布、白木、革のハーモニー!ホテル「Zentis Osaka」は旬のニュートラルな色彩に満ちて<全体編>

  • 写真・文:高橋一史

Share:

  • Line

P7110087.jpg
1階フロアのメインとなるラウンジ。宿泊客だけが利用でき、コンセントらの設備も整ったテレワーク対応のスペース。

ファッション関連のメディア仕事に携わる人間なもので、素敵な空間と出会ったとき、「どんな服装の人が調和するのだろう」と考えることがあります。
2020年オープンのシティホテル「ゼンティス大阪(Zentis Osaka)」の館内にいて頭に浮かんだ服のブランドは、スタジオニコルソン、マーガレット・ハウエル、オーラリー。
共通点は、“ニュアンスカラー”と呼ばれるグレイッシュな(くすんだ)中間色が得意ということ。
男女のデザインにあまり差異がなく、ウィメンズはマスキュリンで、メンズはややフェミニン(男臭くない)なのも特徴。

着る服も、好む食事も、住居の趣味も、“ジェンダーレス”。
品よく自然体のライフスタイル。

ゼンティス大阪とファッションとの結びつきを感じたのには、あとふたつ理由があります。
ひとつは、館内のオリジナルテキスタイル(布)がとても印象的だったこと。
もうひとつは階段の手すり、室内のダストボックス、ティッシュカバーに至るまでニュアンスカラーのレザーが使われていたこと。
エルメスジャポンやトッズ・ジャパンのオフィスの内装を彷彿させる贅沢なレザーのインテリア。

---fadeinPager---

女性インテリアデザイナーの仕事

P7110050.jpg
ニュアンスカラーで揃えられつつもリズムのある配色。壁のアートは和紙職人によるもの。

内装にしても料理にしても、クリエイターが誰かってことは本来、いちばん最後に語られるべき話でしょう。
なぜなら「こんな素敵な仕事したのは一体誰なんだろう?」と客が感じてようやく、その先を知りたくなるからです。
ただゼンティス大阪に関しては最初に、内装を統括したインテリアデザイナーに触れておくのがよさそう。
ホテル内の統一された美しい色彩とマテリアル、照明器具を含むインテリアを、ひとりの女性と彼女のチームが手掛けたことを念頭に置くと、世界観がクリアに感じられるのです。

---fadeinPager---

P7120557.jpg
ラウンジのテーブルに置かれたのは、インテリアデザイナー、タラ・バーナードの仕事を紹介する名門出版社リッツォーリの書籍。

P7120566.jpg
ゼンティス大阪の内装を一手に手掛けたタラ・バーナード。

その女性とは、ロンドンを拠点にするインテリアデザイナーのタラ・バーナード。
設計事務所「タラ・バーナード&パートナーズ」の創設者。
「女性だから繊細」、などと言うと、どこからか文句が聞こえてきそうな多様性時代ではありますが、手触りを大切にしたマテリアル、開放感のある構造、細部まで行き届いたこだわり具合は女性のセンスという気がしてなりません。
訪れる客目線をすごく大切にしてる印象を抱いたのも、女性の仕事だからなのか、バーナードさんの考え方なのか、あるいはその両方か。

そういえば記事の冒頭に挙げたファッションブランドのうち、スタジオニコルソンとマーガレット・ハウエルのデザイナーはともにイギリス人女性ですね。
共通する感覚があるのかもです。

---fadeinPager---

ホテルの概要

P7110081.jpg
入館してすぐのチェックインカウンター。気取りのないカジュアルな雰囲気。

ゼンティス大阪を運営するのは、「最上質の日本」を掲げるラグジュアリーホテル「パレスホテル東京」を展開する「パレスホテル」。
フォーブス・トラベルガイド<5ツ星>の最高評価を受ける国産ホテルです。
コロナ禍の真っ只中でオープンしたゼンティス大阪は、パレスホテルグループの新ブランド第1弾という位置づけ。
リゾートホテル気分で泊まるもよし、ビジネスユースで長期滞在するもよしの、カジュアルに使えるホテルなのです。

今回はパレスホテルの広報さんより「意見を聞かせて」とお声がかかり、一泊の宿泊をご招待いただきました。
とにかく楽しい滞在だったのですが、当然ながら気になる点はあり(こうならいいのに、と思うこと)その話もここでしていきます。

16階建てビルの13階までがホテルで、総客室数は212室。
部屋数なら284室あるパレスホテル東京に迫る勢いですが、こちらは面積がギュッとコンパクト。
エントランスから入った1階フロアは、上写真のチェックインカウンターと、記事冒頭写真のラウンジ及び中央階段ですべて。
広くない敷地をどう活用するかがインテリアデザイナーの腕の見せどころだったようです。
狭さを感じさせない客室も工夫満載なのですが、その話は2回にわけたこの記事の後編となる<客室・朝食編>でしていきましょう。

---fadeinPager---

レザーを贅沢に使って

P7110084.jpg
入館してすぐ右を見た様子。中央の階段が2階のダイニングに続いてます。ダイニングの話はまた次回に。

P7110073.jpg
館内はモダンなカフェのようにクリーン。エレベーター前の座席、手すり、上階への案内看板はすべてレザー。

P7120533.jpg
なんと手すりが革巻き!コスト高になっても触感を重視して採用したのでしょう。

スタンダードな「Studio」が、大人一泊で¥20,130(税込)(朝食抜き、22年7月18日現在)。
リゾートホテルに近い設定。
パレスホテル東京だと¥77,000(税込)からですから、別ブランドとはいえお得感があります。

