【Intensity. Driven.】アストンマーティンである理由Vol.1 「特徴的なウイングエンブレムに込められた思い」

  • 文:サトータケシ
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ウィングの変更は2003 年以来。このような変更は、109 年の歴史の中でわずか11 回しかない。

アストンマーティンの姿勢を象徴する、ウイングエンブレム

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従来のエンブレムからの変更点は、「ASTON MARTIN」の文字を取り囲む半円が廃止されたことと、羽根を構成するラインが太くなったこと。

創業から109年、ブリティッシュ・サラブレッドの称号をほしいままにする名門アストンマーティンであるけれど、意外なことに現在の顧客の60%は新規だという。伝統を重んじながらも、ラグジュアリーSUVのDBX、ハイブリッド・スーパーカーのヴァルハラ、ハイパーカーのヴァルキリなど、新しい時代にふさわしい革新的なモデルを次々と発表しているのが、現代のセレブリティを惹きつける理由だろう。

このブランドのチャレンジングな姿勢は、19年振りに刷新された新しいエンブレムにも表れている。アストンマーティンのデザイナー陣とともにこのプロジェクトに取り組んだのは、英国グラフィックデザイン界の巨匠、ピーター・サヴィル。ジョイ・ディヴィジョンやニュー・オーダーのアルバムジャケットでその名を知られるようになったサヴィルは、いまやイギリスのカルチャーの一部といっても過言ではない存在だ。

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アストンマーティンのエンブレムの変遷。モチーフとなったのは鳥の羽根ではなく、古代エジプトで太陽神として崇められた甲虫、スカラベの羽根だ。

ピーター・サヴィルを中心にリニューアルされたエンブレムは、曲線を廃し、羽根を構成するラインを太くしたことで、ソリッドでモダンなデザインとなった。結果、未来に向けて力強く羽ばたくような印象を与える。

一方、このデザインを立体化したのは、バーミンガムの著名なジュエリー職人たちだった。つまり、最先端のポップカルチャーとクラフツマンシップのコラボレーションで、伝統と革新を融合するというアストンマーティンの世界観を表現しているのだ。

第二次大戦前の自動車黎明期における圧巻のレース活動、ルマン24時間レースでの総合優勝など輝かしい戦績を残した1950年代の黄金期。アストンマーティンには誰もが羨む歴史がある一方で、常に革新に挑み、未来を志向してきた。新しいエンブレムは、こうしたアストンマーティンの姿勢を象徴しているのだ。

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新エンブレムの発表を記念して、203年の歴史を持つバーミンガムの銀細工会社Vaughtonsで、製作プロセスの舞台裏を公開した。

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Vaughtonsは、1908年のロンドン・オリンピックで授与されたメダルの製作したことで知られる。モータースポーツは、もともとは貴族の趣味であり、サーキットは紳士淑女の社交場だった。したがって、アストンマーティンがパフォーマンスとともにラグジュアリーにもこだわりを持っているのは当然なのだ。