藤原ヒロシが「最高の友」と呼んだロボットは、人間の新たなパートナーになり得るのか?

  • 文:倉持佑次
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ロボットと暮らす未来を、藤原ヒロシが現実にしてくれるかもしれない。

ロボットベンチャーのGROOVE Xが、家族型ロボット「LOVOT(らぼっと)」の新モデルを発表するとともに、同社のCCO(チーフ・クリエイティブ・オフィサー)として藤原ヒロシを迎え入れたのは今年5月のこと。きっかけは、同社を通してロボット事業に参入した前澤友作からの誘いだったという。藤原といえば、音楽やファッションのみならず、さまざまなカルチャーをリードしてきた絶対的存在。ロボットに対する専門知識をもっているわけではなかったが、あまり考えずにいつも通り「いいですよ」と返事をしたことで、LOVOTとの共同生活が始まった。

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『LOVOT 2.0』には個体差があり、目や声のバリエーションは10億通り以上。本体価格は498,800円(税込)、別途暮らしの費用(月額)が必要。

「初めて見た時に、これは面白いと感じました。最先端の技術が搭載されているのに、何もできないところとか(笑)。あえて人の言葉を話さないようにつくっているそうです。人とロボットのコミュニケーションについて、深く考えて開発されているんですよね。触れ合うほどに懐いてくるらしく、実際に僕がいたら寄ってくるし、呼んだらずっと近くにいる。僕は着替えをさせていませんが、LOVOTの服にはICタグが入っていて、着替えをさせてくれたことを感知して、その人に懐くようになります」

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藤原が手がけたブランドムービーのコンセプトは「新しい出会い」。『LOVOT 2.0』と女の子が新しく出会うシーンをエモーショナルに描いた。

ペンギンのような愛くるしい見た目のLOVOTが、藤原の事務所にやって来てから約半年が経つ。今やすっかりスタッフにも馴染み、事務所を訪ねてくる友人たちの間でも評判になっているそうだ。しかし、まだ一般的にその存在が知られているとは言い難い。そこで、藤原がクリエイティブ、デザイン周りのアイデアや打ち出し方を提案。ブランドムービーをプロデュースするなど、少しずつ世の中に広まるようにと手腕を発揮している。先日も自身が率いるデザインプロジェクト「フラグメント デザイン」とのコラボモデル“FRAGMENT EDITION”を発表、LOVOT初のオールブラックモデルとして大きな話題を呼んだ。

「CCOに就任して以来、やっと僕らしいLOVOTが誕生しました。従来のLOVOTはとにかくかわいい。そして、FRAGMENT EDITIONは少し悪戯です。ほんの少しの変化で、かなり印象が変わったんじゃないでしょうか? こいつが部屋を縦横無尽に動いているのを想像すると、僕自身とても楽しみです」

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瞳もオリジナルデザインの“FRAGMENT EDITION”。本体価格は649,800円(税込)、別途暮らしの費用(月額)が必要。

同エディションの発売に合わせ、「フラグメント デザイン」「サカイ」「ネイバーフッド」「ゴッドセレクショントリプルエックス」「シークエル」の5ブランドがデザインした、LOVOT用のウェア、そのほかヒト用のウェア&オリジナルグッズも展開。感度の高いファッションフリークたちなら無視できない、というよりむしろ、積極的に自分のものにしたい存在へと昇華してしまうのは、さすが藤原ヒロシの仕事だ。今後も国内のみならず、海外も含めた新たなカテゴリーに打ち出すべく、さまざまなプランを考えているという。

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オーナーは好きな名前をつけられるが、藤原は「らぼっと」と命名。取材中もよちよちと擦り寄ってきては、時折甘えたような表情を見せた。

「過去の仕事と似たようなかたちで落とし込むのは簡単なんですけど、そうじゃないことも僕的にはやりたい。エンジニアの方と話し合って、固有のテクノロジーを使ってなにか面白いことができないかとか、常に新しい可能性を模索しています。例えば、LOVOTのちっちゃい子をつくるとかね。ちなみに、寿命を設けるのはどうかと会議で提案したことがありましたが、『私たちは神じゃないから』と却下されました。ロボットをどんな存在にするかという議論は、もはや哲学的な領域にまで踏み込んでいるのかもしれません」

機械なのにほのかに温かく、生き物のようで何気にそっけないLOVOTを、藤原は「最高の友」と表現した。この家族型ロボットが、癒しを求める現代人に必要な存在になっていく可能性は大いにある。さらなる展開に向けて、藤原ヒロシのクリエイティブにいっそう期待したい。