それでも館内の至るところにレザーを使ったラグジュアリーな佇まい。
自然光が差し込み明るく、汚れが目立つから運営側としてはマメにケアしないといけないのでしょうが、それをやるあたりがモダン発想というかスタイルへのこだわりというか。

---fadeinPager---

P7110141.jpg
ここも宿泊客オンリーのテラス。飲食サービスはないので各人が持ち込んで利用するシステム。

P7110140.jpg
ドリンクを注文する必要なく、寝ててもいい気楽さが自宅気分。

P7120535.jpg
美術家ジュリアン・オピー、大人気の家具シャルロット・ペリアン、建築家デヴィッド・アジャイらに混じって、ファッションデザイナーのリック・オウエンスの本も。

---fadeinPager---

注目したい、布のテクスチャー

ゼンティス大阪は、トレンド好きなクリエイティブパーソンに居心地がいいホテルでしょう。
とくにファッション関係者は自身の世界とリンクして感じられるはず。
什器や家具のみならず廊下のカーペット、室内のラグ、ブランケット、クッション、ランプシェードといった布もバーナードさんによるオリジナルデザイン。
太い糸のざっくりとした織柄が実に素敵なんです。

P7110428.jpg
1フロアでつながったバー&ダイニングでのバーカウンターの椅子。ゼンティス大阪のマテリアルが凝縮された家具。

P7110133.jpg
シートがレザー、背もたれは肌に優しい布。布にワインでもこぼしたら収集つかなくなるから普通は避ける素材でしょう。脚のリングのメタルが銅や真鍮のような色なのもゼンティス大阪流。バーナードさん好みの色のようです。

わたしはインテリアの知識に乏しい無粋な人間ですが、布は好き。
ただ好きだからこそ、高級ホテルの豪華な部屋を訪れたとき廊下や室内のカーペット、椅子の張り布の色模様が野暮ったく感じてしまうことがあります。
(うねうねした模様の紫っぽい色多くないですか?)
ゼンティス大阪では、布関連で「惜しい」と思うことが一度もなかったですね。
客の大半は布に気を止めないでしょうが、「なんとなく洒落てる」を形にするための必要不可欠なマテリアル。

---fadeinPager---

ピリッとスパイシーなホテル内分室

館内に一室だけ、同じホテルと思えないような(めちゃ洒落てるけど)部屋があります。
それがコインランドリーのある憩いのスペース「Room 001」。

P7110105.jpg
男の書斎を彷彿させるヴィンテージ調のインテリア。奥には自販機があり、プロによる靴磨きスペースも。

P7110107.jpg
お洒落な男性の部屋、って感じですよね。革張りの椅子の効果かな。

P7110111.jpg
木村石鹸の洗剤ブランド「SOMALI(そまり)」で洗えるコインランドリーを装備。長期滞在者や「下着くらい自分で洗おう」という人が便利に使えます。本格的なアイロンセットもあり。

この部屋だけはあえてバーナードさんのテイストに合わせず、国内スタッフたちでつくっていったそう。
テイストのすべてが完全に統一されていると、息苦しくなることありますから。
服装でいう、“着崩し” “ハズし”のテクニック。
この部屋はゼンティス大阪のアクセント的な空間。
ホテル全体がジェンダーレスなのに対して男性的と思ったら、つくり上げたスタッフたちが外部も含め全員男性だと。
「なるほど」
デニムやワークブーツ姿も似合うラギッドな部屋。

---fadeinPager---

最後にちょっと

P7110168.jpg
立地は大阪駅から徒歩約12分。北新地駅か渡辺橋駅より徒歩約4分。(ともに公式サイトの記載より)

今回の<全体編>の最後に2点ほど、ちょっとモヤモヤなことのお話を。

ひとつは、ビルの外観。
大阪駅から続く都会のビル群に溶け込み、オフィスビルと見分けがつかず。
ゼンティス大阪感が強く表われてたら、もっと魅力的になれた気がして惜しいです。

あとひとつは、ロゴのフォント。
モダンじゃないんですよね……。
ホテルの本質とはなにも関係ない話なんですが。

わたしなら全部小文字にして(Zを強調しない)、セリフをつけないミニマルなサンセリフ体にするかなあ。
サンローランがリニューアルしたとき採用したフォント。
その後バーバリー、バレンシアガ、ベルルッティも次々に追従した、現代のファッションブランドの定番ロゴ。
Helvetica (ヘルベチカ) 系の既成フォントにしたのはブラウザ表示できるため、SNS時代に対応させた理由もあるようです。
他を真似るのは格好悪いにしても、このホテルには似合いそう。

ロゴだけずっと違和感あるんですよね……なんかすみません、関係者の皆さま。
いまのままでも、入り口のドン!とした角張ったメタル看板がレンガや木材に変わるだけでも、ホテルの温もりが外にまで伝わる(道を歩く人の気を惹く)気がするのですがいかがでしょう!?

All Photos©KAZUSHI

KAZUSHI instagram
www.instagram.com/kazushikazu/?hl=ja

---fadeinPager---

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。

Hot Keywords