインです」

前出のヘッドオブデザイン、ミッソーニ氏は上記のように説明してくれる。

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クルマ周囲のセンシングもつねに行う安全システムも組み込まれるだろう

O2は、ファン(楽しさ)を追求しているモデルといえるだろう。ドライブにおけるファンは、構造用接着剤を用いた、軽量でかつ高剛性のアルミニウム製シャシー(ポールスター5からの流用)を持つ。

モーターを含めたパワートレインについては未発表だが、22年6月に発表された「ポールスター5」を参考にすると、モーターは前後2基で、最高出力は650kW(884ps)で、最大トルクは900Nmだ。

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飛び立ったドローンが走行中のクルマを撮影してくれる

いままでなかった楽しさが、さらにある。走りのよさに加えて、冒頭で触れたドローンだ。なにより斬新なのは、車体に組み込まれていて、必要なときに飛び立つという。

自分の走っている姿を撮影したいひとのために開発している技術で、ポールスターは、「ソーシャルメディアがどんどん台頭している時代に向けて」と開発背景を説明している。

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クルマを上から眺めるため大きなグラスルーフが組み込まれている

O2のドローンは、走行中に飛び立ち、上からO2の走行シーンを撮影。そしてまた自動でクルマに戻ってくるのだそう。時速90キロまでドローンは飛び立てるという。

2プラス2のリアシートに、ドローンが飛び立つときのために負圧を作る仕組みを採用。走行中でも風の抵抗を受けずに、車体から離れることができるんだそう。

上空から撮影された映像は、車両にすぐ転送。乗員はドライブする自分たちの姿を、車載インフォテイメントシステムのモニターで楽しめるというのがコンセプトだ。

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直線を使うことで緊張感を出すデザインコンセプトはインテリアにも採用されている

あいにく現時点でドローンがどんな形で、また、どんなふうに車体に組み込まれているのか、クローズアップでは見られない。そこは残念だけれど、デザインとハイテクを大きな特長とするポールスターのこと、どんなドローンが組み込まれるか、楽しみにしようではないか。